よろず放談

日頃見聞きする種々の事柄に対しての独断と偏見による辛口批評

口癖

2005-07-08 17:49:16 | 言葉
ここで口癖というのはいわない方がいい、無意味な音声や意味のある短い

文言をいう。”えーと”や”あのー”がもっともありふれた例である。

故美濃部東京都知事は知識人にしては珍しく”あのー”を連発した。

故大平首相は”うー”というので有名だった。故福田首相は”そのそのー”

というのが可笑しかった。将棋の羽生さんは何か質問されると必ず”そうですね”

と一旦答えてからやおら質問の答えを話し出す。外の点では文句の付けようが

ない彼にとってこれだけは頂けない。まあご愛敬として勘弁するか?

アナウンサーやリポータの中には、”マア”とか”マッ”とかいう

雑音を乱発するものが少なからずいる。これはどういう心理なのだろう。

自分の発言しようとする言葉に自信がないので断言を避けて曖昧化しよう

というのだろうか。これでは折角の報道もその価値が半減する。

要するに、発言しようとする内容が、頭脳の中で十分編集されないままの

状態で見切り発車してしまうからである。発言が文章として纏まらない

中は決して発言すまいというぐらいの覚悟を固めるべきである。

外の項でも書いた”話し方”の訓練の一つとして取り上げたい。

10年ほど昔、故黛敏郎氏は日曜日の朝のテレビの人気番組”題名のない音楽会”

を司会して名声を挙げていた。”独断と偏見”という名言をふりかざした

人を食った論説が売り物だった。若者向けの音楽がリズムだけが突出して

いてメロディとハーモニに乏しく、歌は無教養丸出し、国籍不明の英語

混じりの歌詞で聞くに堪えないと罵倒するのが痛快だった。しかし筆者が

本当に感心したのは、その言葉使いの美しさである。本項で挙げた

無意味な音声は全くなく、その発言はそのまま印刷にすれば立派な文章

になった。これほどの言葉使いの名人にはその後お目に掛からない。