松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆はじめての条例づくり⑲条例は、どのようにPRするのですか

2020-03-28 | はじめての条例づくり
 まずは、地方自治法上のルールから。

 条例は、条例の成立後、議会の議長より送付を受けた日から20日以内に公布される(地方自治法第16条第2項)。
 「公布」とは、成立した条例を一般に周知させる目的で、市民が知ることのできる状態に置くことをいい、条例が現実に発効し、作用するためには、それが公布されることが必要である。

 当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない(第4項)。これを受けて、公告式条例が規定されている。

 足利市公告式条例では、次のように定められている。
(総則)
第1条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第16条の規定に基く公告式は、この条例の定めるところによる。
(条例の公布)
第2条 条例を公布しようとするときは、公布の旨の前文及び年月日を記入してその末尾に市長名を記入し、別表に規定する市の掲示場に掲示してこれを行う

 条例の公布は、公報に掲載するか、掲示場等に掲示することで行うのが一般であるが、これは掲示場への掲示によることを規定するものである。掲示場は、掲示場設置規程等で定めており、普通は本庁舎の正面に位置している。

 あちこちの自治体に行くが、この掲示を見ている人を見たことはない。私ぐらいなので、相当怪しくみえると思う。

 掲示を見て条例公布をしたというのが、決まりであるが、実際にこれを見て知ったというのは、皆無に近い。見たはずだ=広く知られたという一種の擬制である。

 面白い判例がある。
 福岡高裁の判決(S29.1.27)↓
「選挙に関する告示文を数葉の用紙の表裏に記載し、これを重ねあわせてその右肩に紙縒を通して掲示台の釘に吊し、掲示台の前面には金網を張り裏面入口の扉には施錠をし、表に向いた告示文書の一用紙の半面しか展示されていないような掲示方法をとつた場合には、その告示は単なる形式に止まり、告示の目的を達したものと認めることはできない」

 実際は誰も見ないが、見れないような掲示は、告示したとはいえないとしている。普通、誰も文句は言ってこないので、実務は、おおざっぱに処理されているが、現に判決があるということは、争いになるということである。担当者は、心しなければならない。

 これ自体は、大した手間ではないが、誰も読まないような場所に、読まないような掲示方法は、妥当とはいえない。

 今後は、ネットに条例を載せ、ネットがないという人のために、冊子にして、どこかに置いておくという方式はできないだろうか。

 ヒントになるのは、大阪市のヘイト条例の氏名公表である。
 第5条6 第1項の規定による公表は、インターネットを利用する方法その他市規則で定める方法により 行うものとする。
(認識等の公表の方法)
 第6条 条例第5条第6項の市規則で定める方法は、報道機関に対して公開する方法、広報紙に掲載する方法及び市役所その他市関係公署において閲覧に供する方法のうち、事案ごとに、公表の内容を勘案して市長が適当と認める方法とする。

 公表の方法については、大阪市のホームページに掲載することを基本とし、報道機関に対して公開する方法、広報紙に掲載する方法及び市役所その他市関係公署において閲覧に供する方法のうち、事案ごとに、公表の内容を勘案して市長が適当と認める方法で行うとしている。

 この条例は、域外適用を認めるものなので、市役所の玄関先に告示を張っておくのは、域外者にとっては、見に行けないし、ネットによる誹謗中傷への対処なので、ホームページに掲載するという方法は、現実的である。

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