飲酒運転摘発逃れに悪用-「奈良漬」60切れ食べなきゃ無理
1月24日13時56分配信 産経新聞
飲酒運転で摘発された際のとっさの言い訳に、漬物の「奈良漬」を悪用するケースが最近相次いだ。奈良漬には微量のアルコールが含まれているため、交通事故などで警察に呼気を調べられた場合に「奈良漬を食べた」と言い訳するのだという。確かに、お酒の弱い人が奈良漬を大量に食べれば「ほろ酔い」みたいになることもあるけれど、果たして奈良漬を食べて飲酒運転になってしまうのだろうか?(高瀬真由子)
「奈良漬を食べただけで飲酒はしていない」
今月7日、埼玉県春日部市で、保育士の女が道路交通法違反(酒気帯び運転)で春日部署に逮捕された。呼気1リットルからは基準値(0・15ミリグラム)を大幅に越える0・55ミリグラムのアルコール量が検出され、女はこう供述したという。
また千葉県柏市でも昨年11月末、接触事故を起こした際に道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕された会社員の男が「奈良漬を食べたから」と供述した。
奈良漬の製造業者らでつくる「本場奈良漬協会」(奈良県)や社団法人「アルコール健康医学協会」(東京都)などによると、奈良漬は、JAS(日本農林規格)法でアルコールが3・5%以上含まれているものとされている。このため、お酒の弱い人が大量に食べれば、顔が赤くなり酔ったような状態になることはあるという。
奈良漬が運転に与える影響については警察庁が平成19年4月、「アルコールが運転に与える影響の調査研究」という報告書の中で、実験結果を公表している。
実験は同庁から委託を受けた財団法人「交通事故総合分析センター」(東京都)が実施。奈良漬1本(約250グラム)の5分の1を7人の被験者に摂取してもらい、20分後の呼気中濃度を測定するとともに、走行実験を行った。その結果、呼気中濃度はいずれも「ゼロ」で、走行実験でも影響は見られなかった。
一方、アルコール健康医学協会によると、例えばアルコール5%の奈良漬を食べると仮定した場合、60切れ程度(約400グラム)を食べれば、計算上は、基準値程度のアルコールを摂取したことになるという。ただ、これほど大量の奈良漬を一度に食べることはあまり現実的ではない。
警察庁交通局は「通常の摂取量なら運転能力に変化はみられない。本当に奈良漬を食べたことで逮捕された例は過去に報告もなく、実験からまず考えられない」としている。
やはり「奈良漬を食べたから」というのは、言い訳としては苦しいのだろう。埼玉県で逮捕された女は、その後の調べに「母親が営む飲食店でビールや焼酎を飲んだ」と供述を変え、千葉県で逮捕された男も、運転前に飲酒していたことを認めたという。
本場奈良漬協会に加盟する「今西本店」(奈良市上三条町)の今西泰宏社長(50)は「奈良漬をそんなに一気に食べる人はまずいない。『言い訳として通じる』というウソの情報が流れているのかもしれないが、言い逃れとして使われるのは困る」と迷惑そうに話している。
◇
■奈良漬 白ウリなどのウリ類を中心にキュウリ、ナスなどの野菜を塩漬けにし、何度も新しい酒かすに付け込んで作る漬物で、お歳暮などに好まれる。単価が高いため出荷量は少ないが、出荷金額は漬物全体の1割を占める。奈良の漢方医・糸屋宗仙が、慶長年間(1596~1615)に創製し、徳川家康が好んだことから普及したといわれる。
1月24日13時56分配信 産経新聞
飲酒運転で摘発された際のとっさの言い訳に、漬物の「奈良漬」を悪用するケースが最近相次いだ。奈良漬には微量のアルコールが含まれているため、交通事故などで警察に呼気を調べられた場合に「奈良漬を食べた」と言い訳するのだという。確かに、お酒の弱い人が奈良漬を大量に食べれば「ほろ酔い」みたいになることもあるけれど、果たして奈良漬を食べて飲酒運転になってしまうのだろうか?(高瀬真由子)
「奈良漬を食べただけで飲酒はしていない」
今月7日、埼玉県春日部市で、保育士の女が道路交通法違反(酒気帯び運転)で春日部署に逮捕された。呼気1リットルからは基準値(0・15ミリグラム)を大幅に越える0・55ミリグラムのアルコール量が検出され、女はこう供述したという。
また千葉県柏市でも昨年11月末、接触事故を起こした際に道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕された会社員の男が「奈良漬を食べたから」と供述した。
奈良漬の製造業者らでつくる「本場奈良漬協会」(奈良県)や社団法人「アルコール健康医学協会」(東京都)などによると、奈良漬は、JAS(日本農林規格)法でアルコールが3・5%以上含まれているものとされている。このため、お酒の弱い人が大量に食べれば、顔が赤くなり酔ったような状態になることはあるという。
奈良漬が運転に与える影響については警察庁が平成19年4月、「アルコールが運転に与える影響の調査研究」という報告書の中で、実験結果を公表している。
実験は同庁から委託を受けた財団法人「交通事故総合分析センター」(東京都)が実施。奈良漬1本(約250グラム)の5分の1を7人の被験者に摂取してもらい、20分後の呼気中濃度を測定するとともに、走行実験を行った。その結果、呼気中濃度はいずれも「ゼロ」で、走行実験でも影響は見られなかった。
一方、アルコール健康医学協会によると、例えばアルコール5%の奈良漬を食べると仮定した場合、60切れ程度(約400グラム)を食べれば、計算上は、基準値程度のアルコールを摂取したことになるという。ただ、これほど大量の奈良漬を一度に食べることはあまり現実的ではない。
警察庁交通局は「通常の摂取量なら運転能力に変化はみられない。本当に奈良漬を食べたことで逮捕された例は過去に報告もなく、実験からまず考えられない」としている。
やはり「奈良漬を食べたから」というのは、言い訳としては苦しいのだろう。埼玉県で逮捕された女は、その後の調べに「母親が営む飲食店でビールや焼酎を飲んだ」と供述を変え、千葉県で逮捕された男も、運転前に飲酒していたことを認めたという。
本場奈良漬協会に加盟する「今西本店」(奈良市上三条町)の今西泰宏社長(50)は「奈良漬をそんなに一気に食べる人はまずいない。『言い訳として通じる』というウソの情報が流れているのかもしれないが、言い逃れとして使われるのは困る」と迷惑そうに話している。
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■奈良漬 白ウリなどのウリ類を中心にキュウリ、ナスなどの野菜を塩漬けにし、何度も新しい酒かすに付け込んで作る漬物で、お歳暮などに好まれる。単価が高いため出荷量は少ないが、出荷金額は漬物全体の1割を占める。奈良の漢方医・糸屋宗仙が、慶長年間(1596~1615)に創製し、徳川家康が好んだことから普及したといわれる。