木語:封じ込めた嫌韓＝金子秀敏

毎日新聞　2014年08月14日　東京朝刊

　＜ｍｏｋｕ−ｇｏ＞

　「西遊記」は１６世紀、中国・明（みん）の時代の小説だ。作者とされる呉承恩（ごしょうおん）は、いまの湖北省・随州（ずいしゅう）で役人をしていた。山と渓谷の美しい土地で、孫悟空が活躍する花果山（かかざん）や水簾洞（すいれんどう）のイメージはここでできた。

　地元は「西遊記の里・渓流下り」で村おこしを図っている。世界遺産申請でランクアップしようとシンポジウムを開いた。これが８月９、１０日。

　その直後、中国のネットに「韓国学者がクレーム。西遊記の起源は韓国だ」という記事が流れ、それを大手のネットメディアが転載した。中国人読者が「韓国は恥知らず」と怒りのコメントを次々に書き込んだ。

　中国では韓流ドラマの人気は今も衰えていない。韓流スターの空港出迎えでけが人が出ることもある。

その一方で、韓国の強烈な自己主張への反発もたまっていた。それが、思わぬ形で表面化した。

　中国メディアによれば、中韓文化摩擦の発端は２００４年。

中国が吉林省内の高句麗遺跡を「高句麗はわがもの」として世界文化遺産に登録した。翌年、韓国が「江陵（こうりょう）の端午の節句」を「端午の節句はわがもの」として無形文化遺産登録した。

　その後は、聖人・孔子様や詩仙・李白、美人の代表・西施が朝鮮民族の子孫だという学説や、漢字や印刷術は朝鮮半島で発明されたという学説が韓国から出て、中国の世論を刺激した。

　中国は古来、朝鮮半島を植民地として直轄統治するか、藩属国として間接統治するかしてきたので、中華思想という衣の下に、朝鮮に対する宗主国意識が潜んでいる。すぐれた文明が藩属国から宗主国へ流れ込むはずがない。

　朝鮮では、李王朝のころに、中華文明は中国で滅び、その精髄が朝鮮半島に移動してきたという「小中華思想」が生まれた。小中華思想では、韓国が文化的宗主国だ。

　事態は意外な展開になった。突然、中国共産党中央宣伝部の系列下にある「人民網」が、「韓国学者のクレーム」は、中国人の捏造（ねつぞう）だったという検証報道をした。

だれかが嫌韓世論を利用して「西遊記」に目を引こうとし、中国メディアがそれに引っかかったらしい。

　驚くのは、中国当局の対応の素早さだ。

いま中国は韓国との外交関係を良好にして、共同で日米と対抗しようとしている。嫌韓世論の拡大は国策に沿わない。となると、こんなささいなことでも発生からほぼ３日で封じ込める。中国のネットコントロールは強力だ。（客員編集委員）

///////////////////////////////

つぶやき

　中国の韓国取り込みの熱は相当なものだ。確かに韓国を取り込めば一番困るのは米国である。勿論　日本叩きにも有効な手段になる。　米国では既に韓国の慰安婦像建立では在米中国人の団体が在米韓国人団体と共同戦線を張って米国議員の取り込みに力を注いでいる。

慰安婦像のみならず　世界地図の「日本海」を「東海」に変更するよう米国議員に働きかけかなりな成果を上げている。

還り見れば酔生夢死か？