中国の袁貴仁・教育相が先日、毛沢東主義の全盛期を思わせる通達を全国の大学に出した。「西洋の価値観を広める教科書を教室内に持ち込ませてはならない」「党の指導部や社会主義を攻撃または誹謗(ひぼう)する見解を、一切容認してはならない」という厳しい調子のものだった。
北京を先週訪れた際にこのことを知った筆者は、西洋の影響を取り締まるのはいささか遅すぎるのではないかと思った。中国の首都にはランボルギーニからフーターズまで、思いつく限りの西洋ブランドがすでに進出している。大学の近くにあるカフェでは、中国人の学生たちが西洋の学生たちと同じようにおしゃべりをしたりネットサーフィンを楽しんだりしている。
習近平国家主席。習氏が推進する反腐敗運動は予想より長く実行されている=ロイター
とはいえ、一見おなじみの光景が実はまやかしだということもある。筆者はホテルの部屋からインターネットに接続して、グーグルやツイッターなど(中国当局にとって不都合な)多くのサイトへのアクセスを遮断するシステム「グレート・ファイアウオール」にいきなりぶち当たり、素朴に驚いた。
西洋の影響を取り締まる動きが大学やブロガー、テレビの放送スケジュールなどにも及ぶなか、グレート・ファイアウオールはこの数カ月間でますます高くなっている。リベラルな政治に直接関わっている人々は、もっと直接的に苦しんでいる。複数の人権団体によれば、ここ1年間で身柄を拘束された活動家は数百人に上る。外国の非政府組織(NGO)も以前より厳しい監視や圧力にさらされている。
■国外の出来事に強い不安
こうした取り締まりが示すのは、驚くほど強い不安感を中国の支配者層が抱いていることだ。中国政府は、国外で生じたさまざまな出来事を見て、中国共産党の権力掌握を脅かすいわゆる「カラー革命」が生じるのではないかと不安を募らせているのだ。そしてこれは、中国国内の安定に関する不安とリンクしている。折しも中国では経済成長が鈍化しつつあるうえに、習近平国家主席の反腐敗運動によって支配階層のエリートの間に不満が生じつつある。
アラブ世界での一連の革命を目にした中国共産党は、非民主的な政府に対する大衆の反乱と、それがもたらし得る混沌を強く懸念した。そして、こうした革命において西洋の制度や科学技術が果たしている役割に着目した。2011年のエジプト騒乱が「フェイスブック革命」と呼ばれたこと、そしてこれを先導した著名な活動家たちの中にグーグルの幹部が1人含まれていたこともあって、中国におけるこの2社の運命が定まった。
カラー革命の脅威に対して中国当局は、ウクライナ、そして何より香港での出来事により、この1年間で病的にうたぐり深くなっている。中国は、ウクライナの内戦についてロシア側の見解を真剣に受け入れたように見受けられる。基本的に米国が、インターネットからNGOに至るありとあらゆる非道な手段を使って反乱を組織したものだという見方だ。
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