リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

サツキマスとはなにか その3

2006-05-17 21:36:32 | サツキマス研究会/長良川調査会
○ 長良川ではいま

 長良川で何が起こっているか、それを示す資料を2つ示そうと思う。

 まず、サツキマスの河川回帰率と母川回帰率のグラフである。これらは公団・国交省が行ったモニタリング調査によるものだが、1977年に岐阜県が行った同様の調査と比較して大きく値が異なっている。

 河川回帰率とは秋に放流して翌春に川、(この場合、長良川で放流して、木曽三川のいずれかの河川で採補された数)で採補されたマスの割合である。サツキマスは放流効果の高い魚で、長良川河口堰以前は放流すれば7%が川に帰ってきた。ところが、長良川河口堰ができてから、1%以下の回帰率となった。これが何を意味するかと言えば、一つには降海しないアマゴが増えているということである。

 長良川ではアマゴの銀毛個体(スモルト)のことを「しらめ」と呼ぶが、私は94年(堰閉鎖以前)と95年(閉鎖後)、しらめに電波発信器をつけて、降海時の行動を追跡したことある。長良川河口堰建設以前は下流での潮の満ち引きによって容易に河口に達したしらめが、閉鎖後には長良川河口堰の湛水域でとどまる期間が増加した。最近5月の中頃、小型のサツキマス(?)が長良川でかなり釣られるようになっている。私は近所の釣り人の協力を得て、このマスを集めているが、30数センチ、銀毛してはいるもののサツキマスというよりは降海時のしらめの姿に近いものが多い。


 そして、もう一つ問題なのは、母川回帰率の低下である。母川回帰とは長良川に放流して長良川で採補されたサツキマスの割合である。長良川河口堰以前には98%近くの魚が長良川にかえっていたものが、堰閉鎖後は80%前後と低下している。



 このマスはどこに行ったのか、図にサツキマスの河川別漁獲量の年変化を示したが、堰閉鎖後、長良川の漁獲数が減少し、揖斐川、木曽川の漁獲数が増加している。サツキマスの他の河川への迷入が増加しているのである。

 長良川のサツキマスに起こっている問題を整理してみよう。
・ 遡上の遅れ
・ 降海しないしらめの増加
・ 他の河川への迷入
これらが原因となって、全体の漁獲数は減少し、自然由来と思われる本来の姿のサツキマスはさらに少なくなっている。

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