♀×♀お茶っこ飲み会・仙台

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♀×♀お茶っこ飲み会とは?

2010 年より活動中。宮城県仙台市を拠点に「女性を愛する女性」の茶話会やフリーペーパーの発行、展示企画・トークイベントほか、多様な性のあり方に関わる様々な企画にとりくんでいます。 連絡先:MEME  ochakkonomi■gmail.com (■を@に変えて送信してください) ※いただいたメールに返信するとエラーになってしまう例が複数発生しています。お問い合わせの際は、このアドレスからの返信メールが受信できるようドメインなどの設定をお願いします。

<複数婚トークイベントレポ!>その6(終)3人でフリートーク&フォトレポート!

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その6(終)

・第二部 3人でフリートーク
ポリアモリー当事者のけっけさんも交えて、登壇者3人で語り合いました。

<けっけさんのお話>
自分としては、今のところ複数婚ができないからといって困っているというわけではない。将来的には好きな人たちと共同生活をして一緒に子供を産み育てたいという希望は持っているが、それは現行制度を使いこなすことで十分可能なのではないかと思っている。ポリアモリーが子育てというとすぐ「子供がかわいそう」と言われることも多いが、自分としては子育てに関わる大人は多い方が良いという気持ちがある。子供のうちに、色々な人がいるんだということを知り、多様な考え方に触れることができることができるのはメリットだと思う。すべての人がポリアモリーになるべきだなどとは全く思っていない。ただ、ポリアモリーというライフスタイルを選んでいる人たちがいることを知って欲しいし、こういう選択肢もあるんだよと伝えたい。ポリアモリーが排除されるような世の中であって欲しくはないし、何かあった時に守ってくれる法律であって欲しいと思う。

<山下弁護士のお話>
もともと子供というのは地域の中で多くの人に支えられて育ってきたわけで、子育てに関わる大人は多い方が良いというのは自分もその通りだと思う。愛着関係形成のための配慮や子供の出自を知る権利を尊重する方策、児童虐待を行うような者が養育者として入り込まないようにする対策等は必要と思うが、子供の養育に関わる人間が増えることで、子育てが密室化せず虐待リスクを下げる面もあるのではないかと思う。また、婚姻制度適用の必要性という点では、同性婚についても意見がさまざまあり、自分には必要ないという同性愛当事者も少なくない。ただ、当初はそう思っていても、後の人生でやはり必要だと感じる出来事に直面する場合もある。同性婚に関しては、世論が喚起されることで見えづらかったさまざまなニーズが見えてきて、現在の同性婚訴訟にも繋がっているところである。一方で、複数婚に関する議論はまだ始まってすらおらず、ニーズがあるのかどうかもまだよく分からないが、同性婚同様、今後世論が喚起され、議論が進んでいく中で、ニーズが見えてきて制度改正に繋がっていくようなこともあるのかもしれないと思う。

<みさえのはなし>
子育てに関して言えば、ワンオペ育児が問題となるなど多くの親が子育てに疲弊している現状を考えると、少人数の核家族だけで閉じた子育てには無理が出てきているような気はする。また、現在ポリアモリー当事者の取材記事に酷い言葉のコメントが多数つけられているような状況を見ると、ポリアモリーに対する蔑視は根強いものがあると感じる。特に、人権を守る職業である弁護士に蔑視的なことを言われるのは辛いし、何か法律的なことで困ったときに相談するのも困難になってしまうので、弁護士の方々にはもっとポリアモリーなど1対1にとらわれない関係について知って、考えて欲しいと思う。また、特に女性として生きている当事者の場合、蔑視は性暴力被害など身の危険にも繋がりやすいと感じる。私自身ノンモノガミーなので切実な問題である。婚姻制度云々以前に、まずは1対1の関係も複数との関係も等価であってどちらも蔑視されるべきではない、という価値観が広まって欲しいと思っている。


・トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」フォトレポート!

トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」、当日の雰囲気を写真でもちょこっとだけご紹介します!


山下弁護士(右)けっけさん(左)女郎蜘蛛魅冴(中央)
登壇者3名。冷え込み厳しい師走の仙台で熱く語り合いました!


山下弁護士には、ややこしい法律のアレコレを面白く分かりやすく説明していただきました。
ちなみに今回も流行りのパワーポイントはあえて不使用。聞く側も真剣勝負!


真剣な表情で(時に笑いも挟みつつ)議論する登壇者3名。


ポリアモリー当事者として、ご自身のお考えや体験を語ってくださったけっけさん。


山下弁護士が執筆に関わっておられる書籍「どうなってるんだろう? 子どもの法律」「どうなってるんだろう?子どもの法律PART2」の特別販売も実施。
山下弁護士は気さくにサインにも応じてくれました!


【オマケ】仙台の師走の風物詩「SENDAI光のページェント」。きらめくケヤキ並木。


※本ブログに掲載されている画像の無断転載を禁じます。

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<複数婚トークイベントレポ!>その5【「結婚=1対1でするもの」っていう価値観、どこから来てるの?~日弁連意見書と「結婚の自由をすべての人に」について~】

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その5

【「結婚=1対1でするもの」っていう価値観、どこから来てるの?~日弁連意見書と「結婚の自由をすべての人に」について~】
********************************************************************************
<「一般社団法人MarriageForAllJapan - 結婚の自由をすべての人に」公式ウエブサイト(2019年11月15日閲覧)より抜粋>

―結婚。
ふたりが家族になること。
社会を構成する大切なピースとなって
法律によって義務と権利を与えられること。
http://marriageforall.jp/

Q.「結婚の自由をすべての人に」という名前の意味を教えてください。
A. 「2人で一生を共に生きていきたい」と考えたとき、カップル双方が結婚したいと望めば結婚することができ、また、結婚という形をとらないことを望むならば結婚を強制されないということ、それが「結婚の自由」です。 そのような結婚という選択肢は、異性カップルであるか同性カップルであるかにかかわらず、平等に用意されるべきですから、そのことを「すべての人に」という文言で表現しています。
http://marriageforall.jp/faq/ 

<同性の当事者による婚姻に関する意見書(日本弁護士連合会)11ページより抜粋>

論者によっては、婚姻の自由や平等原則を理由にして同性婚を認めた場合には、民法が婚姻の実質的消極的要件の規定(民法731条から738条まで)で禁止している重婚なども認めざるを得ないことになりかねないとの懸念を示すことがある。
しかし、民法が定める婚姻の実質的消極的要件の制定理由は、要件ごとに異なっており、あくまで自己決定権や平等原則との関係で個別に検討していくべき問題である。例えば、重婚の禁止の趣旨は、婚姻が人と人の結合、つまり一対一の結合をその本質とすることにあり、それ自体、個人の尊厳と両者の本質的平等に立脚した婚姻制度による当然の帰結と言えるそれゆえ、重婚とは、自己決定権や平等原則との関係においても許されるべきものではないのであり、同性婚を認めることとは全く次元を異にするものである。
したがって、民法が定める他の消極的要件との関係は、性的指向によって別異の取扱いをする正当化事由とはなり得ない。
(※下線は引用者による)
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2019/opinion_190718_2.pdf
********************************************************************************

<みさえのギモン>
そもそも「結婚は1対1でするもの」っていう価値観、いったいどこから来てるの?キリスト教とか、宗教的なベースがある国だったらまだ分かるけど、日本はそういうわけでもないよね。
「結婚の自由をすべての人に」って謳って同性婚法制化推進活動してる、弁護士さんもたくさん参加してる団体のホームページのトップページにいきなり「―結婚。ふたりが家族になること。」とか何の説明もなく書いてあったり、日本弁護士連合会(日弁連)が「同性婚認めないのは人権侵害だから国はさっさと法改正して何とかしろ」って言って出した意見書の中で重婚が唐突にわざわざ名指しでディスられてたり、なんで複数婚は法律の専門家の人たちにここまで否定されなきゃならないの?

<山下弁護士のお話>
まず日弁連意見書に関して、現状法律婚できないケースは同性婚のほかにも近親婚、重婚、未成年の場合等あるが、それぞれ異なるものであって別個に検討すべき事柄である、という主旨自体はその通りと思う。しかし重婚を具体的に例示してこのような表現で否定する必要はなかったし、このような記載はむしろ有害と思う。人権問題として国に同性婚法制化を求める意見書の内容は、全体的には非常に有意義なものであっただけに、なぜこのような記載が入ってしまったのか、疑問に感じるところである。
そもそも、なぜ当たり前のように「結婚は1対1でするもの」とされているのか、はっきりした説明は実は法律の専門書にも書かれていない。「結婚は1対1だ」という主張は、過去の男尊女卑的な一夫多妻制度に対する反省に重点があると思われるが、それを超えて自立した個人同士の対等な複数婚関係まで否定するのはおかしな話だと思う。
同性婚や同性愛・セクシュアルマイノリティに関して言えば、私が「LGBT法律家支援ネットワーク」を立ち上げた2007年当時は、そういったことが弁護士業界で人権問題として顧みられることはほとんどなく、人権派の弁護士の集まりでホモネタで盛り上がるような状況もあった。しかしそのような状況はここ10年ほどで大きく変わってきている。「婚姻は男女でするもの」と法律書でも決めつけられていた時代から、当事者が声を上げるなどさまざまなとりくみがあって今回の日弁連の意見書が出るまでに至ったことを考えれば、当事者が声を上げて存在を示していくことで、複数婚やポリアモリーについても状況は変わっていくのではないかと思う。

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<複数婚トークイベントレポ!>その4【3人以上で結婚したい、家族になりたい、子供育てたいって思ったとき、今の制度でできることはあるの?】

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その4

【3人以上で結婚したい、家族になりたい、子供育てたいって思ったとき、今の制度でできることはあるの?】
<みさえのギモン>
とりあえず今の法律上、3人以上で結婚することはできないわけだけど、でもやっぱり3人以上で対等な関係で結婚したい、家族になりたい、って考えたときに、何か工夫できることとか、使える制度ってあるの?例えば同性カップルの場合だと、養子縁組したり、公正証書つくったり、法律婚できない代わりにそういういろんなやり方で工夫してるわけだけど、そういうテクニックって複数婚でも使えるものなの?特に、 3人以上で子供育てたいって思った場合、子供にできるだけ辛い思いさせないように、3人なら3人全員が子供の養育にしっかり法律上も責任持つようなかたちでやるためにはどうしたら良いの?同性カップルの場合でも、例えば女性同士のカップルが知り合いの男性から精子提供受けて3人で協力して子作り子育てするケースみたいな、赤の他人3人以上で力合わせて子育てするケースあるよね。複数婚やポリアモリーの人だけの問題じゃない話だと思うんだけどどうなの?

<山下弁護士のお話>
複数婚したい、3人以上で結婚したい、と思った場合、抽象的な概念としての「結婚」を思い描くのではなく、まずは自分たちが「結婚」というものに対して具体的に何を求めているのか考えてみることが重要と思う。自分たちが具体的にどんなことで困っているのか、自分たちにとって何が必要で何が必要でないのか考えてみて、浮かび上がってきた事柄について個別に対処法を検討していくのが良いのではないか。人生というのは生きていく中でさまざまな出来事があるので、今現在困りごとがないとしても、先々まで想定して考えてみるのが大切である。
また、3人以上で子育てする場合、子供の実父母等でない、赤の他人である養育者が子供と法律上の家族関係を結ぶためには、例えば子供と養子縁組をする方法がある。ただし、未成年者を養子にするためには原則として家庭裁判所の許可を受ける必要がある(※いわゆる「連れ子養子」と「孫養子」は例外的に許可不要。ただしこの例外規定は子供の福祉の観点から個人的には疑問があり、すべての未成年者養子縁組について家庭裁判所がきちんとチェックするよう制度改正すべきと考える(参考:母親の再婚相手と養子縁組したくない(どうなってるんだろう?子どもの法律))。子供の福祉のための許可制度なので、子供にとって不利益なものではないと判断されれば縁組許可は出るが、ただ複数婚/ポリアモリー的関係の当事者に許可が出るかどうかは、複数婚/ポリアモリー的関係の法的扱いがはっきりしていない現状では未知数なところもある。

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<複数婚トークイベントレポ!>その3【“浮気公認契約”ってアリ?】

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その3

【“浮気公認契約”ってアリ?】
<みさえのギモン>
ポリアモリーだったり複数婚的関係持ってる人って、その中の1人と婚姻届出して法律婚してるケースがあるよね。でも今の婚姻制度って「貞操義務」ってものがあるよね?結婚相手が浮気したら慰謝料取れるし、結婚相手の浮気相手からも慰謝料取れるよね。みんな仲良しなうちはいいけど、モメた時に法律婚配偶者から「貞操義務違反だ!慰謝料払え!」って言われちゃうリスクあると思うんだけど、そうならないようにあらかじめ夫婦で「浮気公認」の誓約書作るってアリなの?後になって裁判とかになった時「そんな誓約書なんか認められない!」とか言われちゃわないの?法制度上パッケージで夫婦の義務ってされてるものを、コレはいらないコレだけ欲しいって、ポイポイできちゃうものなの?

<山下弁護士のお話>
例えばAとBの夫婦が「浮気公認」の誓約書を作り、そのうえでAがB以外の者と性的関係を持っていたところ、Bの気が変わってAの不貞を咎める訴えを起こしたような場合、“浮気公認契約”があるからBの訴えは無効となるのか、それとも “浮気公認契約”の方が公序良俗違反で無効とされAは不貞行為を働いたとして責任を問われることになるのか、そのあたりは私が把握できる範囲で判例がなくはっきりしない。どちらの可能性も考えられ、夫婦で何か約束していたからといってそれが必ずしも有効とされ優先されるとは限らないということに留意する必要がある。
なお、貞操義務については、民法に義務として明記されているわけではなく、離婚の訴えを提起することができる場合として「配偶者に不貞な行為があったとき」と示されていることから貞操義務があるものと解釈されている。また、不貞行為に基づく慰謝料請求については、今の日本においては不貞行為をした配偶者だけでなく、その相手方にも慰謝料請求できるようになっているが、しかし世界的に見るとこれはかなり特殊なことであり、不貞行為の相手方に対する慰謝料請求は認められない国がほとんど。日本国内の学説でも、婚姻カップルふたりの間の約束違反の話にほかの人まで巻き込むのはおかしいという見方が主流であるし、そもそも国家権力が介入してまで貞操義務を守らせることについて疑問視する考え方もある。なお、今の日本の裁判所の判断としては、なぜ不貞行為に対して慰謝料請求訴訟等の法的措置が認められているのかということについては、「配偶者には性的独占権があるから」ではなく、「不貞行為により夫婦としての共同生活の平和が破壊されるから」と解されている(よって夫婦生活がすでに破綻していた場合は不貞行為に対する慰謝料請求は認められない)。しかしこの解釈で考えれば、「不貞行為はあったが夫婦としての共同生活の平和が破壊されていない場合」や「不貞行為ではないが夫婦としての共同生活の平和が破壊される行為があった場合」はどうなるのか、という話にもなってくる。将来的にはそういった観点から争われる事例も出てくるかもしれない。

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<複数婚トークイベントレポ!>その2【世の中にたくさんある事実上の複数婚的関係、法律ではどう扱われてるの?】

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その2

【世の中にたくさんある事実上の複数婚的関係、法律ではどう扱われてるの?】
<みさえのギモン>
刑法や民法では重婚ダメってなってるけど、でも事実上の複数婚的関係は世の中たくさんあるよね?さかのぼってみれば、日本でも江戸時代あたりまでは、身分の高い男の人は側室がいて当たり前だったみたいだし、皇室も明治天皇までは側室いたし。今でも力のある男の人が家庭2つ持ってたり、そんな話は珍しくないよね。ほかにも例えば、「婚姻関係破綻してるけど相手が離婚届出すの拒んでて戸籍上は既婚のまま」状態の人が別の人と事実婚関係になるケースとかもよくある。そしてもちろん、ポリアモリー、自立した個人同士で、全員合意の上で対等な関係を築くという、そういう複数婚的関係もある。
そんなこんな、現実的にたくさん存在している複数婚的関係って、法律上どう扱われてるの?1対1の男女のカップルの事実婚だと、婚姻届出してなくても同じような権利がかなり認められてるし、 1対1の同性カップルも、まだ法律婚こそできないけど最近ではかなり婚姻カップルに準じた権利が認められるようになってきてるよね。事実上の複数婚関係もそういう保護ってあるものなの?それとも全部ダメってされちゃってるの?
あと、海外には複数婚が認められてる国もあるけど、そういう国で複数婚してる人たちが日本に来たらちゃんと夫婦として扱ってもらえるの?

<山下弁護士のお話>
日本の歴史を振り返れば、古くは「魏志倭人伝」にも一夫多妻の記載があるなど、一夫一婦制規範は必ずしも当たり前のものではなかった。しかしながら、重婚罪に象徴されるように、現代日本の婚姻制度は一夫一婦制を基本としており、事実上の複数婚的関係については、1対1の事実婚関係のようには保護されてはいないのが現実である。
ただし、法律上婚姻している者が他の者と事実婚関係にあるような場合(重婚的内縁関係)、法律婚が破綻し実態を失っているのであれば、遺族年金や労災保険など社会保障法上は事実婚配偶者の方が配偶者として扱われ、一方で遺産相続など民法上は法律婚配偶者の方が配偶者として扱われる、ということもある。法律婚配偶者が法制度上常に優先されるとは限らないので、注意が必要である。
また、複数婚/ポリアモリー的関係に関する判例としては、男1人女2人が性的関係を伴う共同生活を送っていたところ、生活費の分担等についてトラブルになり裁判になったケースがある(東京高判平12・11・30判タ1107号232頁)。この裁判では、この3人の共同生活が公序良俗に反するものとされ、生活費負担の合意も公序良俗違反として無効とされた。ポリアモリー的関係を否定する判決とも取れるが、公序良俗違反というのはあくまで個々の事例ごとに判断されるものであり(例えばこのケースの場合、3人の親族も巻き込んだトラブルになっていたなどさまざまな背景があった)、この判決によってポリアモリー的関係がすべて否定されたものとは一概には言えないと思われる。ポリアモリー的関係の法的扱いについては、判例もまだほとんどなく、明確になっていないところが多いのが現状といえる。また、「何が公序良俗違反か」というのは時代によって変わっていくものである。例えば、最近ではすっかり一般的になり、東京都渋谷区のパートナーシップ証明の要件にもなっている同性カップルの公正証書作成だが、20年ほど前には「同性ふたりで夫婦同然に生活するための公正証書など公序良俗に反するので作れない」などと公証役場で断られることもあった。複数婚/ポリアモリー的関係についても、時代とともに感覚が変化していく可能性はあるのではないかと思う。
なお、海外には一夫多妻制の国もあるが、例えば容認国の一夫多妻の夫婦が揃って来日した場合、全ての妻が妻として在留資格等認められるかというとそうではなく、妻は1人までしか認められないのが実状である。なお、同性婚の場合、同性間の法律婚が可能な国出身の外国人同性婚(法律婚)カップルであれば、一方が就労等で来日した場合、その配偶者も、配偶者としての在留資格は付与されないものの、「特定活動」という在留資格で日本で暮らすことができる。ただし、日本人と外国人の同性カップルの場合、同性婚可能国で法律婚していたとしても、外国人配偶者の在留資格は認められないのが現状であり、現在裁判で争われているところである。一方、私自身も訴訟等に関わった事例で、2019年3月、日本国内で日本人男性と長年結婚同様の共同生活を送ってきた台湾人男性に在留特別許可が付与されるという事例があった。外国籍の同性パートナーに在留資格が付与されたケースとしてはおそらく国内初と思われる、大きな意義のある事例である。同性国際カップルの在留資格については、このようなさまざまな動きから、今まさに変化が起きているところといえる。

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<複数婚トークイベントレポ!>その1【重婚罪ってナニ?】

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
<トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」当日レポ!>その1

・第一部 山下弁護士のお話~複数婚/ポリアモリーを巡る法律の実態~
複数婚/ポリアモリーを巡る法律って、そもそも今いったいどういうことになってるの?
一般にはあまり知られていないその実態を山下弁護士に教えていただきました。

【重婚罪ってナニ?】
********************************************************************************
刑法(抜粋)
第二十二章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪
(重婚)
第百八十四条 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
********************************************************************************
<みさえのギモン>
重婚罪って一体何なの?2人以上の人と結婚したら2年以下の懲役ってどういうこと?!しかも強制性交とか強制わいせつみたいな人の尊厳踏みにじる犯罪と、全員合意の上で2人以上の人と結婚する行為が同じカテゴリで扱われちゃってるって絶対納得いかないんだけど!なんでこんな法律あるの?

<山下弁護士のお話>
法律で懲役などの刑罰が定められている背景には、それぞれ必ずその刑罰によって守りたいもの(保護法益)がある。では重婚罪によって守られる保護法益とは何かといえば、個人についてではなく、実はそれは「一夫一婦制」という制度そのものであると解されている。現実問題としては、重婚にあたる婚姻届を役所に提出したところで通常は窓口で不受理となるため、重婚罪が適用となる事例は極めて特殊なケースに限られる(虚偽の離婚届を提出したうえで別の相手と婚姻した場合(※離婚届が虚偽と分かればその届は無効となる一方、後に提出した婚姻届が直ちに無効となるわけではないため重婚状態になる)など)。なお、重婚罪が適用となるのはあくまで法律婚が重なった場合のみであり、事実婚であれば複数人と結婚生活を営んだとしても重婚罪には問われない。
重婚罪は現在、実務上はほとんど機能しておらず、また、重婚に刑罰を科すことについて疑義を呈する刑法学者も多いが、家族関係の法律の改正については国会の動きが非常に遅い傾向にあるなどの背景からか、明治制定のこの罪がいまだに化石のように残り続けている。
しかし、現状適用事例がほぼないとはいえ、今後複数婚法制化の議論が活発になれば、重婚罪をどうするかという問題は重大なテーマになると思われる。

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【レポ掲載!】トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」開催しました!

2019年12月24日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」、16人の方にお集まりいただき予定通り開催いたしました!

3人以上で結婚しちゃなんでダメなの?「結婚の自由をすべての人に」って言うからには、複数婚だって認められなきゃおかしいんじゃないの?そんな素朴な疑問から出発した今回のトークイベント。
複数婚やポリアモリーを巡る法律の現状を山下弁護士に教えていただき、ポリアモリー当事者であるけっけさんのお話も伺いながら、多様なライフスタイル、多様な性のあり方が尊重される未来を思い描き熱く語り合う、ディープな2時間半となりました。

今の日本は、同性婚や夫婦別姓の議論が盛り上がっている一方で、生涯未婚率は急上昇、離婚する人もたくさんいます。家族になる方法が「1対1で結婚する」という選択肢しか実質ないというシステムにもう無理がきているのかもしれません。
でもじゃあ、どうすれば良いの?どんな制度なら良いの?そもそも自分はどうしたいの?
そんなことを、ひとりひとりが自分なりに考えていくことが大事な時代になっているのではないでしょうか。
そのような時代にあって、複数婚やポリアモリーについての議論は、実はすべての人にとって他人事ではない、大切なことがらに気付かせてくれるものなのではないかと思います。

濃厚すぎるトークに熱心に耳を傾けてくださった参加者の皆様、カンパにご協力いただいた皆様、当日の手伝いを買って出てくれた皆様、告知にご協力いただいた皆様、本イベントに際しお力添えいただいたポリーラウンジ様、そして多忙を極める中仙台までお越しいただいた山下弁護士&けっけさん、本当にありがとうございました!

ちなみに、とてもネットには書けないディープな話も飛び交う今回のトークイベントでしたが、差し支えない範囲で(笑)当日のトークの内容をこちらのブログでお届けしちゃいます!差し支えない範囲でまとめただけでも超長文だけど読み応えありますよ~!ぜひご覧ください!


・<告知記事>トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」2019/12/7(土)開催!

・<複数婚トークイベントレポ!>その1【重婚罪ってナニ?】

・<複数婚トークイベントレポ!>その2【世の中にたくさんある事実上の複数婚的関係、法律ではどう扱われてるの?】

・<複数婚トークイベントレポ!>その3【“浮気公認契約”ってアリ?】

・<複数婚トークイベントレポ!>その4【3人以上で結婚したい、家族になりたい、子供育てたいって思ったとき、今の制度でできることはあるの?】

・<複数婚トークイベントレポ!>その5【「結婚=1対1でするもの」っていう価値観、どこから来てるの?~日弁連意見書と「結婚の自由をすべての人に」について~】

・<複数婚トークイベントレポ!>その6(終)3人でフリートーク&フォトレポート!


関連記事
2017年に山下弁護士をお招きして開催したトークイベントの記録です。今回のイベントとも関連の深い内容ですのでぜひあわせてご覧ください!
2017/2/11開催トークイベント「徹底討論!同性婚法制化の問題点を推進派の弁護士さんに聞いてみた」(ゲスト:山下敏雅弁護士)

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トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか?~ポリアモリーと法律について考える~」2019/12/7(土)開催!

2019年10月31日 | 2019/12/07複数婚トークイベント
♀×♀お茶っこ飲み会・仙台が、複数婚/ポリアモリーについて考えるイベントを開催します!

「同性婚」や「夫婦別姓」がよく話題になり、多様な結婚や恋愛・性愛のあり方について注目度が高まっている今日このごろ。
しかし一方で、「結婚や恋愛は1対1でするのが当たり前」と決めつける価値観が、暗黙の前提になってはいないでしょうか。
でも、それって、よく考えてみると不思議な話です。たとえば子供や友達は複数いたって当たり前なのに、結婚相手や恋人は1人だけじゃなきゃダメって言われるのは、一体どうしてなんでしょう?
「ポリアモリー」と呼ばれる、複数の人と同時に、それぞれが合意の上で性愛関係を築くライフスタイルを実践している人たちだっています。3人以上で結婚しちゃなんでダメなの?「結婚の自由をすべての人に」って言うからには、複数婚だって認められなきゃおかしいんじゃないの?そんな素朴な疑問を、遠慮知らずのドラァグクイーンが同性婚応援してる弁護士さんにざっくばらんにぶつけちゃいます!


*****トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか? ~ポリアモリーと法律について考える~」詳細*****

日時:2019年12月7日(土)14:00‐16:30(開場13:30)
会場:日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター) エッグホール
(宮城県仙台市青葉区旭ヶ丘3-27-5、仙台市営地下鉄南北線旭ヶ丘駅東1番出口より徒歩3分)
参加費:1,000円
定員:45人
主催:♀×♀お茶っこ飲み会・仙台
協力:ポリーラウンジ
2019年11月29日(金)まで電子メールあるいはpeatixにて要事前申し込み
※申し込み〆切を2019年12月5日(木)まで延長しました。


<ゲストプロフィール>

弁護士 山下 敏雅(やました としまさ) 
同性婚人権救済弁護団団長・「結婚の自由をすべての人に」弁護団メンバー)
1978年高知県生まれ。2003年東京弁護士会に弁護士登録。川人法律事務所、弁護士法人東京パブリック法律事務所(公設事務所)での勤務を経て、2012年7月、永野・山下法律事務所設立。過労死・過労自殺事件、児童虐待事件、セクシュアル・マイノリティ支援、HIV陽性者支援等に取り組む。GID法律上も父になりたい裁判弁護団長。
2017年には♀×♀お茶っこ飲み会・仙台主催のトークイベント「徹底討論!同性婚法制化の問題点を推進派の弁護士さんに聞いてみた」に出演している。

コメンテーター:けっけ
岩手県出身・東京都在住のポリアモリー当事者。リレーションシップ・アナーキー。シェアハウスに暮らし、新しい家族のあり方について日々考えている。ポリーラウンジ幹事。

ナビゲーター:女郎蜘蛛魅冴(じょろうぐもみさえ)
ドラァグクイーン。♀×♀お茶っこ飲み会・仙台代表。


【申し込み方法】
電子メールかpeatixのいずれかでお申し込みください。
(どちらか一方でお申し込みください。両方で申し込む必要はありません。)

<電子メール申し込み>
電子メールタイトルを「12/7イベント参加申し込み」とし、本文に
①名前(通称可)
②連絡先メールアドレス
③山下弁護士に聞いてみたいこと
を書いて
ochakkonomi■gmail.com
(■を@に変えて送信してください)
あてお申し込みください。
なお、お申し込みは先着順に受け付け、定員に達した場合はその時点で締め切ります。

<peatix申し込み>
下記イベントページよりお申し込みください。
https://ochakkonomi-20191207hukusuukon.peatix.com/


※申し込みいただいた方々の個人情報は、適切に管理し、本企画に関する事務以外には使用しません。
※参加費は当日会場にていただきます。釣り銭のないようご協力お願いいたします。
※当日はアンケートの記入をお願いいたしますので、筆記用具をお持ちください。
※本企画はゲストの方々のご厚意と有志からのカンパにより運営されています。趣旨にご賛同くださる方はぜひカンパのご協力をお願いいたします。
※当日会場にて、山下弁護士が執筆に関わっておられる書籍「どうなってるんだろう? 子どもの法律」および「どうなってるんだろう?子どもの法律PART2」を各10部限定で販売します。
通常よりお安くお求めいただけますので,この機会をお見逃しなく!
どうなってるんだろう? 子どもの法律」山下敏雅・渡辺雅之編著(高文研)
当日価格 1,600円(通常より600円オトク!)
どうなってるんだろう?子どもの法律PART2」山下敏雅・渡辺雅之編著(高文研)
当日価格 1,600円(通常より600円オトク!)


<ポリー用語基礎知識>
※用語の解釈については諸説さまざまあり、まだ定義が固まっていない場合もあります。ひとつの参考としてごらんください。
【ポリアモリー】恋愛や性愛の相手方を一時期に1人だけに限定しないありよう。特に、複数の人と同時に、それぞれが合意の上で性愛関係を築くライフスタイルを指していうこともある。なお婚姻関係に着目した場合は「ポリガミー(複数婚)」という。
【モノアモリー】恋愛や性愛の相手方を一時期に1人だけに限定するありよう。なお婚姻関係に着目した場合は「モノガミー(単数婚)」という。
【ノン・モノガミー(ノン・モノアモリー)】モノガミー(モノアモリー)でないこと。恋愛や性愛において、1対1の関係性にとらわれないありよう。
【オープンリレーションシップ】パートナーがパートナー以外の人と性的な関係を持つことをお互いに合意している関係のこと。
【メタモア】恋人の恋人(自分以外のパートナー)のこと。
【コンパージョン】愛する人が、自分以外のパートナー(メタモア)との間に愛情を感じていることが自分にとっても幸福と感じられる時に生じている感情。「嫉妬」の対義語に位置付けられる。
【リレーションシップ・アナーキー】人との関係性に、「恋人」「友人」など社会的に規定されている名前をつけることを拒否し、関係性のあり方を自己決定する価値観。



<申し込み・問い合わせ先>
♀×♀お茶っこ飲み会・仙台
ochakkonomi■gmail.com(■を@に変えて送信してください)
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