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環境アセスが計画立案中になるかもしれない

2007-03-04 18:42:46 | ダムの穴
大規模事業の環境評価、計画立案中に 環境省研究会(朝日新聞) - goo ニュース

☆テキスト版
大規模事業の環境評価、計画立案中に 環境省研究会
2007年2月27日(火)00:37

* 朝日新聞

 道路や発電所建設など大規模事業の計画が固まる前に環境への影響を調べ、事業の是非を検討するための新たな影響評価(アセスメント)の導入に向け、環境省の研究会は26日、政府内の共通ガイドライン案をまとめた。複数の案がある立案段階で調査結果を公表し、国民から意見を聴くことなどを関係官庁に求めている。反対意見が多くても計画変更が難しい現行制度の弱点を補う狙いだが、導入には慎重論も根強く、本格実施までには課題も多い。

 新しい環境影響評価は「戦略的環境アセスメント(SEA)」と呼ばれる。先進国の多くで導入されており、国内でも東京都や埼玉県など4自治体で導入されている。

 ガイドライン案では、道路や鉄道、空港、ダム、発電所、産業廃棄物処分場建設など現在の環境影響評価法が対象とする13事業をSEAの対象と想定。道路や鉄道ならいくつかのルートを提示するなど複数案を設定した段階で、事業者は、大気環境や生態系などへの影響を、既存資料などからそれぞれ評価・予測する。「事業を行わない」という選択肢も設け、国民や専門家、自治体の環境部局などに意見を求めたり、報告書を公表したりする手順を定めている。

 現行制度では、国などに事業計画を届けた後に影響評価の手続きが始まる。建設場所や規模など計画が固まってからなので、問題が指摘されても事業の中止や大きな計画変更は難しく、市民団体などが改善を求めていた。

 研究会は来月までにガイドラインを正式に決定。関係官庁はこれに沿って個別のガイドラインを策定し、モデル事業を実施していく予定。環境省は09年以降の法制化も検討している。

 ただ、SEAについては、計画段階で事業内容が明らかになると地価高騰を招き、手続きの長期化・コスト増となる心配もあるなどとして、根強い反対がある。電気事業連合会は「世界一厳しくやっている現行の環境アセスで十分」と反対。所管する経済産業省も「発電所は、現行制度でも大きな反対があれば柔軟に計画変更してきた」と慎重な立場だ。

 このため、ガイドライン案では、民間事業に関しては、新たな手続きが終了してからの計画公表を認める余地を残したうえで、法的強制力がないことも明記した。国土交通省も「事業を行うかどうかは、経済的、社会的な影響も含めて判断すべきだ」とし、環境だけでない観点での評価制度としたい考えだ。


 毎日新聞
毎日新聞MSN版

☆テキスト版
環境省:計画段階の環境アセスメント 指針案発表
 環境省は26日、道路、ダム、発電所などの大規模事業の環境影響評価を計画段階で行う「戦略的環境アセスメント(SEA)」のガイドライン案を、SEA総合研究会(座長・浅野直人福岡大教授)に示し、同研究会はおおむね了承した。SEAは事業の位置・規模などについて複数案を示し、環境省や自治体、住民らが意見を述べることができる。国内の一部自治体や欧米、韓国、中国でも導入されている。一方、国土交通省、経済産業省が事業に影響が出ることなどを理由に抵抗し、議論は曲折を経てきた。「走り出したら止まらない」と言われる大規模事業。SEA導入で歯止めがかけられるのか。【山本建、中村牧生】

 ◇カギ握る住民参加

 「民間事業者の発電所でSEAをやっているのは海外でも聞いたことがない。発電所建設で初期に計画が明らかになれば立地が難しくなる。大気汚染物質の管理は大きな発電所だから可能なのに、SEA導入でそれができなくなる。環境省ではなく環境悪化省だ」

 26日開かれた環境省のSEA総合研究会。発電所の建設に詳しい東洋大の小川芳樹教授はガイドライン案を厳しく批判した。

 この意見に対し、SEAの専門家からは反論も出た。東京工大の原科幸彦教授は「海外でSEAが普及したのは、計画が決まってからでは遅すぎるという認識が広まったから。大規模な発電所こそ位置や規模の検討に住民を参加させる必要がある」と述べた。

 一部に反対意見が出たものの、環境省が示したガイドライン案はおおむね了承された。

 ガイドライン案に示された手続きは、まず事業者が計画の初期段階で、比較すべき位置や規模の複数案と評価の手法を検討し、環境保全の観点から住民や専門家の意見を把握する。関係都道府県や市町村に対しても検討状況を報告する。

 次にそれぞれの計画について環境影響評価を行い、結果を示した文書を作成。住民や専門家の意見を聞き、関係都道府県や市町村の意見を求める。さらに環境省も必要に応じて意見を述べることができる。

 発電所などの民間事業についても、CSR(企業の社会的責任)の観点から導入を推奨している。ただし、企業の利益を害する恐れがある場合は、可能な限り、検討の経緯などを記した文書を公表することとした。

 一方、国交省は導入に強く反対していた。同省は03年から「パブリック・インボルブメント(P・I)」の取り組みを進めてきたためだ。P・Iは、公共事業の構想段階で住民らに情報提供を行い、意見を聞いた上で計画を決める。しかし、事業主体が検討の場を取り仕切るため、運営方法や委員の選び方に問題があるとの指摘もある。

 今年1月に委員の任期満了で休止した淀川水系流域委員会や、利根川水系の整備計画を巡る問題で、市民グループの参加が認められなかった国交省関東地方整備局長の諮問機関などが好例だ。

 ◇法制化求める声も

 環境省は、26日におおむね了承されたガイドライン案に関し、パブリック・コメント(一般への意見募集)を募る。さらに、3月に開かれるSEA総合研究会での了承を経て正式なガイドラインとして公表する予定。07年度以降、これに沿って関係省庁や自治体などがそれぞれ指針を作成し、計画段階での環境アセスメントに生かす。

 ガイドラインの段階では強制力はないが、世界自然保護基金(WWF)ジャパンなど環境NGO8団体は26日、SEAの法制化を求めるとともに「国交省や経産省、農林水産省、防衛省、厚生労働省は自らの事業をSEAの対象から外すべきではない」とする共同声明を発表。各省庁の“アセス外し”の動きをけん制している。

 環境省は各省庁や自治体の取り組みについて、定期的に開催される中央環境審議会で追跡評価し、公表する予定。世論の監視によって実効性のあるルールにしようという狙いだ。同省は09年の環境影響評価法見直しに合わせ、SEAの法制化を目指す。

 田村義雄事務次官は26日の記者会見で「まずは実施例を積み上げて、社会的な認知度を高めたい」と話している。

 ◇公共事業どう変わる-大規模変更・中止しやすく

 SEAは建設地など計画の策定前に環境影響を評価するため、(1)大規模な変更や中止が可能(2)住民に早くから情報公開するため事業がスムーズ(3)特定地域への開発集中が防げる--などのメリットがある。

 このため、東京都、埼玉県、広島市、京都市が先行導入。他の自治体も検討を進めている。

 埼玉県は02年3月に要綱を策定。地下鉄7号線(埼玉高速鉄道)の延伸計画(浦和美園-岩槻の約7キロ)でSEAを初適用した。低地部を通り3割が地下の「A案」▽台地部を通り5割が地下の「B案」▽人口の少ない台地部を通り2割が地下の「C案」の3案を掲げ、住民や環境分野の専門家による検討会で議論。周辺の自然環境や経済性に配慮し、C案を中心に調整が進んでいる。

 過去に行われた公共事業では計画確定後に公表され、激しい反対運動に遭った例も少なくない。

 住民の反対が注目された長良川河口堰(ぜき)や諫早湾の干拓事業は、もし計画段階からSEAが導入されていれば、異なる結果が出ていたかもしれない。原科教授は「もともと必要性がない公共事業。早い段階で計画が公表され、致命的な環境影響が指摘されていたら、事業そのものが中止になっていた可能性さえある」と話した。

 徳島県の吉野川では第10堰の可動化が中止された。だが、それ以外の公共事業が計画され、干潟の生態系への影響が懸念されている。東京大の清野聡子助手は「SEAで河口域に開発が集中することによる影響を考慮すべきだ」と主張する。

 もたつく日本に比べ、海外では欧州連合(EU)加盟の27カ国中25カ国が実施、米国やカナダ、中国、韓国でも既に導入している。

毎日新聞 2007年2月27日 2時22分
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