ウンパワーにて小ぶりなオスを捕獲し解体、切り分けをすませた翌日、ふたたび見回りへ。
1頭ゲットした余裕からハナ歌を歌いながら1つ目の罠の場所へやってきました。
ここは集落から少し入り組んだ小山の尾根筋の道です。
一応舗装道はありますが、ほとんど使われていないので結構藪だらけの細道です。
この尾根道沿いの右側の、少し谷になったけもの道に1つ罠を仕掛けていました。
以前は盛んに通った痕跡があったのですが、ここしばらくは使っていないようでした。
車から谷を見下ろせるので、いつもチラ見確認で通過するポイントです。
「どうせ今日もおらんやろな~」
(どうせ今日もいないだろうな~)
そんな感じできゅっとブレーキを踏み、ふっと右を見下ろすと…
「…おるやん!」
(…いるじゃないのさ!)
イラストでは分かりにくいですが下り斜面の凹凸のかげに、茶色い毛むくじゃらが一部見えています。
いる、いるな~、ありゃどう見てもいるよ…いるか~…
意外に思われるかもしれませんが、心の中で喜びと言うよりは複雑なちょいとした葛藤が始まります。
しかし、まだどういう奴がかかっているのか確認もしていません。
死んでるかもしれないし、とりあえず大きな音を立てて寝ているやつを起こし様子を見ることにしました。
車のドアを勢いよく開閉してバタン!と音を立てると、なんと寝ていたイノシシが飛び起きて1頭は走り去り、1頭は木に絡みついたワイヤーに動きを制御されもがいています。
??!!
こ、これは…2頭おったんかーい!
以前60キロほどのメスイノシシの周りに5,6頭の子イノシシが付いていたことがありましたが、今回は5,60キロほどのイノシシが1頭付いていたようです。
子供にしては大きいので兄弟かなと思いました。
こういった行動を見ると、イノシシの情愛の深さにちょっとつらいものを感じます。
しかし猟師としては心を鬼にして、山からの授かりものを敬意を持ってしっかりと受け取らなくてはいけません。
ちょっと観察してみると、罠にかかったやつはワイヤーで足が固定されて木の根もとから離れられないようです。
そしてぷりぷりのむちむち。確実に5,60キロはあるメスに間違いないようです。
とりあえず師匠に報告。
師「シャっと行ってガツンとやってサッと持って帰ってとっとと皮剥ぎしよれー!」
オ「ラジャー!」
とはいったものの、まだ1個目の罠しか見ていないので残りの罠を見回ってからやっつけることにしました。
見回り中は罠にかかったイノシシとの戦いを考えると心臓がバクバクでした。
猟師としてはふがいないかもわかりませんが、いつも獲物がかかっているのを発見するとかなりの緊張状態になります。
そして、イノシシとタイマンを張るまでは
あ~、いやだな~、いやだな~、はぁぁ~、でもやるしかないよな~、はぁぁ~…
とプレッシャーとの戦いがあります。
覚悟を決めてしまえば比較的冷静になれるのですが、まるで学生時代のマラソン大会直前の逃げ出したい気持ちのようになることもしばしばです。
これはまだ猟師モードに突入していないせいでもあるのですが、やっぱり命のやり取りをするのですから緊張して当然かもしれません。ちなみに散弾銃は持っていないので、猪とはガチ勝負です。(相手はワイヤーにくくられているので圧倒的にこちらが有利ではありますが…)
すべての罠を見終わる頃には心臓の鼓動も収まり、覚悟も決まりました。
またさっきの猪が来てるかもしれないな…
それにしても、あの感じだと結構でかいような気がするな。
もしかしたら5、60キロよりもっとあるかもしれないな…
そんなことを考えながら現場に戻ると、案の定さっきと同じように猪が2頭飛び起きました。
先ほど逃げたやつがまた戻ってきて、2頭でよりそって寝ていたようです。
罠にかかっていない1頭は途中で逃げるのをためらうようにいったん動きを止めましたが、その後すぐに山の奥へと消えて行きました。
罠にかかったほうは一緒に行こうとしましたが、腕をとられているために身動きがとれません。
かわいそうな状況ですが、この時点ではすでに猟師の心構えなので静かに近づいて様子を確認します。
やはり思ったより大きな猪でワイヤーと一緒に腕が木の幹に巻きつき、激しくもがいたために足首の関節が外れ皮膚がちぎれて骨が露出しています。もはやつながっているのは腕肉の部分だけです。
木に足が巻きつくと、よく起こることで過酷な状況ですが、苦しいだろうがゆえに早く勝負をつけてやらなくてはいけません。
また、早く処理しないと肉がちぎれて猪がフリーとなり襲われる危険があります。
今回は幸運なことにそれほど激しい攻撃はありませんでした。
このサイズの雄ならもっと激しい反撃を繰り出していたかもしれません。
そう思うとラッキーでした。
大きな猪だけに多少苦戦しましたが、なんとかやっつけて血抜きを済ませました。
問題はここからです。
やっつけた場所は斜面の下。
車は上にあります。
距離は15メートルほど。
坂道を大猪を引きずって車まで運ぶのは至難の業ですが、車に積んである道具を駆使して引き上げなくてはなりません。
ちょうど使っていない罠が数本あったのと、引き出し用のロープをつないで車で引きずり上げることにしました。
先輩猟師たちは引き上げ用の長いワイヤーや滑車など最低限の道具をそろえて準備万端なのですが、私は未だに準備不足なのが反省点です。
なんとか猪までワイヤーをつなぎ、車で引きずり上げます。
所々で引っかかるので、少し進んでは車から降りてつっかえを取り、また進んでは車から降りて体制を立て直す、ということを繰り返し、なんとか道路まで猪を引きずり上げることができました。
あらためて見ると、やっぱりでかいです!
第一関門はクリアしましたが、次の試練が待っていました。
今度はこいつを車に乗せないといけません。
ワイヤーで引っ張ってみたり、竹を切りだしてラダーレール代わりにしてみたり…
格闘すること20分はたったでしょうか…
汗だくで力を使い切り、やはり一人で上げるのは無理!という結論に達しました。
いろいろと悩みましたが、結局実家の父親に農業用のラダーレールを持ってきてもらうことにしました。
普段は生々しい現場を見ると悲鳴をあげて怒る父親ですが、さすがに娘の頼みとあらばということで駆けつけてくれました。
ラダーレールを車にかけて、一緒に猪を積み込みます。
雨の翌日だったのでドロドロの大きな猪を持ち上げるのは大変だったと思います。
おかげさまで無事に積み込むことができたのでした。
所へ持ち込んで、これでようやくうれしい気持ちになってきました。
脂の乗った大きなメス猪、一番ほしかった獲物がかかったことに大感謝です。
重さを量ってみると、80キロ!
もしかしたら記録更新かと思っていましたが、今までとタイ記録で1番の重さの大物でした。
そして脂も最高の乗り。
ちょっと脂に血が回っちゃいましたが…
これでようやく一息のつける収穫になりました。
自家用と使い物用にちょうど良い獲物を頂いて、一安心。
あと1頭獲れれば今年はもう十分でしょう。
ということで、今回も最高の恵みを
山の神様、
師匠、
お父さん、
猪ちゃん、
ありがとうございました♪
1頭ゲットした余裕からハナ歌を歌いながら1つ目の罠の場所へやってきました。
ここは集落から少し入り組んだ小山の尾根筋の道です。
一応舗装道はありますが、ほとんど使われていないので結構藪だらけの細道です。
この尾根道沿いの右側の、少し谷になったけもの道に1つ罠を仕掛けていました。
以前は盛んに通った痕跡があったのですが、ここしばらくは使っていないようでした。
車から谷を見下ろせるので、いつもチラ見確認で通過するポイントです。
「どうせ今日もおらんやろな~」
(どうせ今日もいないだろうな~)
そんな感じできゅっとブレーキを踏み、ふっと右を見下ろすと…
「…おるやん!」
(…いるじゃないのさ!)
イラストでは分かりにくいですが下り斜面の凹凸のかげに、茶色い毛むくじゃらが一部見えています。
いる、いるな~、ありゃどう見てもいるよ…いるか~…
意外に思われるかもしれませんが、心の中で喜びと言うよりは複雑なちょいとした葛藤が始まります。
しかし、まだどういう奴がかかっているのか確認もしていません。
死んでるかもしれないし、とりあえず大きな音を立てて寝ているやつを起こし様子を見ることにしました。
車のドアを勢いよく開閉してバタン!と音を立てると、なんと寝ていたイノシシが飛び起きて1頭は走り去り、1頭は木に絡みついたワイヤーに動きを制御されもがいています。
??!!
こ、これは…2頭おったんかーい!
以前60キロほどのメスイノシシの周りに5,6頭の子イノシシが付いていたことがありましたが、今回は5,60キロほどのイノシシが1頭付いていたようです。
子供にしては大きいので兄弟かなと思いました。
こういった行動を見ると、イノシシの情愛の深さにちょっとつらいものを感じます。
しかし猟師としては心を鬼にして、山からの授かりものを敬意を持ってしっかりと受け取らなくてはいけません。
ちょっと観察してみると、罠にかかったやつはワイヤーで足が固定されて木の根もとから離れられないようです。
そしてぷりぷりのむちむち。確実に5,60キロはあるメスに間違いないようです。
とりあえず師匠に報告。
師「シャっと行ってガツンとやってサッと持って帰ってとっとと皮剥ぎしよれー!」
オ「ラジャー!」
とはいったものの、まだ1個目の罠しか見ていないので残りの罠を見回ってからやっつけることにしました。
見回り中は罠にかかったイノシシとの戦いを考えると心臓がバクバクでした。
猟師としてはふがいないかもわかりませんが、いつも獲物がかかっているのを発見するとかなりの緊張状態になります。
そして、イノシシとタイマンを張るまでは
あ~、いやだな~、いやだな~、はぁぁ~、でもやるしかないよな~、はぁぁ~…
とプレッシャーとの戦いがあります。
覚悟を決めてしまえば比較的冷静になれるのですが、まるで学生時代のマラソン大会直前の逃げ出したい気持ちのようになることもしばしばです。
これはまだ猟師モードに突入していないせいでもあるのですが、やっぱり命のやり取りをするのですから緊張して当然かもしれません。ちなみに散弾銃は持っていないので、猪とはガチ勝負です。(相手はワイヤーにくくられているので圧倒的にこちらが有利ではありますが…)
すべての罠を見終わる頃には心臓の鼓動も収まり、覚悟も決まりました。
またさっきの猪が来てるかもしれないな…
それにしても、あの感じだと結構でかいような気がするな。
もしかしたら5、60キロよりもっとあるかもしれないな…
そんなことを考えながら現場に戻ると、案の定さっきと同じように猪が2頭飛び起きました。
先ほど逃げたやつがまた戻ってきて、2頭でよりそって寝ていたようです。
罠にかかっていない1頭は途中で逃げるのをためらうようにいったん動きを止めましたが、その後すぐに山の奥へと消えて行きました。
罠にかかったほうは一緒に行こうとしましたが、腕をとられているために身動きがとれません。
かわいそうな状況ですが、この時点ではすでに猟師の心構えなので静かに近づいて様子を確認します。
やはり思ったより大きな猪でワイヤーと一緒に腕が木の幹に巻きつき、激しくもがいたために足首の関節が外れ皮膚がちぎれて骨が露出しています。もはやつながっているのは腕肉の部分だけです。
木に足が巻きつくと、よく起こることで過酷な状況ですが、苦しいだろうがゆえに早く勝負をつけてやらなくてはいけません。
また、早く処理しないと肉がちぎれて猪がフリーとなり襲われる危険があります。
今回は幸運なことにそれほど激しい攻撃はありませんでした。
このサイズの雄ならもっと激しい反撃を繰り出していたかもしれません。
そう思うとラッキーでした。
大きな猪だけに多少苦戦しましたが、なんとかやっつけて血抜きを済ませました。
問題はここからです。
やっつけた場所は斜面の下。
車は上にあります。
距離は15メートルほど。
坂道を大猪を引きずって車まで運ぶのは至難の業ですが、車に積んである道具を駆使して引き上げなくてはなりません。
ちょうど使っていない罠が数本あったのと、引き出し用のロープをつないで車で引きずり上げることにしました。
先輩猟師たちは引き上げ用の長いワイヤーや滑車など最低限の道具をそろえて準備万端なのですが、私は未だに準備不足なのが反省点です。
なんとか猪までワイヤーをつなぎ、車で引きずり上げます。
所々で引っかかるので、少し進んでは車から降りてつっかえを取り、また進んでは車から降りて体制を立て直す、ということを繰り返し、なんとか道路まで猪を引きずり上げることができました。
あらためて見ると、やっぱりでかいです!
第一関門はクリアしましたが、次の試練が待っていました。
今度はこいつを車に乗せないといけません。
ワイヤーで引っ張ってみたり、竹を切りだしてラダーレール代わりにしてみたり…
格闘すること20分はたったでしょうか…
汗だくで力を使い切り、やはり一人で上げるのは無理!という結論に達しました。
いろいろと悩みましたが、結局実家の父親に農業用のラダーレールを持ってきてもらうことにしました。
普段は生々しい現場を見ると悲鳴をあげて怒る父親ですが、さすがに娘の頼みとあらばということで駆けつけてくれました。
ラダーレールを車にかけて、一緒に猪を積み込みます。
雨の翌日だったのでドロドロの大きな猪を持ち上げるのは大変だったと思います。
おかげさまで無事に積み込むことができたのでした。
所へ持ち込んで、これでようやくうれしい気持ちになってきました。
脂の乗った大きなメス猪、一番ほしかった獲物がかかったことに大感謝です。
重さを量ってみると、80キロ!
もしかしたら記録更新かと思っていましたが、今までとタイ記録で1番の重さの大物でした。
そして脂も最高の乗り。
ちょっと脂に血が回っちゃいましたが…
これでようやく一息のつける収穫になりました。
自家用と使い物用にちょうど良い獲物を頂いて、一安心。
あと1頭獲れれば今年はもう十分でしょう。
ということで、今回も最高の恵みを
山の神様、
師匠、
お父さん、
猪ちゃん、
ありがとうございました♪
そちらではウサギが有害駆除になっているのですね。
ちょっとうらやましい。^^;
まだまだ雪が残っているでしょうから、お気をつけて!
シシ肉、近いうちにおくりますね~♪
私は狩猟登録したのですが、忙しく1度も行けませんでした。狩猟期間は終わってしまったので、あとは有害鳥獣駆除のウサギだけです。
こういう気持ちがあるからこそファンハンティングに走らないでいられるということもあるので、こういう気持ちも大事にしたいと思います。
先輩猟師は仕掛けて最初の見回りで8頭獲れていたそうなので、私なんかはへなちょこのへの字もないくらいです。
お気楽主義なので、もうちょっと気合い入れないといけません。
誰かお肉にした状態で持ってきてくれないかな~。
いやいや、そんな複雑な葛藤があるからありがたく「いただきます」が言えるのですよね。
お疲れ様でした♪
近くに罠を増設して、捕まえなきゃね。
今猟期は川ガニさんの脂ノリノリ猪ばかりブログで拝見していたので、私もいいのがとれてホッとしました。(笑)
来期はこちらで猪を獲ってくださるんですか?
大歓迎でお待ちしています。(笑)
私も道具をそろえようと思いつつ、今年は特に出遅れで準備不足のまま始めてしましました。
ここでこんなに大きな獲物が獲れると思っていなかったのでさらにびっくりです。どうせ3,40キロの小さいのしか掛からないだろうとナメてました。^^;
猟期が終わったら、すぐに来期のための準備に取り掛からなくては!
それにしてもいい獲物を恵んでいただいて、山には感謝です!
猪は仲間を助けに入るほど無謀ではないようです。
そのぶん遠くから見つめているかも…と思うと切なくなりました。
猪を獲ると、翌日以降必ず別の猪の足跡が現場についてます。仲間の死や危険を確認しに来ているのかな。
ぷりぷりを山から恵んでいただきました♪
今日の新聞にも県内で猟師が猪にやられてましたね。
お互い猟期終了まで怪我なくがんばりましょうね。
それにしても短期間で獲るなんて名人級ですね。皮剥ぎも丁寧で綺麗だし。来期は弟子にしてください。
それを箱バンに積み込むのも大変ですね。
(^_^;)
荷台前方に滑車を取り付けられれば、
ちょっとは楽に引きづり上げられるかな?
おいら罠は登録してませんが、
サンバーバンに滑車、ロープ、ポータブルウインチ装備してます。
脱輪用でした。(^_^;)
80キロとはスゴイですね。
オイノコちゃんのパワー、尊敬です。
くれぐれもお怪我のないようにね!
しゃあないな~ですよね、娘が困っているんですもの。
ぷりぷりの美しい脂ののった親近感の湧く獲物に寄り添っていたもう1頭に、後ろからど突かれる心配はないのですか?
読みながらヒヤヒヤしちゃった。
短期間で(良質肉確保)目標達成?!
お見事!
後1ヶ月怪我せず頑張って下さい!!