リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第39回  イワナの産卵床を再生する。高原川漁協

2016-10-09 10:55:08 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

漁協は魚を放流して、遊漁料をとるだけではないんだよ! 高原川漁協、砂防堰堤で産卵場に移動できないイワナの人工産卵場を作る取り組みを紹介します。

 

やわらかな木漏れ日の中でなにがはじまるのか。ここは、奥飛騨温泉郷、栃尾温泉を流れる高原川の支流蒲田川。河川敷に、木立に囲まれた小さな流れがある。この流れは、イワナの産卵を目的とした人工の河川で、上流の砂防堰堤から水を引いて造られている。

 10月の終わり頃、イワナは沢を登る。大きな流れから支流へ、そしてそのさらに細まった沢筋をどこまでも登って、背中がでるほどの細い流れの中で産卵する。受精した卵は雪の下で冬を過ごし、礫の間で春を待ち、稚魚となって沢をくだる。上流の細い流れのなか春を待つことで、雪解けの大水から小さなイワナたちの命は守られる。

日本のほどんどの川の上流域には砂防堰堤がある。土石流から下流の集落などを守るためだが、堰堤があることでイワナは上流へ移動ができない。イワナの数が減っている原因のひとつでもある、

失われたイワナの産卵する沢をよみがえらせよう。その目的で、高原川漁業協同組合が堰堤の下流に造ったのがイワナ産卵用人工河川だ。漁協では二〇〇五年から組合員による産卵場造りをはじめ、二〇〇八年から一般の参加者を募集している。

イワナの産卵場つくりに、組合員以外の参加を呼びかけたのは、漁協はただ釣り人から遊漁料をとりたてるだけの存在ではないことを知ってほしいという思いからだ。産卵場を造るという行為を通じて、「釣り魚としてだけでない『イワナの生き様』を感じてもらえたら」と高原川漁協の徳田幸憲さんは語る。

 今年の「作業」は二二日。砂利を運び入れる。産卵床を均すなどの体験をして、昼食は漁協が提供する高原アユの鮎飯と塩焼き、豚汁をみんなで食べる。

参加費は無料。定員三〇名までの参加者を募集している。申し込みは電話ファクス0578―82―2115 またはフェースブック「高原川漁業協同組合」。

(魚類生態写真家)

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