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【お知らせ】パートナーシップ制度の導入に向けた検討にあたり、仙台市に要望書を提出しました!

2023年10月19日 | パートナー証明
いわゆる「自治体パートナーシップ制度」について、2024年度中の導入に向けて具体的な議論をスタートさせる旨、2023年9月19日開催の仙台市議会令和5年第3回定例会において仙台市長より表明がなされました。

これを受け、♀×♀お茶っこ飲み会・仙台では、よりよい制度のあり方について考察を深め、広く議論を喚起すべく、さまざまなとりくみをすすめています。

今回はこちら!

要望書「自治体パートナーシップ制度の導入に向けた検討にあたり、下記のとおり要望します」を仙台市男女共同参画課に提出いたしました!
(※こちらの要望書は♀×♀お茶っこ飲み会・仙台単体で提出したものであり、他の団体様・個人様は無関係です)

要望書「3人以上でも使えるパートナーシップ制度の導入を希望します!」とあわせてご覧ください。

この要望書が、多くの方々の考えるきっかけになれば幸いです。


お茶っこ飲み会ではこれまで、いわゆる「同性婚法制化」や「自治体パートナーシップ制度」を推進する立場は取らず、制度の問題点も含めたあり方に丁寧に向き合い考えを深めることを大切にしてきました。ここ仙台でどうしても制度を導入するというなら、できるだけ問題の少ない、より良い制度にしていただきたいと願っています。

お茶っこ飲み会では、引き続きメディアスタディーズ「結婚の定義」など、結婚や家族のあり方について考える企画にとりくんでいくとともに、パートナーシップ制度のあり方についてもさらに考察を深め、情報発信していきたいと思っています。

より良い制度づくりのためには、多様な主体が多様な意見を伝えることが大切です。
仙台市政に関して、手軽に利用できるのが「市民の声」。ネットで誰でも仙台市に直接意見を送れます。匿名OK。ご活用ください!
反対も賛成もよく分からないもそれ以外も、いろんな人がいて、いろんな意見があることを仙台市にどんどん伝えちゃいましょう!

個別広聴(市民の声)(仙台市ホームページ)
https://www.city.sendai.jp/kochotoke-kocho/shise/koho/kocho/kobetsu.html


*****要望書ここから*****

要望
1 自治体パートナーシップ制度の効果・利点として宣伝されている事柄の多くは、パートナーシップ制度がなくてもすでに実現しているものや、パートナーシップ制度に頼ることでむしろ問題を生じさせるもの、実際の効果が疑問視されているものが少なくありません。実態を的確に把握した上で丁寧な検討を行ってください。
2 パートナーシップ制度導入にあたっては、対象を「婚姻相当」の関係や性愛や恋愛に基づく関係、性的マイノリティ当事者が関与する関係等に限定せず、多様な互助関係に開かれた制度としてください。
3 パートナーシップ制度導入にあたっては、対象を1対1の関係のみに限定するのではなく、3人以上のパートナーシップ関係にも幅広く門戸を開いてください。
4 いわゆるファミリーシップ制度については、多くの問題点があるにも関わらずブーム的に安易に導入されてしまっている現状があります。導入の是非については慎重に検討してください。
5 いわゆる近親婚禁止規定の扱いについては、市民等への説明がほとんどなされないまま、自治体によってさまざまな改変が行われている実状があります。自治体パートナーシップ制度において近親婚禁止規定を準用することの妥当性や、全面解禁ではなく一部解禁とする場合の正当性等について丁寧に検討してください。
6 パートナーシップ制度導入にあたっては、発行する証明書に有効期間を定め、定期的に更新手続きを行うしくみとすることで、制度の信頼性を確保してください。
7 パートナーシップ制度導入にあたっては、「公正証書作成費用助成」「無料法律相談」等の実効性のある支援についてご検討ください。
8 パートナーシップ制度導入にあたっては、幅広い市民の意見をさまざまな手段で聴取してください。また、聴取の際には、プライバシー侵害を招くアンケートの実施等、市民の過重な負担となる行為は極力避けてください。
9 パートナーシップ制度のあり方については性的マイノリティ当事者にもさまざまな意見があり、無関心・批判的な当事者も少なくないことをしっかりと認識し、多様な価値観に配慮するよう留意してください。
10 パートナーシップ制度に関する公文書・資料等については、公文書開示請求など待つまでもなく、仙台市ホームページに掲載する等して積極的に公開し、市民の理解・判断に資するようにしてください。


<1について>
いわゆる自治体パートナーシップ制度については、2015年導入の東京都渋谷区・世田谷区を皮切りに全国で導入がすすめられ、各自治体の創意工夫により様々な変遷を遂げつつ、2023年6月時点で300を超える自治体で導入されるに至っています。東北においても複数自治体で導入されています。しかし、このようなブームの中にあって、関連報道等を見ると誤解も多く、制度の特徴等が十分に理解されているとは言い難い状況です。
以下、特に取り上げられることの多い項目について例示します。

【公営住宅入居】
「パートナー証明を得た同性カップルに公営住宅(仙台市の場合市営住宅)で同居する権利を付与する」ことをパートナーシップ制度の売りにしている自治体は非常に多く、報道等でも好意的に取り上げられることが多くなっています。
しかし、「他人同士の同居は原則不可」という状況を変えないまま「パートナー証明を得た同性カップルのみ特別に同居可」としてしまえば、これはまさしく「入居=カミングアウト強制」ということになります。民間賃貸住宅であれば、親きょうだいや職場関係者等には「友人とのルームシェア」等と称し、カミングアウトを避けて同居することも可能ですが、この手段が使えなくなるということです。また、住民自治が重視され、町内会活動への積極的な関わりが要請される市営住宅にあっては、近隣住民とのコミュニケーションを絶って暮らすことも難しく、近所付き合いの中である程度ふたりの関係性を開示していかざるを得なくなる可能性が高いものと思われます。
そもそも市営住宅の入居にあたっては収入要件等さまざまな要件がある中、さらにこのような高いハードルまで課せられてしまっては、制度の実効性は極めて低いものと言わざるを得ません。パートナー証明を用いて公営住宅に入居した同性カップルが、一体全国にどれだけ存在するのでしょうか。本当に同性カップルの市営住宅入居に資する制度としたいのであれば、<2について>にて述べるとおり、パートナーシップ制度を多様な互助関係に開かれた制度とする、あるいはそもそもパートナーシップ制度など関係なく市営住宅の他人同士の同居を幅広く認める、といった方法が考えられます。

【医療同意・医療現場での家族扱い】
「パートナーの手術の同意書にサインできる」等、「公営住宅同居」と並んで取り上げられることの多い項目に「医療同意」「医療現場での家族扱い」があります。
しかし、たとえば仙台市立病院について「同性パートナーとの関係を確認し、妥当と判断した場合に診療情報の提供を行うこととしております」等と仙台市議会平成29年第4回定例会で明言されている(【参考資料1参照】)等、パートナー証明などなくても同性パートナーを家族同様に扱うとりくみはすでに医療現場ですすめられているところです。民間医療機関等で対応がすすんでいないところもあるものとは思われますが、しかしその解決手段としてパートナー証明を持ち出すのは、「パートナー証明を持っていない同性カップルは家族扱いしない」等という不当対応を引き起こしかねず、不適切であるといえます。
さらに、現代日本において急速に進行する少子化・高齢化・非婚化の中、そもそも「身寄りがない人」が激増している状況があります。このことについては、2019年に厚生労働省より「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」が発出される等、国を挙げた対応がすすめられています(【参考資料2】参照)。
また、DVや児童虐待等と関連して、家族が必要な医療を受けることを妨げる「医療ネグレクト」も社会問題となっているところです。
そのような中にあって、「家族が付き添って医療同意してくれないと治療できない」「患者の面倒は家族が看るのが当たり前」等というような旧態依然の価値観を助長するふるまいは、多くの国民の生命や健康を脅かしかねないものであるといえます。性的マイノリティ当事者にも、パートナーのいない人、身寄りのない人、差別・偏見や虐待等のため親族と絶縁状態の人は珍しくありません。人権尊重というなら、身寄りがなくとも安心して医療を受けられ、最期を迎えられるためのとりくみこそが自治体には強く要請されているといえます。

【婚姻相当】
自治体パートナーシップ制度については、「カップルを婚姻相当の関係と認めるもの」等と報道されがちですが、各自治体の制度の条文を読んでみると、そのようには読み取れないケースがほとんどです。
たとえば「佐賀県パートナーシップ宣誓制度実施要綱」においては「パートナーシップ」の定義として「お互いをかけがえのないパートナーであることを約束した(中略)二人の者の関係をいう」等と示されており、「婚姻相当」とは到底言えない内容となっています(【参考資料3】参照)。
また、むしろ「婚姻相当」であるか否かの明言を積極的に回避するような対応も散見されます。たとえば愛知県岡崎市では、パートナーシップ制度導入等に伴うパブリックコメントにおいて「このパートナーシップ制度で証明される関係は『婚姻相当』ではない(きょうだいや親友のような関係)、と判断されますが、その解釈でよろしいでしょうか」という意見に対し「既存の婚姻制度を利用できない又は利用しづらいことなどにより生きづらさを感じる人たちの社会的承認を支援する制度と考えています」と、「婚姻相当」であるか否かについての言及を回避した回答を行っています(【参考資料4】参照(No.32))。
自治体として「婚姻相当」である旨の保証をすることもないまま、民間事業者等に「婚姻相当の扱い」を要求する等というのは極めて不当かつ無責任であると言うほかありません。「婚姻相当」であるか否かを誤魔化した対応は、制度利用者に、現行法令上婚姻カップルに求められている「貞操義務」や「互いに性行為に応じる義務」に関連した争いが生じた場合等に深刻なトラブルを引き起こす恐れもあります。また、「婚姻相当」でないものを「婚姻相当」であるかのように報道するメディアに対し、自治体として何らの訂正も求めないのは、自治体自らが風説の流布に関与していると言われても仕方のないふるまいであるといえます。自治体としてパートナーシップ制度を導入するというのであれば、こういった根本的な事柄について責任のある態度を示すことが肝要です。<2について>にて述べるとおり、そもそも自治体パートナーシップ制度は「婚姻相当」であるべきなのか否か、といった点から真摯に検討する必要があります。

【啓発効果・当事者エンパワメント効果】
自治体パートナーシップ制度に関しては「実効性はなくとも啓発や性的マイノリティ当事者エンパワメントに効果がある」等の主張がよくなされます。
しかし、2021年度に東京都のパートナーシップ制度導入に関連して実施された「性自認及び性的指向に関する調査」の結果を見ると(【参考資料5】参照)、非当事者層のみならず性的マイノリティ当事者層までもが大半「自分の住む自治体でパートナーシップ制度が導入されているかどうか知ってすらいない」 (報告書20・31ページ)という結果が示されており、制度に対する関心は当事者ですら決して高いとはいえず、「パートナーシップ制度は実効性はなくとも啓発や当事者エンパワメントに効果がある」といった類の主張の妥当性にも疑義が生じているところです。
また、「現在、行政により実施されているLGBT等・性的少数者向けの施策の内、評価できるものはどれか」という設問に対し、「パートナーシップ制度」と回答した割合を見ると、最も割合が高かった「同性愛者」ですら64.3%にとどまり、「トランスジェンダー」に至っては「非LGBTQ層」の48.2%よりも低い42.7%と半数を割り込む結果となっている等、パートナーシップ制度の支持率は存外に低いことが示唆されています(報告書17・30ページ)。また、「パートナーシップ制度が同性婚と勘違いされている」といった懸念や、「そっとしておいて」「放っておいて」といった声も報告書の随所にみられます。
また、2017年度に東京都港区にて実施された、性的マイノリティ当事者を対象としたインターネットアンケート調査「性的マイノリティの方々への支援に関する調査」(【参考資料6参照】)においても、「あなたが行政に望むことを教えてください」という設問に対し、複数回答可であるにも関わらず「同性同士のパートナーシップ宣誓制度を導入してほしい」と回答した割合はわずか12.0%にとどまり(報告書36ページ)、2021年度の東京都調査同様、性的マイノリティ当事者のパートナーシップ制度の支持率の低さが示されているところです。
そもそも、自治体の施策として「啓発のために実際上は役に立たない制度をつくる」ということの妥当性も問われて然るべきではないでしょうか。実態にそぐわないとりくみは、かえって差別・偏見を助長しかねません。

以上、ごく一部例示しましたが、このように自治体パートナーシップ制度に関してはさまざまな誤解や問題点があり、また、導入から8年を経て制度が複雑化する中で検討すべき課題もどんどん多種多様になってきています。安易に「流行りに乗り遅れないようにとにかく急いで導入するんだ」等といった結論ありきですすめて良いものではありません。曖昧模糊としたイメージ先行ではなく、丁寧に分析・検討する必要があることをご留意くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<2について>
<1について>の【婚姻相当】の項においても述べたとおり、自治体パートナーシップ制度については「カップルを婚姻相当の関係と認めるもの」等と報道されがちですが、各自治体の制度の条文を読んでみるとそのようには読み取れないケースがほとんどであり、実状として「婚姻相当」でないものがあたかも「婚姻相当」であるかのような風説が流布される事態となっています。これは深刻な問題といえ、自治体としてパートナーシップ制度を導入するというのであれば、こういった根本的な事柄について責任のある態度を示すことが肝要です。
そもそも、自治体パートナーシップ制度は「婚姻相当」であるべきなのでしょうか。
婚姻関係は「同居義務」「貞操義務」「互いに性行為に応じる義務」等が課せられた極めて特殊な親族関係です。一方で、個人間の互助関係には「友人同士で助け合う関係」等、非常にさまざまなものがあります。民法とは全く異なる枠組である自治体パートナーシップ制度が、「婚姻相当」に縛られる必要はないのではないでしょうか。むしろ、「婚姻」が特権化された現代日本社会において、「婚姻相当」の関係から外れた互助関係こそ、社会的に不利益を被ることが多いものであり、制度で支援する必然性は高いものといえます。
婚姻を特権化せず、婚姻相当であるか否か、性愛や恋愛に基づいた関係であるか否か、(戸籍等公的書類上)同性か異性か、性的マイノリティであるか否か、等に関わらず、多様な互助関係が対等・平等に扱われる制度にしてこそ、多様性を尊重したまちづくりに資するものとなるのではないでしょうか。
また、パートナーシップ制度を婚姻や性愛・恋愛等に関わりのないものとすれば、同性カップルがカミングアウトせずに制度を利用することが可能となることも大きなメリットです。
パートナーシップ制度導入にあたっては、対象を「婚姻相当」の関係や性愛や恋愛に基づく関係、性的マイノリティ当事者が関与する関係等に限定せず、多様な互助関係に開かれた制度としてくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<3について>
他自治体のパートナーシップ制度をみると、届出要件として「他の人とパートナーシップ関係にないこと」を求めるのが通例となっています。
しかし、いわゆるポリアモリー当事者のように、関係者全員合意の上で複数人とパートナーシップ関係を築いているケースは少なくありません。3人以上の友人同士で助け合い支え合っているケースや、戸籍上女性同士のカップルが精子提供者男性と3人で力を合わせて子作り・子育てしているケース等もあります(【参考資料7参照】)。
少子高齢化・非婚化の進展で身寄りのない・少ない人が増え、また経済格差も広がる中で、複数人で支え合う関係の重要性は高まっています。一方で、このような複数人とのパートナーシップ関係を有する人々が社会生活上パートナーシップ関係と認められず、困難を抱えている実態があります。「市民の多様性を尊重し、困難解消の一助とする」という自治体パートナーシップ制度の趣旨を踏まえれば、複数人とのパートナーシップ関係に対応した制度とする意義は大きいといえます。
また、他自治体のパートナーシップ制度では、届出要件として「現に配偶者がいないこと」を求めるのも通例となっています。
しかし、既婚者であっても、配偶者やパートナーの合意のもと、配偶者に加えて配偶者以外の人ともパートナーシップ関係を築くケースは少なくありません。
また、配偶者からDV被害を受けた人が、配偶者から逃げ、離婚できないまま新たなパートナーと内縁関係になるケース等、婚姻生活が破綻していても、法律上の離婚が容易ではないためにいわゆる重婚的内縁関係に至る例も多くあります。重婚的内縁関係については、判例等で限定的ながら配偶者としての法的権利も認められているところです。
現代日本の法令上、複数人との法律婚が認められない中にあって、こういった状況にある人々が困難を抱えている実態があります。上述のとおり、「市民の多様性を尊重し、困難解消の一助とする」という自治体パートナーシップ制度の趣旨を踏まえれば、制度の対象を既婚者にも広げ、多様な関係性をフォローする意義は大きいといえます。
同性婚や同性パートナーシップを制度化した複数の国や地域において、複数婚や3人以上のパートナーシップについても認められる流れもみられる中(【参考資料8・9・10参照】)、これから自治体パートナーシップ制度について検討するというのであれば、「3人以上の関係への制度適用」についても真摯に向き合い検討し、自治体としてしっかりとした見解を示すことが必要です。
パートナーシップ制度導入にあたっては、対象を1対1の関係のみに限定するのではなく、3人以上のパートナーシップ関係にも幅広く門戸を開いてくださいますよう、心よりお願い申し上げます。
なお、複数人とのパートナーシップ関係に対応した制度設計としては、たとえば「2人1組のパートナーシップ関係の届出を複数人と行えるようにする」(たとえば、ポリアモリー関係にある3者A・B・Cについて、AとB、BとC、CとAがそれぞれパートナーシップの届出を行うことで、A・B・C3者間のパートナーシップについて示すことができる)形態等が考えられます。

<4について>
2021年導入の兵庫県明石市を皮切りに、カップルに子がいる場合その子も含め届出・証明する「ファミリーシップ制度」を導入する自治体が増加しています。子以外の親族(親など)も届出対象とする例も増えています。
しかし、このファミリーシップ制度については、子の自己決定権・人権尊重という面から見て問題の大きいものとなってしまっているのが実状です。
たとえば岩手県宮古市のパートナーシップ・ファミリーシップ制度をみると(【参考資料11参照】)、ファミリーシップの対象となる子は、カップルどちらかの実子あるいは養子であればよく、子が15才未満であれば子の同意も不要、届出時の子の来庁も不要、親権者の同意も不要、同居の有無や生計同一であるか否かも問われないため、たとえばDV・虐待のため離婚し元配偶者や子と別居している加害親が、親権者である元配偶者にも子本人にも無断でファミリーシップの届出を行うことが可能な制度設計になっています。加えて、その際に加害親とパートナーシップの届出を行う第三者についても、子と一面識もなくてもファミリーシップの届出が可能です。
子の福祉に資するとは到底思えない、このような杜撰な制度設計がまかり通ってしまっているのが、ファミリーシップ制度の現状です。
そもそも、日本の民法上、家庭裁判所の許可があれば単身者でも未成年者を養子に迎えることは可能であり、真剣にパートナーの子の親になりたいと願うなら養子縁組を目指すのが妥当といえます。実際に、戸籍上女性のカップルの一方が知人男性から精子提供を受け妊娠・出産、もう一方がその子を養子とし、子を認知した実父含め3人揃って子の法律上の親となり子育てしている事例もあります(【参考資料7参照】)。「養子縁組すると実親の親権がなくなり養親の単独親権になる」という問題はありますが、実親との親子関係が切れるわけではありませんし、事実婚で子をもうけ育てている男女のカップルも単独親権であること等を考えると、養子縁組を否定するほどの理由にはならないものと思われます。自治体が「子育てしている同性カップル」を支援したいというなら、児童虐待の有無を確認することも親権者の同意を求めることもなくただ申告のままファミリーシップ証明を出すようなやり方ではなく、たとえば<7について>にて述べるとおり、無料法律相談等で養子縁組手続きをサポートする等の方が理に適っているのではないでしょうか。
また、たとえばいわゆる「子連れ再婚」の夫婦でも、配偶者の連れ子と養子縁組しないケースもあり、そのようなケースであっても家族として社会生活を送ることは十分可能となっています。それと同様に、パートナー証明でカップルの関係性を証明することにより、パートナーの子との関係性も間接的に証明することができるわけですから、子の自己決定権を蔑ろにしてまでファミリーシップ制度を導入する必然性は乏しいものと考えられます。
また、あたかも戦前の戸籍制度のごとく“舅”や“姑”まで1枚の公的文書にまとめてしまうのは、多様性尊重と逆行する、家父長制強化に繋がりかねないものではないでしょうか。子の例同様、パートナー証明でカップルの関係性を証明することにより、パートナーの親との関係性も間接的に証明することができますし、また、<3について>にて述べたとおり複数人と利用できるパートナーシップ制度とすれば、パートナーの親と別途パートナーシップ制度を利用することも可能となりますので、やはりファミリーシップ制度を導入する必然性は乏しいものといえます。
ファミリーシップ制度導入の是非については慎重にご検討くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<5について>
民法においては、第734~736条に下記のとおりいわゆる近親婚禁止規定が定められています。

(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
(養親子等の間の婚姻の禁止)
第七百三十六条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

自治体パートナーシップ制度の導入にあたっては、2015年導入の東京都渋谷区・世田谷区からずっと、この近親婚禁止規定の扱いが議論され続けてきました。
最大のテーマは「法律上婚姻できないため代替手段として養子縁組している同性カップルをパートナーシップ制度の対象とするか否か(民法第734条(の一部)及び736条に準じた禁止規定を設けるか否か)」で、これについては、制度利用可とする自治体が増えています。養子縁組関係を全面的に許容する自治体のほか、パートナーシップ関係に基づく養子縁組関係に限定して許容する自治体等があります。
一方で、民法第734条・735条のその他規定についても、部分的に解禁する自治体がみられます。
たとえば「宮古市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓の取扱いに関する要綱」(【参考資料11参照】)においては、近親婚禁止規定関連で「宣誓しようとする者同士が、近親者(直系血族並びに3親等内の傍系血族及び直系姻族をいう。以下同じ。)でないこと(養子縁組によって近親者となった者を除く。)」と定められており、養子縁組関連の婚姻禁止規定を全面的に適用除外としているほか、第735条後半「第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする」等についても適用除外としています。
このことにより、たとえば幼少時にいわゆる「連れ子養子」で養子縁組し、養親子関係かつ直系姻族関係となった子とも、配偶者と離婚しさえすればパートナーシップ制度が利用可能な制度設計となっています。
また、2015年の制度導入当初の世田谷区においては、近親婚禁止規定関連で「宣誓人同士が親子又は兄弟姉妹の関係にある場合」は制度利用不可とされており、直系姻族関連の婚姻禁止規定が全面的に適用除外とされていたほか、民法第734条にて婚姻不可とされている「おじ・おばと甥・姪」や「祖父母と孫」等が許容され、一方で、婚姻可能とされている(いわゆる“婿養子”等)「義理のきょうだい」が除外される等、独自の制度設計がなされていました(【参考資料12参照】)(なお世田谷区の本規定についてはその後複数回にわたり改定が重ねられている)。
近親婚禁止規定は、社会の家族観・結婚観に大きく関わる問題であり、自治体としてそこに踏み込むなら、市民等に丁寧な説明が必要であるはずです。しかしながら、そのような説明がほとんどなされないまま、上述のとおり各地の自治体によってさまざまな改変が行われている実状があります。これは極めて問題のある状況と言わざるを得ません。特に、“全面解禁”ではなく“一部解禁”とするのであれば、なぜ特定の関係性のみ特別扱いして解禁するのか、詳細な説明がなされて然るべきですが、なぜかなされていない状況です。
そもそも、自治体パートナーシップ制度において近親婚禁止規定を準用することに妥当性はあるのでしょうか。たとえば<2について>にて述べたとおり、パートナーシップ制度を多様な互助関係に開くのであれば、近親婚禁止規定の準用など不要です。
また、制度設計にあたっては、たとえば三親等内の血族であっても、配偶者と比べて法的な立場が非常に脆弱である例が少なくないことにも、あわせて留意されるべきではないでしょうか。
たとえば、少子高齢化・非婚化のすすむ昨今、単身のまま高齢となったおじ・おばを介護し看取る人は珍しくなくなっていますが、おじ・おばは介護休業制度の対象外となっています(【参考資料13参照】)。
これらのことを踏まえ、自治体パートナーシップ制度において近親婚禁止規定を準用することの妥当性や、全面解禁ではなく一部解禁とする場合の正当性等については、丁寧にご検討くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<6について>
自治体パートナーシップ制度については、法的効力を有しないのが通例であることから、パートナーシップ関係が解消されても証明書返納手続き等がなされないまま放置されるケースが想定されます。有効期間を定め、必要な場合には更新手続きを行うよう定めることにより、実態にそぐわない証明書が増加することを防ぎ、制度の信頼性を確保することが可能となります。
パートナーシップ関係は、場合によっては数十年単位で継続され得るものであるからこそ、信頼性確保のためにこのようなしくみを設定することが、長期にわたり関係を継続する利用者にとっても、短期間で関係を解消する利用者にとっても、非常に有用なものとなります。ぜひ、有効期間及び更新手続きについて定めてくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<7について>
自治体パートナーシップ制度については、法的効力を有しない、理念的なものであるのが通例ですが、たとえば東京都渋谷区においては、パートナーシップ制度に関連して「公正証書作成費用助成」や「無料法律相談」といった実効性のある支援制度を設けています(【参考資料14参照】)。
もし、自治体として「婚姻相当の関係にあるにも関わらず法律婚できない(戸籍等公的書類上)同性カップルを支援したい」というなら、実効性のないパートナー証明を発行するよりも、このような実効性のあるとりくみを行う方が理に適っているといえます。
パートナーシップ制度導入にあたっては、理念的なものばかりでなく、実効性のある支援についてもご検討くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<8について>
自治体パートナーシップ制度については、2019年の千葉県千葉市を皮切りに、性的マイノリティ当事者に限らず非当事者男女の事実婚カップル等も対象とするパートナーシップ制度を導入する自治体が増えている等、もはや性的マイノリティだけではない、すべての市民等に関わるテーマとなっています。
したがって、制度導入にあたっては、幅広い市民の意見をさまざまな手段で聴取・調査する必要があります。
ただし一方で、調査というものは調査対象者をいわば“実験動物”として扱うものであり、ハラスメントと無縁ではいられません。特にセクシュアリティ等のデリケートなテーマであればなおさらです。たとえば「学校のホームルームの時間に生徒を対象としたアンケートを実施する」等、半強制的に実施するアンケート調査は、やり方如何によっては重大な人権侵害になり得ます。
もしアンケート等を実施する場合は、安易に漫然と行うのではなく、まず先行調査・研究を精査し、既存のデータで活用できるものがないか、しっかりと検討してください。それでもなお、必要であるからアンケート等を行うということであれば、調査項目・調査対象・調査実施方法等熟考したうえで、市民の過重な負担とならないよう丁寧に配慮しつつ、科学的かつ有用なデータが得られるよう設計し行ってください。
また、自治体の施策検討にあたり、有識者等に意見を聴取するというのはよくあることで、自治体パートナーシップ制度に関しても各地の自治体で行われているところです。
しかし、たとえば同じような思想信条を公言している有識者ばかり集めて意見を聞いたのでは、「結論ありきで“御用学者”ばかり集めている」等と批判されても仕方のない状態になってしまいます。調査・研究にあたり、有識者等に意見を聴取する場合は、できるだけ偏りのないよう、多様な人材に聴取を行ってください。
バランスが難しい問題ではありますが、どうか丁寧にとりくんでくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<9について>
<1について>の【啓発効果・当事者エンパワメント効果】の項でも述べたとおり、自治体パートナーシップ制度のあり方については、性的マイノリティ当事者の間でも意見が分かれており、無関心・批判的な当事者も少なくないことは複数の公的調査により示されているところです。
パートナーシップ制度導入の検討にあたっては、導入で喜ぶ当事者ばかりではなく、辛い思いをする当事者も少なからず存在すること、そしてもちろん、性的マイノリティでない市民にもさまざまな意見があることをしっかりと認識し、多様な価値観に配慮するよう留意してください。
2020年度に実施された「仙台市の男女共同参画推進のための計画のあり方について(中間報告)」に対する意見募集においても、パートナーシップ制度の検討にあたっては「性的少数者の間でもさまざまな意見があることを考慮する」旨、仙台市男女共同参画推進審議会の考え方として示されておりますが(【参考資料15参照】)、今後ともその理念を踏まえた検討を行ってくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<10について>
自治体パートナーシップ制度については、制度そのものの問題点のみならず、制度制定過程の不透明さや、情報公開の不十分さ等が指摘され問題視されているケースもあります。
たとえば2021年度、東京都が【参考資料5】の調査結果を公開しないままパートナーシップ制度に関するパブリックコメントを開始する等し、そのことについて情報公開が不十分であるとして都議会で批判され、急遽報告書公開及びパブリックコメントの期間延長が行われる等、異例の混乱状態となったところです(【参考資料16・17】参照)。
市の施策は広く市民全体が考え議論しておしすすめていくべきものです。そのためには市が、市民の判断に資するための情報を公文書開示請求など待たず積極的に公開していく必要があります。特に自治体パートナーシップ制度は、<8について>でも述べたとおり、もはや性的マイノリティ当事者のみならずすべての市民に直接関わるものとなっており、その重要性はさらに増しています。「“密室”でよく分からないうちによく分からない制度がつくられた」等と言われることのないよう、積極的な情報公開を行っていくことが必要です。
そしてもちろん、制度導入後の利用実態等についての情報公開も非常に重要です。実態がつかめなければ、より良いものにしていくこともできません。特に人口の多い政令指定都市である仙台市の場合、制度利用者に関する情報(年代や(戸籍等公的書類上)性別等)をある程度詳細に公開しても個人が特定される恐れはないといえます。制度利用者の傾向等を統計的手法で分析することは、利用者数の多い大都市でなければできないことです。東北最大の都市である仙台の責任として、積極的な情報公開が求められます。
市政の透明化を図り、市民に開かれた行政を一層推進するべく積極的な情報公開にとりくんできた政令指定都市として、しっかりとした対応を行ってくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

<おわりに~“お茶っこ試案”についてご検討ください~>
♀×♀お茶っこ飲み会・仙台では、上述の課題を踏まえた「仙台市パートナーシップ宣誓証明の取扱いに関する要綱」試案(お茶っこ試案)を作成・公開しております。
パートナーシップ制度導入の検討にあたりましては、ぜひこちらについてもご検討くださいますよう、心よりお願い申し上げます。

「仙台市パートナーシップ宣誓証明の取扱いに関する要綱」試案(お茶っこ試案) 掲載ウェブページ
https://blog.goo.ne.jp/ochakkonomi/e/3e2b883646d9aabf39da6219cc9170e3


<参考資料>
【参考資料1】仙台市議会会議録 仙台市議会平成29年第4回定例会(第4日目)発言21-29
https://www.city.sendai.miyagi.dbsr.jp/index.php/1694504?Template=view&VoiceType=all&DocumentID=2844
【参考資料2】身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン及び事例集(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/miyorinonaihitohenotaiou.html
【参考資料3】「佐賀県パートナーシップ宣誓制度」を開始しました(佐賀県庁ホームページ)
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00382128/index.html
【参考資料4】「男女共同参画推進条例の一部改正及びパートナーシップ制度について(素案)」に対する意見と市の考え方(岡崎市ホームページ)
https://www.city.okazaki.lg.jp/public/002/p034245_d/fil/iken.pdf
【参考資料5】性自認及び性的指向に関する調査(東京都総務局人権部)
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/base/upload/item/R3chosa.pdf
【参考資料6】性的マイノリティの方々への支援に関する調査(東京都港区ホームページ)
https://www.city.minato.tokyo.jp/jinken/documents/seitekimanoritysiennikansurutyousahoukokusyo.pdf
【参考資料7】「30で死のうと…」自分の乳房に呆然 トランスジェンダー語る葛藤(WEB女性自身)
https://jisin.jp/domestic/2061967/3/
【参考資料8】コロンビアで男性3人が「結婚」、初めて法的に認められる(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/marriage-idJPKBN1970NW
【参考資料9】「3人婚」の届け出を受理、ブラジル初(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/2898343?pid=9442437
【参考資料10】アメリカでいま「一夫一妻」ではない「複数婚(ポリアモリー)」が広がるワケ(橋爪大三郎)(現代ビジネス)
https://gendai.media/articles/-/89710
【参考資料11】9月28日から宮古市パートナーシップ・ファミリーシップ制度をはじめます(宮古市ホームページ)
https://www.city.miyako.iwate.jp/seikatu/partnership_familyship_01_3.html
【参考資料12】パートナーシップ宣誓制度の改正について(世田谷区公式ホームページ)※アーカイブ
https://web.archive.org/web/20210112120916/https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/d00164330_d/fil/15.pdf
【参考資料13】介護休業について(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/closed/index.html
【参考資料14】『渋谷区パートナーシップ証明書取得助成金』交付について(渋谷区公式ウェブサイト)
https://files.city.shibuya.tokyo.jp/assets/12995aba8b194961be709ba879857f70/7ca484d4ab86499080035517eec3f5ad/assets_kodomo_psjosei_chirashi.pdf
【参考資料15】「仙台市の男女共同参画推進のための計画のあり方について(中間報告)」に対する意見募集の実施結果について(仙台市ホームページ)
https://www.city.sendai.jp/danjo-kikaku/kurashi/manabu/danjo/torikumi/tyuukanhoukoku.html
【参考資料16】「東京都パートナーシップ宣誓制度」素案の公表及び意見募集について (都庁総合ホームページ)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/02/14/07.html
【参考資料17】東京都議会 令和4年3月16日 総務委員会(東京都議会 会議録検索)
https://www.record.gikai.metro.tokyo.lg.jp/129062?Template=document&Id=4877#all:1

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