松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆はじめての条例づくり⑰条例と予算の関係が分からない

2020-03-24 | はじめての条例づくり
 条例と予算の関係が分からない。

 これは、地方自治法の書いてある。地方自治法第222条第1項には、「普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない」と規定されている。

 予算を伴う条例が制定されると、地方自治体は支出義務を負うが、それを担保する財政的裏付けがなければ、 地方自治体の計画的で健全な行財政運営が阻害されることから、これを防止するための規定とされる。

 例えば、福祉医療対象年齢を小学校6年生まで→中学校卒業までに広げる場合は、福祉医療費給付金条例改正案とともに補正予算が必要ということになる。

 「予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」については、2つの考え方がある。
 国の通知(各都道府県総務部長宛行政課長通知昭31.9.28自丁行発82号)は、「予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」とは、当該案件に伴い必要な予算上の措置が具体的に明瞭にとられる見込のあるということであり、関係予算が議会に提出されたときをいうとされる。

 他方、緩く考える説もある。注釈地方自治法全訂(第一法規)では、「必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込み」とは、あくまで見込みであってもよいのであるから、予算案が議会に提案されていることを要するものではないし(先の通知は、「関係予算案が議会に提出されたとき」としているが、限定的にすぎると考える)、まして、それが成立する見込みがあるか否かを問題にする必要はない。執行機関である長において、見込みがあると判断すればそれで足りるものである」としている。

 私の体験は、個人情報保護条例は3月の議会である。これは予算を意識したものではない(興味深いことを思い出したので、別に論じよう)。減量リサイクル条例は、9月の議会だった。減量リサイクルには、当然莫大な費用がかかるが、補正予算を出していない。このときは、222条は、まったく意識しなかった。意識する余裕もなかった。もし、222条を問われたら、この条例は、施策の方向性を示す、いわば理念的条例とでも答えるのだろうか。

 鎌倉市では、家庭ごみの有料化を実施するための改正条例とごみ有料化のための補正予算案を出した。条例は、何とか議決したが、予算のほうは、継続審議となった。予算については、市民生活を考えて慎重に判断するということで、その慎重さを表すために、一回では決めませんよと継続にしたようである。おかしな話で、慎重にということならば、条例も同じである。

 これが訴訟になった。222条によれば、条例は可決したものの予算の方は継続審議扱いとなったので、第222条と矛盾する形になるので、この条例は違法だという主張である。

 裁判所は、「本件改正条例案の市議会への提出は、本件改正条例実施のための補正予算案の提出と同日に行われているから…、『予算上の措置が適確に講ぜられる見込み』(地方自治法222条 1 項)があったものと認められ、補正予算の成立前に本件改正条例が制定されたことに同項の違反は認められない(横浜地判平成27年 9 月 9 日)とした。

 考え方は、分かれるが、ともかく条例を出すときは、予算とセットが基本と覚えておけばいいだろう。

 
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