そろそろ終わらせたいですが、続きます。
凶相男と何度となく対峙して判ったのですが、凶相男は朝方は借りて来た猫の様に大人しい。日中は少々イライラしている。夕方は怒り口調。そして夜になると最大MAXでドーベルマン状態となります。理由は判らないですが、顔を見なけれはとても同一人物とは思えません。まるで別人です。
朝方は表情も少し真面に見えます。口調も敬語だし、これで私の親父も騙されたのかと思いました。多分、本来の凶相男は朝方だと思われます。タクシー会社の上司も大人しい男と言っていましたから。それが夜になると人が変わる。まるで満月の夜の狼男です。昔の日本だと狐憑きなのでしょうね。何が作用して変わってしまうのか判りませんが、人間の脳は変な意味合いですが神秘です。私には全然判らない世界です。
凶相男の法則と言いますか、精神状態を鑑みれば朝方交渉した方が良いと思いました。そして私と弟のコンビでは凶相男に恐怖心を与えてしまう。怖いから暴れている可能性も十分考えられます。ここは私と私の母親とて穏便になだめながら対応した方が良いのではないかと考えます。
それと今までは凶相男の部屋の前や玄関先で対話して来ましたが、私の部屋に入れ、お茶を出し、事の重大性を説けば判るのではないかと考えました。流石に朝方は木刀を持って私の部屋には来ないでしょうし、その方が安全でもあります。
勿論、凶相男が怒号を上げ、暴れる可能性がある。そうなった場合、私が凶相男を押さえつけ、隣の部屋に待機させている親父が外へ出て近所の人に助けを求めれば万全の筈。私の母親には電話で警察を呼ばせればモアベターです。この方法でチャレンジしようと思いました。
凶相男には私と母親とで部屋に出向き、明日の朝9時に私らの部屋に来るように伝えました。来るかどうかは判りません。本人も忘れてしまう可能性もある。それで手紙も書き渡しました。「話し合う題目はここに書いている」と言って。
凶相男の部屋には朝方言ったのですが、大人しく対応してました。やはり朝方は正常に近い。「判りました」と返事してましたし。これは期待が持てます。何とかなりそうです。
そして当日、午前9時。凶相男はしおらしくやって来ました。木刀を持たずに。私は母親と一緒に玄関で出迎え、リビングへ。
凶相男は今までに無く大人しい。おどおどしてます。これは何とかなりそうです。
私は言いました。「201号室、203号室の人が貴方に襲われ部屋を出て行った。それは判っているね。特に203号室の方は浪人生で受験勉強の為に青森から仙台に来た。貴方のせいで勉強が出来なくなった。青森の親御さんも大変怒っていて、裁判すると言っている。どうして203号室の人を木刀を持って襲いに行ったのか」と。
凶相男は「襲っていない。201号室の男が毎夜酒を飲んで大声出して暴れている。それが聞こえないのか聞きに行っただけだ」と。
「それじゃ、何で木刀を持って聞きに行ったの」と私。
凶相男は「ナイフを持っているから」と。
「誰もナイフなんか持っていないよ。相手は18歳の子供だよ。ナイフなんて持っていないし、貴方をナイフで刺そうなんて思っていない。何でそんな風に思うの」と私。
凶相男は「201号室の男は包丁持って襲って来た。203号室の男もナイフを持っている」と言います。
私は「201号室の人は介護の仕事をしている真面目で優しい人だよ。貴方を襲ってなんかいない。何でそう思うの」と質問。
凶相男は「毎夜、毎夜、部屋の壁をすり抜けて襲って来る。包丁で刺しに来る。だから木刀で部屋に行ったんだ」と発言。
その瞬間、またまた事件が。まさか、まさか・・・・・・・・・・・・・・。
続く。