同社が手がけるMPCポリマーと呼ばれる人工細胞膜は、1970年代に発明された長い歴史を持つ化合物で構成されている。
先に海外で実用化が進んだため、海外で開発されたと認識されがちだが、実は日本で生まれた生体模倣技術である。歯面清掃用ハンドピース
体内に留置する医療機器が本来の機能を果たせるようにと、中林宣男さん(現・東京医科歯科大学名誉教授)のグループにより生み出されたものの、当時は合成が難しく研究が進みにくかった事情がある。ホワイトニング機器
のちに加わる石原一彦さん(現・東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻・バイオエンジニアリング専攻教授)により大量合成技術が開発され、メーカーも巻き込み研究開発が一気に加速した。
MPCポリマー開発当時の治療で使われていた人工血管は、体内に留置した後に血液成分がこびりついて血栓ができるなどの課題があり、治療を受けた患者は抗凝固剤や抗血栓製剤を飲み続けなければならなかった。
中林さんのグループは、血流にさらされても血液成分が吸着しない健康な血管内の表面の成分に着目した。
ここから長きにわたる研究の末に生まれたのが、細胞膜を構成する主成分であるリン脂質の機能を模倣した高分子化合物MPCポリマーだった。
リン脂質と類似した構造を持つ物質を合成し、重合という化学反応を経て、人工細胞膜となる生体親和性の高い化合物を作り出すことに成功した。