新潟久紀ブログ版retrospective

病院局総務課10「病院へ泊りがけで視察に行く(その2)」編

●病院へ泊りがけで視察に行く(その2)

 組合交渉は、夏場から各病院において院長ら幹部とやり取りが始まり、そこで乾かなかった要求課題について、11月頃から年末年始をまたいで翌年の1月一杯までかけて我々本局との交渉が展開されるというのが通例となっていた。夏場までには、的確に交渉で応答できるような臨場感ある知見を蓄えなくてはならない。交渉をリードする主な組合幹部は皆、病院現場で長く働き続けている看護師や技師など医療専門職である。その経験と専門性に、私のようなにわか病院関係者の事務職が、そもそも簡単に太刀打ちできるわけがない。だから何よりも、部下などの人づて又聞きによるものではなく、病院現場の中に自らの身を置いて体感してみることが重要で効果的であると考えた。
 激烈な組合交渉でサンドバックにされて"しどろもどろ"となり、苦し紛れから発する言質を取られて過大な経費負担を招いては、僅かな額とはいえせっかく24年ぶりの黒字にまで転じたこれまでの経営改善努力を台無しにしてしまう…。そんなイメージが勝手に高まってしまい焦燥感に駆られた私が、組合からの要求に適切に抗弁できるようになるために考えたのが、全ての病院各々において"じっくりと浸るように滞在"してみることだ。
 これまでは、本局職員が実情把握のために現地視察をする場合は、せいぜい一二時間、長くて半日以内が通例であった。病院現場は基本的に四六時中業務をしていて忙しいので、幹部職員達をヒアリングで長く拘束する迷惑をかけないようにという配慮もあった。ならば、放って置いてもらって、半ば勝手に病院内の動静を体感させてもらうのはどうかと考えた。病院局長や次長、総務課長ともなれば現場も接遇を意識せざるを得ないだろうが、私は幸いにも幹部とまでは言えない役職の課長補佐でしかない。最初に事務長に挨拶をして滞在を認知してもらった後は病院内を勝手に見て回らせてもらうということにすれば、かしこまらないありのままの現場を知ることができるのではないか。
 更に、何事も"もう一段ディープにする"のが私の流儀。内科の単科しかないような高齢者が多い小規模病院はともかく、複数の疾病別に一定数の入院患者がいたり、夜間救急などが多い病院については、「宿泊視察」を行うこととした。これまでの組合交渉でも「看護体制が手薄な夜間の労働が大変だ」とか「救急対応で時間外も休む暇が無い」などとの訴えを聞いてきた。「おまえたち県庁で日勤しているだけの者は分かっているのか」と。実態は如何ほどのものなのか、勤務している職員達の息づかいや雰囲気のリアルはどうなのかを見てみたいと考えた。現実的には仕事の都合もあって何日も寝泊まりすることはできないので一泊だけということになるが、それでも体験するかどうかによって交渉において自分の考えと言葉で返せる内容は大きく変わってくるはずだ。
 本局職員とはいえ、病院職員以外の者が院内を日中、ましてや泊まりがけで夜間も、うろつき回るのを現場は嫌がるかなあ…と懸念したが、事務長達からは特に異論は出なかった。路程上で比較的近い関係に2つの県立病院があれば、大きい方の病院に一泊がてら先に行き、翌日朝から小さい病院をハシゴして訪問するというように、できるだけ移動が効率的となるよう日程組みをした。かくして、平成23年6月の一月をかけて県立15病院の「寝泊まり行脚」は始まるのだ。

(「病院局総務課10「病院へ泊りがけで視察に行く(その2)」編」終わり。「病院局総務課11「病院へ泊りがけで視察に行く(その3)」編」に続きます。)
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