おへそのひみつ 

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古道具 中野商店 <川上弘美>

2005年09月03日 | 
【あらすじ】
東京の西の近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」
ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。
わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。
どこかあやしい常連たち…。
不器用でスケールちいさく、けれど奥の深い人々と、懐かしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋、世代をこえた友情。幸福感あふれる最新長篇。



川上弘美の作品は、いつだってゆっくりと時間が流れているようで心地いい。

古道具屋という、アンティークでも骨董品屋でもない埃っぱい店の中、
店で働く人達も店に来る人達も、どこかしら普通じゃなく、
不思議な雰囲気が漂う。
なんでもない日常の中の出来事や人間同士の関係が、
なぜ、こんなにも素敵でせつなくて愛しいのだろう。
ノスタルジックで不思議な空間、不器用でもどかしい恋愛模様など、
なんだかたまらなく心にしみてきて、またまた彼女の世界に深く入り込んでしまった。

古道具屋の商品ひとつひとつにもドラマがあってとても楽しい。
昔の看板やカエルの文鎮、実物より少しだけ縮小サイズらしい松田聖子の
等身大パネル、そしてペラペラのワンピース。
昭和の匂いがプンプンする店、中野商店は・・・かなり好きな世界である。

やっぱり中野さんの店は、骨董でもアンティークの店でもない、
古道具屋の中野商店でないといけない。
また、いつかどこかであのお店とあの人達に会いたい。