日韓往来 [Journal Korea]

いま・ここ・実感から=はらだブログ
「現在──過去・未来」

李忠成・2011年と孫基禎・1936年

2011-06-01 21:01:34 | 韓国・見聞
 大規模な報道、視聴だったし、まだ事後報道もつづいている。
 過去、スポーツでこのような在日コリアン、日本国籍取得といった報道例は、柔道の秋山成勲(のち格闘家、在日4世=秋成勲 チュ ソンフン)の場合がある。韓国代表をめざしたが日本国籍取得、釜山アジア大会・金メダル、アテネオリンピック代表にはなれなかった。(直接関係はないが、夫人はモデルのSHIHO)
 しかしこんどの報道、影響の規模はその数倍だろう。    

 スポーツ関連の話題として、古くはベルリンオリンピック(1936)のマラソン優勝・孫基禎=ソン キジョン。日本支配時代、孫の胸の日の丸を黒く塗りつぶして東亜日報が報道、発刊停止処分という事件になった。戦後は、力道山や長州力など、ときどき在日「コリアン」のヒーローがマスコミに登場してきた。

 こんどの李ただなり(リー チュンソン)の、東亜日報報道(下記)は時代の流れ、変化として読んだ。また、韓国での「在日」についての報道ぶりは面白い。同時に日本社会、日本人に「在日コリアン」ヒーローがどう受け止められていくか、じっくり見ていきたい。


報道引用──────────────

◆産経新聞
アジア杯 韓国主要紙が李を大特集 「ぼくの姓は『り』」
産経新聞 1月31日(月)11時10分配信

【ソウル=加藤達也】サッカーのアジア・カップ決勝戦、対オーストラリア戦で決勝ゴールを挙げ、日本を2大会ぶり4度目の優勝に導いた李忠成選手の活躍を31日付の韓国主要3紙は大きく報道した。いずれも、U-19で韓国代表に選抜され、帰化して日本代表チームの一員となった経緯など、李選手が在日韓国人4世のサッカー選手として成長してきた経緯を詳報した。

 朝鮮日報は決勝点を挙げた直後に天に向かって矢を射るパフォーマンスを演じる李選手の写真とともに、「なぜ、日本の英雄になったか」という見出しの記事を掲載。韓国チームの活躍を伝える記事よりも上に置く扱いで、スポーツ面の大半を埋めた。

 中央日報は社会面。見開きで、決勝ゴールを挙げた後、両手の親指で背中を指す写真を掲載。「日本サッカーの英雄になったイ・チュンソン、“ぼくの姓は、り”」の見出しの記事を掲載し、韓国語読みのイ・チュンソンではなく、「李忠成」と書いて「り ただなり」と読む日本代表選手であることを強調した。

 記事では、試合後のインタビューで報道陣に対し「韓国語がつたなくて申し訳ない」と前置きしてから日本語で「ぼくは、韓国人でも日本人でもなく、サッカー選手としてここにいるだけ」との談話を紹介し、今大会で活躍するまでの経過を詳しく伝えた。

 東亜日報はスポーツ面で、韓国チームの活躍を振り返る記事よりも優先し、トップ記事として報道した。

 李選手が決勝ゴールを挙げたシーンを再現し、活躍を伝えた後、サッカー選手としての歩みに触れるなかで、「日本帰化に合わせて名の読み方を“チュンソン”から“ただなり”に変更したが、姓は変えなかった」と指摘。両国をまたぐ存在であることを示唆した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
◆韓国・東亜日報報道
日本の李忠成、決勝ゴールで「英雄」になった サッカーアジア杯
東亜日報 JANUARY 31, 2011 09:11

(報道──部分引用)
激しい攻防戦が繰り広げられたものの、0-0と勝負がつかず、優勝カップの行方がPK戦に持ち越される寸前だった延長後半4分。長友佑都(25=チェゼーナ)が左を突破してクロスをあげると、李忠成がゴールエリア正面の右サイドで左足のボレーシュートを放った。ボールは左側のゴールネットを揺らし、このゴール一本で彼は日本の英雄になった。
在日韓国人4世の李忠成(26=広島)。李タダノリという日本名を持つ彼は、30日、カタール・ドーハのカリファスタジアムで行われた豪州とのアジア杯決勝戦で、劇的な決勝ゴールを決め、日本の1-0の勝利を牽引した。彼は国際Aマッチ2度目の出場で優勝を決める決勝ゴールでデビューゴールを飾り、日本列島の耳目を集中させた。

韓国国籍を維持して04年18歳以下代表チームに選ばれた李忠成は、成人代表チームでも太極マークをつけるために努力したものの、祖国でさえ自分をこき下ろす「差別」の壁を越えることができなかった。結局、07年日本に帰化して08年北京五輪の時、日本代表に抜擢された。しかし、彼は「忠成」を「ただなり」に替えただけで、苗字は替えなかった。

アジア杯でアルベルト・ザッケローニ監督(イタリア)のラブコールで成人代表チームに合流した彼は、同日、延長前半8分、Jリーグの得点王・前田遼一(磐田)と交代で投入された。決定的な場面でもなかなか決まらないゴールを放つために、ザッケローニ監督が勝負を賭けたもの。李忠成はグラウンドに立つや否や、左サイドを突破してシューティングするなど、意欲的なプレーを披露した。そして、延長4分、長友のクロスを感覚的なボレーシュートで決め、ザッケローニ監督の期待に応えた。

李忠成は空に向かって矢を打つセレモニーで、韓国での悲しみや日本に帰化して感じたプレッシャを一気に払い飛ばした。


◆聯合ニュース 東京発
李忠成が一石投じる、迫られる在日政策の転換
2011/02/02 16:13 KST
【東京2日聯合ニュース】サッカーのアジアカップ決勝戦で決勝ゴールを決めた在日韓国人の李忠成(リ・タダナリ、サンフレッチェ広島所属)選手が自分のブログに書いた「僕にとって祖国は日本・韓国の二つです」という発言が在日コリアンの間で話題になっている。在日社会の意識変化を鮮明にみせているためだ。韓国政府の海外同胞政策もこうした変化を見逃してはならないとの声が出ている。

元プロ野球選手で野球評論家の張本勲氏は在日2世で、プロサッカー選手の朴康造(パク・カンジョ)選手や鄭大世(チョン・テセ)選手は在日3世、李忠成選手は在日4世になる。だが、日本で生まれ育った彼らの人生は自分が選択した国籍によって大きく変わった。

 張本氏は韓国球界とも深くかかわった。サッカーの3選手は、朴康造選手が韓国代表、鄭大世選手が北朝鮮代表、李忠成選手が日本代表となった。

 専門家によると、ひと昔前の世代では韓国と北朝鮮、日本の中でどの国を選ぶかが重要な問題だっただけで、「在日」のアイデンティティーを前面に出すのを敬遠した。このため、自分が「在日」といことを隠す人も少なくなかった。日本プロ野球界にはたくさんの在日がいるが、張本氏のように韓国人だということをオープンにしている選手は多くない。

 若い世代も国籍の選択に直面するのは同様。だが3サッカー選手は自分が「在日」ということを隠さず、積極的にアピールしている。日本籍を取得したにもかかわらず、韓国名の漢字をそのまま使っている李忠成選手が代表的なケースだ。日本メディアに出演し、自分の出自を堂々と明かした。

 こうした意識の変化は在日社会の全体にも見える。在日同胞の意識変化を研究してきた大阪市立大学の朴一教授によると、40~50代の在日2、3世までは自ら進んで、または仕方なく日本に同化し、これによって毎年1万人余りが日本に帰化する結果につながった。だが、20~30代の在日4世は韓国の名前を使う頻度や、母国語に対する理解度が高いという。背景には日本社会が在日の中で韓国籍者を積極的に受け入れ始めたことがあると説明する。

 だからといって、彼らは前の世代のように本国(韓国か北朝鮮)に寄りつくわけでもない。朴教授は「若い世代は韓国と日本の両方にかかわっているが、どちらでもない在日人とのアイデンティティーを強く感じている」とみている。

 若い在日に将来について尋ねたところ、「日本国籍を取得し、日本人として生きていく」との回答は4%にすぎなかった。半面、「韓国籍(もしくは朝鮮籍)のまま、在日として生きていく」との回答は60%に上った。

 在日本大韓民国民団(民団)の幹部も「いつかの日かすべての在日が日本人になるという予測は違った。在日は少なくとも20~30万人を維持するだろう」と話す。

 これを踏まえ、朴教授は韓国政府が昨年に国籍法を改正し、二重国籍対象者の基準を拡大したことを指摘し、在日韓国人にも二重国籍を認める必要があると主張する。二重国籍を許容すれば、在日韓国人の参政権問題も解決し、両国をつなぐ大切な資産となる在日同胞全体を包容できると説明した。

 だが、一部の専門家は南北に分かれている朝鮮半島で、二重国籍を全面的に拡大すれば、兵役をめぐる混乱が生じる恐れがあると懸念する。

 海外僑胞問題研究所の李求弘(イ・グホン)理事長は「韓国政府が在日韓国人がいつかは日本国籍を取得すると考えながらも、残った人は韓国政府に従ってほしいと要求している。これでは、在日韓国人全員から背を向けられる恐れもある」と指摘する。

 国籍を唯一の判断基準に定め、日本国籍を取得した人は同胞から排除し、朝鮮籍を選んだ人には「親北」と非難する態度では、「在日韓国人」とのアイデンティティーを強く感じている若い世代を受け入れられないという。李理事長は「国籍ではなく、民族を基準とし、同胞政策を実施する必要がある」と強調した。また、在日韓国人の韓国語教育に予算を積極的に編成するなどして、韓国と日本をつなぐ人材を養成することが求められると述べた。




最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
関連・こんな余波も (hs)
2011-03-07 11:58:49
おもしろい関連情報も。
──引用──
李忠成選手のゴールで韓国「優勝者は韓国人」、中国「恥知らず」
Y! サーチナ 【社会ニュース】 2011/01/31(月) 11:08
 サッカーアジアカップ決勝が29日、日本の優勝で幕を閉じた。決勝ゴールを決めたのが在日韓国人4世で、2007年に日本に帰化した李忠成選手だったことで、韓国国内では「在日韓国人である李忠成がゴールを決めて優勝した。優勝者は韓国人だ」と主張する報道が見られた。

 中国メディアの環球時報が韓国の報道を伝えると、中国のインターネット上では、「韓国人は恥知らずだ」との声があがった。
 環球時報の記事には、中国のインターネットユーザーから、多くのコメントが寄せられた。多くの意見は、「こんなにも恥知らずな人たちには会ったことがない」、「日本は1人の在日韓国人のおかげで優勝できたというなら、韓国人が11人もいる韓国チームはなぜ優勝できなかったのか」など、韓国の報道を非難するものだ。

 また、「韓国人の先祖は中国人だ。本当の勝利者は中国人だ」と、韓国の報道を皮肉る書き込みも見られた。
 ほかにも、「李忠成は元々韓国人かもしれないが、もう日本国籍なのだ。日本の優勝は事実だ」、「勝ちは勝ち、負けは負け。言い訳で自分をなぐさめるのはやめよう」とのコメントも見られた。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。