新潟久紀ブログ版retrospective

病院局総務課5「黒字化の戦略と達成(その2)」編

●黒字化の戦略と達成(その2)

 病院局勤務が初めてで、係長相当職程度の私は、おそらくは院長からは相手にしてはもらえず、そんな話は事務長にしてくれと一蹴かな…と思っていたのだが、以外にもみるみるうちに院長面談の日程が埋まってきた。県立病院の巨額赤字の連続は各新聞で大きく取り上げられており、そうしたプレッシャーの中で県立病院の経営者として院長達もそれなりに考えるところがあり、本局の決算実務の担当と意見交換したいという思いが丁度高まっている時期だったようなのだ。
 「地元新聞や住民からも赤字赤字と言われて医師らのモチベーションが下がっている。命を守るために頑張っている現場職員を擁護するアピールを本局経理担当は講じるべきだ」などと、面談の日程調整中に私に電話で直接苦言を呈してくる院長もおられた。これは脈がある。赤字を減らすという切り口で病院現場のイニシアチブを握る院長が経営収支の詳細や課題を知る経理担当との意見交換に乗ってきそうなのだ。
 病院現場を順次まわり、院長と面談して話を聞いていくと、医療行為そのものに執心しているので、赤字対策や収支改善に向けて戦略的に目標管理することに及べていないという実態が見えてきた。一人一人の医師が看る患者数を上げたり、より収益の上がる医療行為を選択したりといったことは積み上がるのだが、各取組ごとの費用対効果や採算性はもとより間接的経費を含めた全体としての収支効果の検討までを、日々業務を走らせながら進捗管理し調整していくのは確かに難しそうだ。
 院長からもう一つの論点として聞き出せたのが、経営改善に向かうインセンティブだ。医師達の関心を引く事柄に医療機器がある。端的に言うと、黒字経営になれば資金的余力により使いたい機材が買えるということが動機付けになるという。事務方には眉唾にも聞こえるが、医師達には、学術研究など知識というソフトとともに医療機器や機材というハードについても常に最先端のものや自分が欲するものに触れて使いこなしたいという欲求があるのだという。さすが頭が良くて好奇心旺盛が基本属性である人達だと感心する。
 院長との意見交換等を通じて、経営収支に関するデータを掌握する私の立場から現場に経営改善を働きかける方策として、経営収支改善のためのフレームを策定して見せてはどうかと考えた。診療報酬制度等に基づき、病院毎の経営資源の実情を踏まえた収益増進や費用節減の具体策と効果額を取組難易度別にリストアップし、どの程度難度の高い取組まで実施すればどの程度収支が改善するか、引いては黒字に転換できるか、シミュレーションして見せる。そして、どの程度の黒字確保で現場が要望するどの程度の機材等が買えるのかという情報を医師をはじめとする現場キーマンのインセンティブにするという作戦だ。

(「病院局総務課5「黒字化の戦略と達成(その2)」編」終わり。「病院局総務課6「黒字化の戦略と達成(その3)」編」に続きます。
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