「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

二十九作業場  2

2006-09-04 18:26:49 | Weblog
 この仕事はチョット要領がいるものだから、後では一部の者が指定されたが、この作業は熱く溶けたアスファルトを扱うので火傷なんかも起きたし、靴の底が溶けて変形するし、又、くっついて取れなくなるので、縄みたいなもので靴をぐるぐる巻いて仕事をしていた。聞けば作業用の靴を配給したとか言っていた。そのアスファルトを溶かすボイラー炊きが楽なようで大変だった。作業場に着いて薪を拾ってきて火をつけるのだが、うまく燃えないと何時までもアスファルトが溶けないので、監督から怒鳴られていた。しかし後では石油バーナーに変わった。
 又ある時、鉄道の橋を架けるための穴掘りをさせられた。スコップで土を掘るとそこの土は赤い血のような色をしていた。コンクリートで橋脚を造るのだが、監督が見ていない時を見はからって、そこらにあった大きな石を投げ込んで、その上にコンクリートを流し込んで、少しでもコンクリ練りの作業を減らすようにした。しかし、後でその橋脚の上を汽車が走っているのを見て《大丈夫かな》とチョット心配した。