「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

入浴

2006-05-21 11:54:53 | Weblog
入浴1週間に2回くらい各中隊、順番繰りに回ってくる。浴槽に手ぬぐいをつけることは厳禁で、ザブッとつかると暖まりもしないうちに「上がれ!」の号令で、競争で身体を拭いて作業衣を着て、外に列を作って出る。すると手ぬぐいは棒のようにカチンカチンに凍ってしまった。これは第1回目の入浴風景。私はいつの間にか股のところに銭タムシができて、医務室から「甲幹の所の風呂に入れ」の指図を受けてそこに入っていた。しかし、「あいつは我々より早く入っている」と甲幹達が言っているのを耳にしたので、前ではなく後に入るようにした。治療は受けたがなかなか治らず、これを連れて、私は南方に転属して行った。中隊の医務室のタムシの治療は、ただ、サルチル酸を塗るだけだった。
 ここの衛生兵が死んだ。ペーチカの石炭の不完全燃焼による一酸化炭素ガスの中毒死という事だったが、「いや、薬物による自殺だ」「○○を飲んだそうだ」「牡丹江のピー(慰安婦、売春婦など)に足繁く通って、どうにもならなくなったからだ」「医薬品を外に持ち出したのが判ったからだ」とも言われた。しかし、彼が自殺してから、医薬品の在庫調査をしたら、相当の不足品があることが分かったという。
 ある日、「今日は入浴場をガス訓練する」とガス班の兵隊の内緒話を聞いたので、どんな事になるのかと遠くから見ていたら、ガス筒を投げ込んだらしく、大混雑になって半裸状態で逃げ出すのが見えた。しかし、今日は入浴者が少なかったので、怪我人は出なかったそうだ。又、暖かかったので良かった。

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