Leica mp / 50mm / provia100f / hongochi, Nagasaki / 202004
外は暗くなり、雨は段々酷くなって行った。いつものように風が自分を傷つけながら建物にぶつける音に不安を感じる。
突然ノックの音、間髪を入れずドアノブを捻る音に椅子から飛び上がった。
こんな時間に来る人はいないし、それに許可もなしにドアノブを回してドアを開けようとする人なんっていない、、、。
”誰?” 自分の声が荒っぽく聞こえる。
しかし、それよりもドアを開けようとするおばあさんの声には、まとわりつく執拗さがあった。”〜〜です。ドアを開けて下さい”
一所懸命頭をまわすが、、、初めて聞く名前だった。
知っている人だとしても、こんな時間に強引にドアを開けろと要求する人はいない。
僕の返事を待つこともなく、ドアノブを何度も捻る、、、と同時に、”ドアを開けて下さい”と。
ドアを開けることが出来ないでいた。外の状況が全く分からない。ドアを開けたら、どんな人が立っているのか、一人か二人かも分からない。
しかも、この人は、玄関を通ってもう自分の部屋の前にいるのだから、、、ドアを開けることには相当な勇気が必要であった。
とにかく、”ドアから離れて下さい。玄関に行って待ってください”と何度も大声で伝えると、
やっと部屋のドアから離れたようだった。
恐る恐るドアを開ける。外には、ずぶ濡れのおばあさんが立っていた。
家に行くのだと言う。
でも、その住所と、その家のまわりにある小学校は、ここではなく車で三十分の距離。
この雨の中、歩いて来たと言うが、どうしても飲み込むことが出来なかった。
ここが、自分の家ではないことにはやっと納得したようで、おばあさんが外に出でいく。
でも、
一人で行かせるのが忍びなく、下まで一緒に降りてみることにした。
足が悪いので、僕の腕を捕まえ雨の中を必死で歩く。
容赦無く振り続ける雨に、服が濡れて来ていた。
雨が強ければ強いほど、おばあさんの腕の力も強くなってくる。
しかし、痩せ細った体の震えも一緒に伝わって来る。