4月から忙しくなるからと、今のうちにすこしだけ、遠出をしようと出かけた。
ディナーを食べて、ホテルの部屋へもどり、くつろいでいると、チャイムが鳴った。
グリュプスは白い箱を持って戻ってきた。
テーブルに置き、わたしを呼ぶ。
白い箱からは、小さなホールケーキが出てきた。
ホワイトデーの、サプライズだよ、とグリュプスがうれしそうに言った。
チョコプレートに、文字が書いてある。 . . . 本文を読む
駅。
南稚内駅。
グリュプスと別れを告げる駅。
いつもひとりで通る改札を、ふたりで通る。
振り返っても、グリュプスはいない。
もう、あの悲しげな後ろ姿を見送る必要はない。
グリュプスは隣で微笑っているのだから。
ああ、なんというしあわせだろう。
グリュプスと、この列車に乗れるなんて。
神様、わたしたちは頑張りました。
ひとつ、試練を乗り越えま . . . 本文を読む
わたしの身体は、初めてグリュプスと逢ったときよりだいぶやせてしまった。
きっと、仕事のせい。
わたしは今くらいが自分としては気に入っているのだけど、愛しあうとき。
わたしのおっぱいはちいさくちいさくなって、ふわふわで気持ちいいと言ってくれた身体は、骨ばってしまった。
それでも、グリュプスは。
わたしの身体を愛してくれる。
わたしの身体で興奮してくれる。
こんな . . . 本文を読む
大学にいた頃は、精神科に興味をもっていた。
特に、統合失調症の看護にすすもうかと思っていた。
実際に、看護師になり、3年が経った。
最近、もうひとつの翼を、つかってみようかと思うようになってきた。
忘れていた翼。
使うことのないと、思っていた翼。
保健師。
これを発展させれば、また新しいことができる。
看護師として、壊れる前に。
もしかしたら、こっち . . . 本文を読む
グリュプスは、今太っている。
以前より、20kg近く増えてしまった。
それは、向こうへいた頃、ストレスを食べることでごまかしていたから。
一時的に少し減ったけれど、また増えてきてしまっている。
わたしは、ダンスの発表会前に、伝えた。
やっぱりやせてるグリュプスがいい、と。
その後も、それとなく伝えたけれど、増えていく一方だ。
今はダンスもお仕事もしていないか . . . 本文を読む
ひとりのときは、絵を描いたり、お話を綴ったりすることができた。
グリュプスを手に入れたかわりに、それらを手放した。
それは、わたしが選んだこと。
ひとつ、手に入れたのだから。
ひとつ、手放さないと。
わたしの手は、小さいから。
グリュプスも、ダンスを捨てたのだから。 . . . 本文を読む
準夜明けに、実家へ帰ってきた。
たった一泊するだけ。
それだけなのに、グリュプスがいないことがさみしい。
少し前までは、一日か二日しか会えなかった、のに。
それなのに、今は一日会えないだけでさみしくなる。
ぜいたくなことだ。
今の、このしあわせに感謝を。
けして、忘れてはいけないよ。
あの、つらかった日々を。 . . . 本文を読む
わたしたちは、折りたたみのシングルベッドで眠る。
身体をよせあい、さながらひなどりのように眠る。
どちらかがもぞもぞと起きると、片方も目を覚ます。
相手が戻ってきたのを確認すると、身体をよせあいまたすぐに眠りについてしまう。
おおきなおおきなひなどり。
きっとこのひなたちはおとなになることはないのだろう。
ずっとずっと、身体をよせあい眠るのだ。
ふたりの愛の巣で。 . . . 本文を読む
今日、グリュプスのダンス発表会に行った。
グリュプスは、きれいだった。
大きな翼で、華麗に羽ばたいていた。
その姿や、ダンスタイムで恩師と楽しげに舞う姿をみていて、思った。
やっぱり、わたしではないほうがいいのではないだろうか。
共に踊ることができるひとの方がいいのではないだろうか。
わたしが踊れるように、ダンスを始めればいいのかもしれない。
仕事が忙しいなんて、本気でや . . . 本文を読む
わたしたちは、幾度も身体をかさねてきた。
なかなかひとつになれないふたり。
今では、ひとつになれるようになった。
そして、ついに。
この間、愛しあったとき。
グリュプスの息が荒くなり、グリュプスが、わたしの中でふるえた。
くぅ…っ…ふ……っ…
グリュプスはわたしの中に、想いを吐き出した。
眉をよせ、目を閉じて身体をふるわせるグリュプス。
やっ . . . 本文を読む