○ 岐阜新聞 20060203朝刊
関市で計画、川浦発電所中止/電力需要見込めず/中電、申し入れから12年
中部電力は二日、関市板取(旧板取村)の板取川支流西ケ洞谷川で二〇二一(平成三十三)年度以降の運転開始を目指して建設していた揚水式発電所「川浦(かおれ)水力発電所」の計画を中止する、と発表した。最大電力が伸び悩み、当初計画ほどの需要が見込めなくなったため。開発申し入れから十二年目の中止決定に対し、地元関係者からは電力需要の見通しの甘さを指摘する声も挙がっている。電力需要の構造が変化する中、揚水式の発電方式について見直しが迫られる形となった。
電力を使用する工場など産業用設備は合理化、省エネ対策が進み、最大電力の需要は伸び悩んでいる。揚水式発電所は、電力需要がピークとなる昼間の電力を補うための発電方式だが、需要構造の変化に加え、揚水には電力を使用することから二酸化炭素(CO2)の排出削減や効率性からみて川浦開発の妥当性がない、と判断した。
〇四年三月には木曽中央水力発電所(長野県)、同年五月には徳山ダム下流の杉原ダム(揖斐郡揖斐川町)の計二カ所の揚水式発電所建設計画を中止している。
川浦水力発電所は、一九九四年に開発を申し入れ、旧板取村は九五年に開発に同意し、同年十一月に電源開発調整審議会が開発を承認している。
工事は、九七年十二月に着工。ダムにつながる道路やトンネルの建設など準備工事の段階で、ダム本体の工事には至っていなかった。事業費は二千四百億円を見込んでいた。用地は一部買収済みで、ダム予定地には水没家屋はない。
発電所運転開始の予定時期は、見直しが続いた。〇一年に「〇七年から」を「一一年度以降」に変更、〇二年には「一一年度以降」から「二一年度以降」に十年間延期していた。
【川浦水力発電所】
中部電力が関市板取の板取川支流西ケ洞谷川で開発を進めてきた揚水式発電所。揚水式発電には2つのダムが必要で、上池ダムと下池ダムの高低差を利用。電力が余る夜間にほかの火力や原子力発電所の電力を利用して下池から水を上げて上池にため、電力が不足する昼間に水を落として発電する。川浦水力発電所の上池、下池の面積はいずれも約0・3平方キロ。有効落差は578メートル。最大出力は130万キロワット。1994年に開発を申し入れ、2021年度以降に運転開始予定だった。
(写真)工事のための足場が組まれた川浦水力発電所建設予定地=2003年3月、関市板取(大釜倶楽部提供)
《岐阜新聞2月3日付朝刊一面》
○中日新聞 岐阜版 20060203 朝刊
岐阜
反対住民「自然守られた」
川浦水力発電所の計画中止に
会見する竹尾聡経営戦略本部部長と藍田正和土木建築部長=岐阜市美江寺町の中部電力岐阜支店で
中部電力が二日、発表した関市板取の川浦水力発電所建設計画の中止。着工が何度も先延ばしになった末の中止決定に、協力してきた地元では落胆の声が聞かれる一方、反対してきた住民からは「川浦の自然が守られた」と喜びの声が上がった。 (田中 一正)
旧板取村では、一九九七年に建設同意をしてから、計約三十億円の地域協力金を中部電力から受け取ったほか、国からの電源開発交付金などを施設建設や道路改良に充ててきた。
合併後の関市でも、これらを見込んだ施設整備などを新市建設計画に盛り込んだ。
市では「経済情勢を考えると、企業として中止するのは仕方ないが、交付金などの財源がなくなってしまうのが頭が痛い」と困惑した様子。「(建設に協力してきた)旧板取村との関係を考えて、誠心誠意対応してほしい」とし、今後、補償などを求めて話し合いをしていく方針だ。
一方地元で、十二年間、建設反対と自然保護を求めて運動してきたグループ「大釜倶楽部」の渡辺正生代表は「中止と聞いてほっとしている。発電所はバブル時代の計画で無理があり、工事が延期になれば時代が解決してくれるだろう、とは思っていたが、川浦の自然が守られて良かった」と話した。
■用地、半分は買収「地権者と相談」 中電が会見
中部電力の竹尾聡経営戦略本部部長と藍田正和土木建築部長はこの日、岐阜市の同社岐阜支店で会見し、今後について「地権者や地元自治体などと相談したい」と繰り返した。
一九九七年に着工した工事は、工事用道路など準備工事の段階で、本体工事は未着手。道路整備に伴う立ち退きはあったが、水没地域に民家はなかった。用地買収は半分程度済んでいたが、藍田部長は「基本的には元の地権者に引き取ってもらいたいが、どうするかは相談して決める」と述べた。
会見に先立ち、関、本巣両市役所を訪れ、中止を申し入れたといい、藍田部長は「『やむを得ない』との回答もあった。ご理解を得ているのでは」と話した。
(藤嶋 崇)
関市で計画、川浦発電所中止/電力需要見込めず/中電、申し入れから12年
中部電力は二日、関市板取(旧板取村)の板取川支流西ケ洞谷川で二〇二一(平成三十三)年度以降の運転開始を目指して建設していた揚水式発電所「川浦(かおれ)水力発電所」の計画を中止する、と発表した。最大電力が伸び悩み、当初計画ほどの需要が見込めなくなったため。開発申し入れから十二年目の中止決定に対し、地元関係者からは電力需要の見通しの甘さを指摘する声も挙がっている。電力需要の構造が変化する中、揚水式の発電方式について見直しが迫られる形となった。
電力を使用する工場など産業用設備は合理化、省エネ対策が進み、最大電力の需要は伸び悩んでいる。揚水式発電所は、電力需要がピークとなる昼間の電力を補うための発電方式だが、需要構造の変化に加え、揚水には電力を使用することから二酸化炭素(CO2)の排出削減や効率性からみて川浦開発の妥当性がない、と判断した。
〇四年三月には木曽中央水力発電所(長野県)、同年五月には徳山ダム下流の杉原ダム(揖斐郡揖斐川町)の計二カ所の揚水式発電所建設計画を中止している。
川浦水力発電所は、一九九四年に開発を申し入れ、旧板取村は九五年に開発に同意し、同年十一月に電源開発調整審議会が開発を承認している。
工事は、九七年十二月に着工。ダムにつながる道路やトンネルの建設など準備工事の段階で、ダム本体の工事には至っていなかった。事業費は二千四百億円を見込んでいた。用地は一部買収済みで、ダム予定地には水没家屋はない。
発電所運転開始の予定時期は、見直しが続いた。〇一年に「〇七年から」を「一一年度以降」に変更、〇二年には「一一年度以降」から「二一年度以降」に十年間延期していた。
【川浦水力発電所】
中部電力が関市板取の板取川支流西ケ洞谷川で開発を進めてきた揚水式発電所。揚水式発電には2つのダムが必要で、上池ダムと下池ダムの高低差を利用。電力が余る夜間にほかの火力や原子力発電所の電力を利用して下池から水を上げて上池にため、電力が不足する昼間に水を落として発電する。川浦水力発電所の上池、下池の面積はいずれも約0・3平方キロ。有効落差は578メートル。最大出力は130万キロワット。1994年に開発を申し入れ、2021年度以降に運転開始予定だった。
(写真)工事のための足場が組まれた川浦水力発電所建設予定地=2003年3月、関市板取(大釜倶楽部提供)
《岐阜新聞2月3日付朝刊一面》
○中日新聞 岐阜版 20060203 朝刊
岐阜
反対住民「自然守られた」
川浦水力発電所の計画中止に
会見する竹尾聡経営戦略本部部長と藍田正和土木建築部長=岐阜市美江寺町の中部電力岐阜支店で
中部電力が二日、発表した関市板取の川浦水力発電所建設計画の中止。着工が何度も先延ばしになった末の中止決定に、協力してきた地元では落胆の声が聞かれる一方、反対してきた住民からは「川浦の自然が守られた」と喜びの声が上がった。 (田中 一正)
旧板取村では、一九九七年に建設同意をしてから、計約三十億円の地域協力金を中部電力から受け取ったほか、国からの電源開発交付金などを施設建設や道路改良に充ててきた。
合併後の関市でも、これらを見込んだ施設整備などを新市建設計画に盛り込んだ。
市では「経済情勢を考えると、企業として中止するのは仕方ないが、交付金などの財源がなくなってしまうのが頭が痛い」と困惑した様子。「(建設に協力してきた)旧板取村との関係を考えて、誠心誠意対応してほしい」とし、今後、補償などを求めて話し合いをしていく方針だ。
一方地元で、十二年間、建設反対と自然保護を求めて運動してきたグループ「大釜倶楽部」の渡辺正生代表は「中止と聞いてほっとしている。発電所はバブル時代の計画で無理があり、工事が延期になれば時代が解決してくれるだろう、とは思っていたが、川浦の自然が守られて良かった」と話した。
■用地、半分は買収「地権者と相談」 中電が会見
中部電力の竹尾聡経営戦略本部部長と藍田正和土木建築部長はこの日、岐阜市の同社岐阜支店で会見し、今後について「地権者や地元自治体などと相談したい」と繰り返した。
一九九七年に着工した工事は、工事用道路など準備工事の段階で、本体工事は未着手。道路整備に伴う立ち退きはあったが、水没地域に民家はなかった。用地買収は半分程度済んでいたが、藍田部長は「基本的には元の地権者に引き取ってもらいたいが、どうするかは相談して決める」と述べた。
会見に先立ち、関、本巣両市役所を訪れ、中止を申し入れたといい、藍田部長は「『やむを得ない』との回答もあった。ご理解を得ているのでは」と話した。
(藤嶋 崇)
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