「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

冷凍会社のストライキ

2006-09-20 22:07:35 | Weblog
 それから冷凍会社の作業、これも現地人作業員のストライキの肩代わりであった。冷蔵庫の中は零下30度位もあったか、満州で着た懐かしの防寒外套に防寒手袋、防寒帽を被って、白いガーゼに包まれた冷凍肉をトラックに積んだり、あるときはトラックから倉庫内に運び込んだりした。凍りついた中での作業は滑って危険であった。1時間作業をすると1時間位の休憩、外に出て防寒用具をとると今度は熱帯の30度近い気温だから温度差50度近い、体がふやけたようになってぐったりしてくる。「これは重労働だ」とみんな言った。午前中2回、午後2回作業したが体の調子が狂ってしまうような気がした。ここは2日位行った。
 それからある日、トラックで冷凍肉が続々と作業隊に運び込まれた。そしてその日のおかずは肉の煮たものだった。その次の日もトラックで運び込まれた。本部から
 「肉を配給するから欲しい幕舎は炊事場まで貰いに来い」と指図があった。うちの幕舎でも大きな塊を貰ってきて、水煮をして食ったがあまり美味しくはなかった。何か大きな魚の白身の所を煮たみたいで脂気がなかった。
 「どうしたんだ」みんなが不思議がったが、ストライキが長引いて肉が腐りかけてきたので緊急処分したらしいが、肉攻めが3,4日続いたので誰もがウンザリしてしまった。
 それからずーっと後で、コーンマトンの配給があった。コーンビーフに慣れていた私達はマトンの異なった臭いにはチョッと戸惑ったかたちであった。今までいろいろの獣肉を食ったが、スマトラのタケゴンで食った若鹿の肉が柔らかく、筋もなく、臭いも少なく1番美味しかった。