失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「思い出にむしばまれて」 梅垣義明 1994年

2011-09-30 | 陽水民生&安玉
WAHAHA本舗の梅垣義明、唯一のシングル。

ワハハの梅ちゃんならアルバムの一枚や二枚出していてもおかしくないのに。本人名義の録音物がこの8cmしかないのは意外。ほかには湾岸バカ(久々に使った)のCDコレクションとして眠っている、鈴木慶一プロデュースの『東京ゴッドファーザーズOST』(2003)に、持ちネタの「ろくでなし」を歌いあげるトラックが存在する。

①思い出にむしばまれて
作詞:いとうせいこう、作曲:玉置浩二、編曲:萩原健太
玉置浩二の隠れた名作。94年当時はすでにバラード作家としては3周くらいしちゃってた玉置。自身の資質を客観的に突き放したような雰囲気もある、サービス過剰なシャンソン風味の濃厚バラードに仕上げた。ここまでガチガチのバラード、どこかコミカルなエクスキューズがないとなかなか書けるもんじゃない。萩原健太による悪ノリすれすれのドラマチックなアレンジも素晴らしい。そして梅ちゃん。安定感抜群だし、表現力もあるんだけど、シンガーとしては決定的に軽い。しかしその欠点をわかった上で、いとうせいこうが描き出す、女性の、いや女役の…いやそれとも手術済?まあ一般的には倒錯とかいわれてしまう愛のかたちを見事に表現している。間奏の語り部分、自嘲気味に笑いながらの乾いた「馬鹿ね」は鳥肌モノの名演。ためにためたあと「♪今も 神様」で爆発するサビのカタルシスよ!この曲が手に入りにくいのは惜しいな。

②痛みはいつか―フィスト・オブ・ラブ―
作詞:いとうせいこう、作曲:金子隆博、編曲:萩原健太
イントロは「いとしのエリー」のパロディ。エレクトリック・シタールはザ・スタイリスティックス「誓い(You Make Me Feel Brand New)」風だし、ヤナギヤクインテットのコーラスとの掛け合いはザ・デルフォニクス「Didn't I Blow Your Mind This Time」ぽいし、フィリ―ソウルのエッセンスをぶち込んだ最高の曲&アレンジが泣かせる。クリアな軽い声で朗々と歌う梅ちゃんは、やっぱりボーイズラブというより「さぶ」の世界。こぶしで語る恋人同士。こっちにも語りパートがあるが、もちろん兄貴なムードで。

③④カラオケ

定価1000円、中古で315円。
完全に入り込んだキャラ作りが素晴らしい秀作ジャケ。①の作品世界を見事にビジュアル化している。
裏は②のイメージで、プールでポーズを決める黒いビキニパンツの兄貴。こちらも力作。

2曲とも充実の名作8cm。ジャケも完璧で、なおかつ8cmでしか聴けない。もちろん再発もなさそうだし、配信も期待薄。あとはワハハのコンピ企画でもなければ、永久に埋もれてしまいそう。8cmファンの皆さま、見つけたら買い!



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
芸人の鑑 (都市色)
2011-10-03 08:09:24
こんにちは。
的確であろうレヴューから最高に素敵な「馬鹿馬鹿しさ」が伝わってきます。
う~ん、聴いてみたいです。
鼻の穴からからピーナツを飛び散らしそうな勢いですね!
玉置さんのツレにカヴァーして貰いましょう!
返信する
Unknown (nakamura8cm)
2011-10-03 22:26:48
これはお薦めですよ~
「ろくでなし(鼻ピーナッツ)」が入っているDVDにも、残念ながらこのシングル曲は未収録のようです。

玉置さんのツレって…現在の人はちょっと(笑)
返信する

コメントを投稿