「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

満州の夕日

2006-05-21 12:26:56 | Weblog
 満州の夕日は赤く、大きかった。軍歌「戦友」の『赤い夕日の満州に…』とあるように、山の端に2メートルもあるような、本当に赤い、赤い夕日が辺りを真っ赤に染めながら沈んでいった。誰でも満州の夕日は大きくて赤かったと、異口同音にいう。
 牡丹江は盆地のような所の真ん中にあったようだ。夜中にフト目が覚めると、駅の方から汽笛が聞こえた。凍てついた空気を震わせてボーッと鳴った。そして周りの山々にこだまして、エコーが長く長く続いてうら悲しく聞こえた。
 まだ蒸気機関車の頃、人吉に泊まった時、やはり同じような汽笛の響きを聞いた。もう、蒸気機関車が廃止されたので、このうら悲しい思い出の響きは二度と聞けない。
 ある時、将校官舎に使役に行った。丁度、和子くらいの女の子がいて、とても可愛かった。それから、一寸風邪をひいてしまった。張りつめた気分が、自分の子と同じ年頃の子供を見て緩んでしまったのだろう。

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