年月が経つのは早いなぁって思うことがあった。
近所に敬愛するおじさんがいる。
おじさんと言っても、年齢は70代半ばのおじいさん。
パワフルで冗談好きな快活な人だ。
そのおじさんとは、小学生からの知り合いで、
今でも話をしたり遊んでもらったりしている仲。
今日は、そんなおじさんと夕方の散歩で近所のお寺へと出掛けた。
俺がおじさんの家へ迎えに行くと、おじさんは、
「池の鯉にエサをやる」
と言って、家からパンの切れ端を持って出てきた。
そして、俺へのエサと言って飴玉をくれた。
どこまでも冗談が好きな人だ。
もらった飴玉を舐めながら、俺はおじさんとお寺へ向かった。
道すがら、昔と(お寺を含めて)だいぶこの辺りも変わったという話をした。
あの頃は、ああなっていて、ここは○○だったという。
池に着いてもそんな話をした。
池で鯉にエサをあげて(何故か俺がエサをやった)話を弾ませつつ、今度はお寺の奥へ向かった。
夕方なので辺りは薄暗く、人は誰もいない。
話の話題が変わって、歩きながらおじさんがお年寄りウケする冗談話をいくつか教えてくれた。
漢字の読み方を使った面白い問答、ちょっと捻った算数の問題などなど。
どれもとんちが効いていて面白い。
今度、ボランティア先で使ってみよう。
俺が分からない問題に降参をすると、おじさんは、ニヤニヤしながら楽しそうに答えを言う。
一本取られた気分だ。
俺が、「大人げねぇ」と言うと、
「若けぇなら、これくらい解け」
と返ってくる。
なんか、悔しい。
冗談話をしてあれこれ喋っていると、不意におじさんが、
「タオルを落とした」
と言った。
「はぁ?家に置いてきたんじゃねぇ?」
と俺は返して、もと来た道を戻ればあるだろうと回れ右をして、道を引き返した。
それからしばらくして、再びおじさんが、
「家に置いたの思い出した!」
と言った。
俺は呆れつつ、
「おじさんもぼけたなぁ」
と言うと、おじさんは、
「思い出しただけ、ええじゃろ」
と返してきた。
俺「いやぁ、ぼけとるじゃろう~病院行かな」(笑いながら)
おじさん「なら、治してもらわなな」(俺を見ながらニヤけつつ)
俺「俺は、医者じゃねぇ」(笑いながら)
こんなやり取りを繰り返して、夕方のお寺を散歩した。
ボランティア先の俺なら、お年寄りに向かって「ぼけとるじゃろう~病院行かな」なんて絶対に言わない。
いくら元気な人であっても。
それが、おじさんになら平気で言える。
軽い冗談になる。
それが、長年積み重ねてきたものなんだろうと思う。
おじさんと話をしているとき、近所のおばさんに、「ホントの息子よりかわいいんじゃない~?」と言われたこともある。
他人から見れば、俺はただ近所の子供だし、おじさんもただのおじいさん。
でも、おばさんに聴かれた時のおじさんは、とても嬉しそうだった。
ただのおじいさんじゃなかった。
夜に珍しくおじさんから電話があった。
内容は、散歩に付き合ってくれたことの御礼だった。
俺は、御礼を言われるほど何かをしたわけではないし、嫌々散歩に行ったわけでもなかった。
ごくごく普通に、何も考えず散歩に行っただけ。
でも、おじさんは、何度もありがとうと言った。
俺は、それがこそばゆかった。
ただ、いつもどおりに散歩へ行っただけなのに。
電話を切った後、おじさんの珍しい言動に少し寂しさを感じた。
今まで、何度も御礼を言われた事なんてなかったからだ。
これが不思議と違和感になって残った。
電話中、俺が自然と恐縮してしまったくらいに。
電話を切った後で、自分が恐縮していたことに気付いた俺はそのことに驚愕だった。
思えば、知り合って十数年が経つ。
歳の差を考えたことがなかった。
知り合ってから俺は成長したし、おじさんは老化した。
当たり前だけど、それを電話越しにひしひしと感じてしまった。
おじさんは、少し事を忘れるようになったし、身体の調子の善し悪しも出てくるようになった。
小さい頃の俺が気付かなかったことに、今の俺はおじさんのことに気が付き始めている。
本当は、とっくに気が付いていて見たくなかっただけだったのかしれないけど、はっきりと電話を通して実感した。
いつまでもあの頃のままじゃないんだって。
年月が経つのはあまりにも早いなぁ
って思った。
でも、俺も似たような感覚の経験はある
他人ではなく家族なんだけど、母親がね
昔はできていたことができなくなっていたことが発覚したりすると、「そういえばこの人もそーいう歳だな~」とか思う
俺を生んだ時から高齢のおばさんで、見た目で老けるっていうのを感じたことが俺にはなかったから、あるとき気付いてよくよく考えると、歳なんだよね~
子どものころからかわいがってもらってたよ。
一緒にお大師さん行ったりとか。
毎回コースが決まっててね(笑)
3年前くらいに亡くなったんだけどね。
大事なつながりですね
誰しもが、いずれ感じる感覚だと思ってるよ。
それに俺がふと気付いただけ。
他人より近い距離で接していると、それを知った時
どこか寂しいんだよ。
親も歳を取るね。
気付きたくはないけど、いつまでもそうはいかないね。
でも、親の歳がいくつになったのかは思い出せない。
歳は取ったけど、いくつかは知らない。
思い出せなくなった分、俺も歳を取ったってことかな。
>>たましいさん
かわいがってもらったことは、いつまでも残るものなんだなって思います。
その辺り、近所の人って偉大だと思う。
地域のいろんなことを知っているし、
何かとお世話になることが多い。
そんなつながりをこれからも大切にしていきたいですね。