失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「マドンナ/クレプシドラ・サナトリウム」コシミハル 1991年

2005-05-06 | 黄魔術系
コシミハルは、テクノ人脈では最重要女性アーティスト。私的に。細野晴臣との交流が深く、常にクオリティーの高い作品を発表し続けている。カタカナ・デビュー盤の1983年作「TUTU」から現在まで、小悪魔的エロスは一貫しているが、初期のテクノ歌謡的な要素は徐々に影を潜め、クラシック寄りの楽曲が増えてきている。

①マドンナ
作詩:関口菊日出・コシミハル、作曲・編曲:コシミハル、補編曲:上野耕路
この曲は原田知世出演のサントリー・ワイン「マドンナ」のCF曲として書き下ろされた「今宵マドンナ」(1989年広告音楽競技大会作曲賞受賞)を元にしている。同時発売のアルバム「父とピストル」にはショート・ヴァージョンとも言うべき「マドンナ」と「ドンナ・マドンナ」の2曲が収められた。ここで聴けるのはシングル・オンリーのヴァージョンで、後にベスト盤「オートポルトレ」に収録。作詩の関口菊日出はCM畑の人。多分コピー・ライター。
コシミハルとしてはこの曲をこの時期にシングルとして出すのはどうだったんだろうか。CMの知名度をセールスに結びつけようとするには時間か経ちすぎてるような気がするし、悪い曲ではないけど決してアルバムを代表するクオリティーの曲とは言えないし…。やはりCM曲はシングルになりやすいということか。

②クレプシドラ・サナトリウム
作詩・作曲・編曲:コシミハル
同名曲のドイツ語ヴァージョンがアルバム「父とピストル」の一曲目。ドイツ語版はアルバムの導入曲として、これ以上ない静謐さと退廃を兼ね備えた傑作。フランスのイメージが強いコシには珍しく、アルバム全体にドイツ的陰鬱+倒錯的エロスが影を落としている。「リリカちゃん電話~おませな情事」でピークに達した緊張感が、43秒の短い「マドンナ」を挿み、エンディングの「ピコロモンドで待ってて!」で鮮やかに解き放たれる魔法のアルバム。ああ、これほどの名作が廃盤とは。
このシングルに収められたのは、日本語詞のヴァージョン。もちろんアルバム未収録。ベスト盤にも入らなかったのでレア度高し。やはりアルバムに入れるならドイツ語版かな、とは思うが、これはこれで美しさのある日本語版。

定価930円。定価で購入。

コシミハルは「ヨーロッパ的なセンス」などと紹介されることが多いが、ヨーロッパにもこんな凄い人はいないのでは。

ついでだから言っておくと、1987年作のアルバム「echo de MIHARU」(これも廃盤)収録の「天使に寄す」は数ある細野作品の中でも名作中の名作。YMOのライブ音源を発掘してるヒマがあるならこれを再発しろ、と言いたい。(誰に?)
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