バカラの次は、ロレーヌの庶民たちにも愛されてきた、ロレーヌ地方の陶器、リュネヴィル(Lunéville)焼きのお話です。おいしいキッシュ・ロレーヌをテーブルに載せるには、やっぱり、この地方のお皿を使いたいですからね!
リュネヴィル焼きは、二世紀半の歴史を持つ、ロレーヌ地方の伝統的な陶器です。(陶器の焼き物は、フランスのいくつかの地方で伝統があります。リモージュは、磁器です。)カラフルなデザインが、とても素朴で、かわいいと思いませんか?
リュネヴィル、というのは、町の名前です。ナンシーから、東に車で約30分の、ロレーヌの中くらいの町。例の美食家、元ポーランド王、そしてロレーヌの公爵であった、スタニスラスが「小ベルサイユ」とよばれる城を建て、好んでこの地に滞在しました。
<写真・花をモチーフにしたデザインのリュネビル焼きは、一番よく見られる>
1748年、ジャック・シャンブレット(Jacques Chambrette )という人が、このリュネヴィルに、陶器工房を作ったことから、この陶器がリュネヴィル焼きとよばれるようになりました。
このロレーヌには、シャンブレットが工房を作る前にも、豊かな陶器の歴史があり、地盤はすでにあったようです。
同時に、この時代、豊かな人たちは、金属の食器類を使っていたのですが、徐々に、陶器、磁器を使うようになってきたことも、リュネヴィルの陶器をさらに、発展させる要因となりました。また、中国陶器の輸入も、大きな流行の追い風だったのですね。スタニスラスも、この陶器を愛したのか、シャンブレットの工房は、「ポーランド王の御用立つ工房 “Royal Factory of the King of Poland”) 」と指定されます。
リュネヴィル焼きの特徴は、そのロレーヌの自然、人間をモチーフにした、豊かなデザインにあると、わたしは思っています。
職人達は、工房から見る、ロレーヌの花や植物、動物、人々を陶器の中に取り込み、リュネヴィルの陶器は、優しい和やかな色合いに満ちています。それまで、金属のお皿を使っていた貴人達には、たいへんに、新鮮に写ったことでしょうね! スタニスラス公も、そんな気持ちで、このお皿にマドレーヌを持って、食べたのでしょうか?
リュネヴィルは、また、ルイ14世王妃、マリーアントワネットお気に入りの建築家、ミック(Richard Mique)にも見出され、1500もの作品が、マリーアントワネットの、小トリアノンの庭を飾るのにも使われたそうです。
リュネヴィルは、その後、一時衰退しましたが、20世紀に入って、ドイツ出身のクルール(Keller)一家と、ゲロン(Guérin)によって、再び、その命を吹き返します。クルール一家は、リュネヴィルの陶器の工業化に成功、これによって、リュネヴィルの陶器は、庶民(といっても、豊かな中産階級以上ですが)の生活の中にも、浸透していくのです。
<写真・ナンシー派、アール・ヌーボーの先駆者、エミール・ガレの、リュネヴィル焼きの作品>
その後、二つの大きな戦争によって、このリュネヴィルも、また衰退してしまうのでうが、戦後、再び、ロレーヌの中小企業によって、この地方の伝統は、根強く残っています。
現在でも、伝統を重んじるロレーヌの家庭では、リュネヴィルの食器を、居間や、食堂の壁に飾っています。そして、お客様がきたときや、日曜日のディナーは、このリュネヴィル焼きで、お料理も、お皿も楽しみながら食べるのが、ロレーヌの人たちです。(若い人は、IKEAのほうが好み・・・。)
<写真・フランスの象徴、雄鶏をモチーフにしたリュネヴィル焼き。さまざまな鶏の表情が楽しい>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このリュネヴィルの陶器を飾るのに、欠かせないのが、この地方特産の、(一般的には、オーク材で作られた)どっしりした家具です。
画像のような食器棚(bressoir)は、ロレーヌの、奥まった田舎でさえ、見つけることができます。特に、リュネヴィルが盛んだった18世紀に、こうした食器棚も、同時に広まっていったそうです。
こうして、ロレーヌの人たちは、家にある一番美しい、花や植物の舞う陶器を飾って、長い冬を、春を夢見ながらすごしたのかもしれません。
みなさんも、ロレーヌにいらっしゃったら、(バカラもいいですが)、日本に知られていないリュネヴィル焼きを、お土産にしてみてはどうでしょうか? リュネヴィル焼きは、現地で買った方が、とてもお得ですし、楽しいデザインのリュネヴィル焼きは、毎日のお食事や、お茶の時間を、ほっこり和やかな気持ちにさせてくれますよ!
リュネヴィルのHP(フランス語)
http://www.manufacture-luneville.com/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<補足・陶器(faïence)と磁器( porcelaine)の違い>
磁器 (porcelaine)
素地(きじ)のガラス質が磁化して半透明となり、吸水性のない硬質の焼き物。陶器より高火度で焼かれ、たたくと金属的な音がする。中国で創製され、日本では江戸初期の有田焼に始まる。
陶器 (faïence )
陶磁器のうち、素地(きじ)の焼き締まりが中程度で吸水性があり、釉(うわぐすり)を施した非透光性のもの。土器よりもかたいが、磁器にくらべてやわらかい。
リュネヴィル焼きは、二世紀半の歴史を持つ、ロレーヌ地方の伝統的な陶器です。(陶器の焼き物は、フランスのいくつかの地方で伝統があります。リモージュは、磁器です。)カラフルなデザインが、とても素朴で、かわいいと思いませんか?
リュネヴィル、というのは、町の名前です。ナンシーから、東に車で約30分の、ロレーヌの中くらいの町。例の美食家、元ポーランド王、そしてロレーヌの公爵であった、スタニスラスが「小ベルサイユ」とよばれる城を建て、好んでこの地に滞在しました。
<写真・花をモチーフにしたデザインのリュネビル焼きは、一番よく見られる>
1748年、ジャック・シャンブレット(Jacques Chambrette )という人が、このリュネヴィルに、陶器工房を作ったことから、この陶器がリュネヴィル焼きとよばれるようになりました。
このロレーヌには、シャンブレットが工房を作る前にも、豊かな陶器の歴史があり、地盤はすでにあったようです。
同時に、この時代、豊かな人たちは、金属の食器類を使っていたのですが、徐々に、陶器、磁器を使うようになってきたことも、リュネヴィルの陶器をさらに、発展させる要因となりました。また、中国陶器の輸入も、大きな流行の追い風だったのですね。スタニスラスも、この陶器を愛したのか、シャンブレットの工房は、「ポーランド王の御用立つ工房 “Royal Factory of the King of Poland”) 」と指定されます。
リュネヴィル焼きの特徴は、そのロレーヌの自然、人間をモチーフにした、豊かなデザインにあると、わたしは思っています。
職人達は、工房から見る、ロレーヌの花や植物、動物、人々を陶器の中に取り込み、リュネヴィルの陶器は、優しい和やかな色合いに満ちています。それまで、金属のお皿を使っていた貴人達には、たいへんに、新鮮に写ったことでしょうね! スタニスラス公も、そんな気持ちで、このお皿にマドレーヌを持って、食べたのでしょうか?
リュネヴィルは、また、ルイ14世王妃、マリーアントワネットお気に入りの建築家、ミック(Richard Mique)にも見出され、1500もの作品が、マリーアントワネットの、小トリアノンの庭を飾るのにも使われたそうです。
リュネヴィルは、その後、一時衰退しましたが、20世紀に入って、ドイツ出身のクルール(Keller)一家と、ゲロン(Guérin)によって、再び、その命を吹き返します。クルール一家は、リュネヴィルの陶器の工業化に成功、これによって、リュネヴィルの陶器は、庶民(といっても、豊かな中産階級以上ですが)の生活の中にも、浸透していくのです。
<写真・ナンシー派、アール・ヌーボーの先駆者、エミール・ガレの、リュネヴィル焼きの作品>
その後、二つの大きな戦争によって、このリュネヴィルも、また衰退してしまうのでうが、戦後、再び、ロレーヌの中小企業によって、この地方の伝統は、根強く残っています。
現在でも、伝統を重んじるロレーヌの家庭では、リュネヴィルの食器を、居間や、食堂の壁に飾っています。そして、お客様がきたときや、日曜日のディナーは、このリュネヴィル焼きで、お料理も、お皿も楽しみながら食べるのが、ロレーヌの人たちです。(若い人は、IKEAのほうが好み・・・。)
<写真・フランスの象徴、雄鶏をモチーフにしたリュネヴィル焼き。さまざまな鶏の表情が楽しい>
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このリュネヴィルの陶器を飾るのに、欠かせないのが、この地方特産の、(一般的には、オーク材で作られた)どっしりした家具です。
画像のような食器棚(bressoir)は、ロレーヌの、奥まった田舎でさえ、見つけることができます。特に、リュネヴィルが盛んだった18世紀に、こうした食器棚も、同時に広まっていったそうです。
こうして、ロレーヌの人たちは、家にある一番美しい、花や植物の舞う陶器を飾って、長い冬を、春を夢見ながらすごしたのかもしれません。
みなさんも、ロレーヌにいらっしゃったら、(バカラもいいですが)、日本に知られていないリュネヴィル焼きを、お土産にしてみてはどうでしょうか? リュネヴィル焼きは、現地で買った方が、とてもお得ですし、楽しいデザインのリュネヴィル焼きは、毎日のお食事や、お茶の時間を、ほっこり和やかな気持ちにさせてくれますよ!
リュネヴィルのHP(フランス語)
http://www.manufacture-luneville.com/
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<補足・陶器(faïence)と磁器( porcelaine)の違い>
磁器 (porcelaine)
素地(きじ)のガラス質が磁化して半透明となり、吸水性のない硬質の焼き物。陶器より高火度で焼かれ、たたくと金属的な音がする。中国で創製され、日本では江戸初期の有田焼に始まる。
陶器 (faïence )
陶磁器のうち、素地(きじ)の焼き締まりが中程度で吸水性があり、釉(うわぐすり)を施した非透光性のもの。土器よりもかたいが、磁器にくらべてやわらかい。