お酒の家計消費についての第2弾は、ウィスキーとワインについてです。
分析に用いたデータは、前回と同じ総務省統計局の家計調査分類項目「ウイスキー、ワイン」の、各月の購入頻度、支出金額、購入数量、平均価格及び購入世帯割合の数値です。
分析用には前回と同様に、実際に購入した世帯の購入頻度、購入1回当たりの購入数量、購入1回当たりの支出金額、購入単価及び普及率に加工した数値を用い、分析は米国センサス局の季節調整法X-13により行なっています。
◎ウィスキー
家計調査の収支項目分類表のウィスキーは、2000年1月から2004年12月までは国産ウィスキーと輸入ウィスキーにわかれているため、これを合算してウィスキーとし、2005年1月以降のデータに連結して使用しています。
◇ウィスキーを実際に購入した1世帯当たり購入頻度の推移について
分析期間におけるウィスキーを実際に購入した1世帯当たり購入頻度は、平均的には1.51回/月±0.7回(±5%)とやや大きな変動範囲で増減を繰り返しながら、緩やかに増加しています。
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます、以下も同じ。)
◇ウィスキーの購入1回当たり購入数量の推移について
購入1回当たりの購入数量は、2000年1月の66.5mlから2008年3月の35.8mlまで途中若干の増減が含まれますが、ほぼ一貫して減少傾向となっています。
その後は、やや大きな増減を含みますが2014年11月の55.5mlまで増加傾向となっています。
ウィスキーの購入数量の増減は、焼酎の購入数量の増減と逆の動きをしているように見えます。
すなわち、焼酎の購入数量が増加傾向にあるときウイスキーの購入数量が減少し、最近はその逆の現象のように見えます。
そこで、焼酎の購入数量とウィスキーの購入数量との関係(相関分析)を見てみました。
2008年頃までは、明らかに焼酎ブームに乗って焼酎の購入量が増えウイスキーの購入数量が減っています。
焼酎ブームが去った以降もその傾向がみられますが、次第にウィスキーが増える中で焼酎の購入数量がそれ程減ってはいません。
過渡期的な現象か、絶対量の違いが大きいことが影響しているものと思われます。
◇ウィスキーの購入1回当たり支出金額の推移について
分析期間における購入1回当たりの支出金額は、前述の購入数量と次の購入単価とも関係しますが、2000年1月の123円から2008年2月の54円まで、ほぼ一貫した減少傾向が続いています。
その後は若干の増減を含む緩やかな増加傾向で推移し、2014年11月では81円まで増加しています。
◇ウィスキーの購入単価の推移について
分析期間における購入単価は、2000年1月の184円/mlから2013年3月の135円/mlまで、ほぼ一貫した値下がり傾向で推移しています。
最近は増加傾向に転じ、2014年11月の147円/mまで値上がっています。
◇ウィスキーの購入世帯割合(普及率)の推移について
分析期間における普及率は若干の増減を含みますが、2000年1月の4.4%から2006年5月の2.5%まで一貫して減少傾向で推移しています。
その後は2007年12月までの間に2.5%から3.5%の範囲で変動し、それ以降、2014年11月の4.6%まで、若干の増減を含むほぼ一貫した増加傾向で推移しています。
最近のウィスキ-は、以前は外で飲むハイボールが家庭でも飲むようになってきたことによるものと言われています。
◇ウィスキーの都道府県庁所在都市別消費について
ウィスキーの消費は、北日本(東北地方、北海道)で多く、南日本(九州地方、沖縄、中四国地方)で少ない傾向にあります。
都道府県庁所在都市の中でウィスキーの消費量の多いのは、青森市(購入数量:3,073ml、支出金額:3,483円、購入単価:113.3円 /100ml)、盛岡市(1,794ml、2,236円、124.6円/100ml)、秋田市(1,683ml、2,166円、128.7円 /100ml))、札幌市(1,561ml、2,153円、137.9円/100ml))及び千葉市(1,517ml、2,153円、141.9円 /100ml)の順であり、少ないのは、宮崎市(239ml、354円、148.1円/100ml)、津市(249ml、528円、 212.0円)、鹿児島市(267ml、368円、 137.8円)、那覇市(287ml、383円、 133.4円 /100ml)及び長崎市(401ml、665円、 165.8円 /100ml)の順です。
◎ワイン
家計調査の収支項目分類表では、2009年12月までは「ぶどう酒」と表示され、2010年1月以降は「ワイン」と表示されています。
◇ワインを実際に購入した1世帯当たり購入頻度の推移について
分析期間における実際に購入した1世帯当たり購入頻度は、2006年8月までは1.60回/月±0.04回/月(±2.4%)の範囲で変動していますが、ほぼ横這い状態で推移しています。
その後は、2006年9月の1.55回/月から2014年11月の1.89回/月まで増加傾向での推移となっています。
◇ワインの購入1回当たり購入数量の推移について
分析期間における購入1回当たりの購入数量は、2000年1月の127.6mlから2007年1月の100.7mlまで減少傾向が続いた後、2010年4月までの間は102.9ml±1.7ml(±1.7%)の範囲の変動で、横ばい状態で推移しています。
2010年5月以降は急増状態となり、2014年11月には150.0mlに達しています。
最近数ヶ月は、やや足踏み状態のような推移ですが、さらに増加傾向で推移するのか、この水準で落ち着くのかもう少しの間、推移を見守る必要があります。
◇ワインの購入1回当たり支出金額の推移について
分析期間における購入1回当たりの支出金額は、2000年1月の154円から2008年10月の115円まで若干の増減を含む減少傾向で推移しています。
その後は、2014年11月の151円まで、ほぼ一貫した増加傾向での推移となっています。
◇ワインの購入単価の推移について
分析期間における購入単価は、2000年1月の120.7円/100mlから2014年11月の100.1円/100mlまで、平均的には112.5円/100ml±7.4円/100ml(6.6%)の範囲での変動を含み、ほぼ値下がり傾向で推移しています。
◇ワインの購入世帯割合(普及率)の推移について
分析期間における普及率は、2000年1月の11.4%から2007年7月の8.4%までほぼ一貫した減少傾向で推移した後に増加傾向に転じ、2014年11月には12.8%まで増加傾向に転じています。
いわゆるワインブームは、数次にわたり生じたと言われていますが、近年ではバブル景気崩壊後の1997~8年をピークとした第6次ブーム、そして今回は、2008年から始まった低価格輸入ワインが牽引する第7次ブームと言われています。
◇ワインの都道府県庁所在都市別消費について
ワインの消費は、大都市や北日本及び日本におけるワインの産地で多く、九州地方や中四国地方で少ない傾向にあります。
都道府県庁所在都市の中でワインの消費量の多いのは、東京都区部(購入数量:6,481ml、支出金額:7,291円、購入単価:112.5円 /100ml)、札幌市(4,719ml、4,280円、90.7円/100ml)、横浜市(4,623ml、5,276円、114.1円 /100ml))、甲府市(4,353ml、4,749円、109.1円/100ml))及び仙台市(4,037ml、4,444円、110.1円 /100ml)の順であり、少ないのは、鹿児島市(1,438ml、1,761円、122.5円/100ml)、和歌山市(1,451ml、1,412円、 97.3円)、山口市(1,725ml、1,880円、 109.0円)、長崎市(1,751ml、2,252円、 128.6円 /100ml)及び岡山市(1,753ml、1,640円、 93.6円 /100ml)の順です。
今月は、正月です。
年が改まるということで、年末年始にかけて家庭行事も多く、お酒を飲む機会が増えます。
そこで、家計におけるお酒の消費がどのように推移しているのか、また、地域差があるのかを、総務省統計局の家計調査のデータから明らかにしたいと思います。
お酒は、「清酒、焼酎」、「ウィスキー、ワイン」及び「ビール、発泡酒・ビール風アルコール飲料」に分けて、家計調査のそれぞれの品目の「購入頻度」「支出金額」「購入数量」「平均価格」及び「購入世帯割合」のデートを用い、米国センサス局の季節調整法X-13を用いて分析を行いました。
ただし、より推移をわかり易くするため、購入頻度は100世帯当たりの購入頻度で示されていることから、購入頻度と購入世帯数(10,000分比)から実際に購入した1世帯当たりの購入頻度を算出し、購入世帯数を100分比とした数値を普及率として分析を行なっています。
また、平均価格は購入単価と名称を変更しています。
なお、分析期間はデータベ-スに格納されている最長期間の、2000年1月から2014年11月までの間の約15年の各月データを用いています。
◎清酒
◇清酒を実際に購入した1世帯当たりの購入頻度の推移について
分析期間における清酒を実際に購入した1世帯当たりの購入頻度は、平均的には1.75回/月±0.05回/月(±3.1%)の範囲での変動となっています。
グラフでは、Y軸(購入頻度(回/月))のスケールが細かいので変動が大きく見えますが、変動は小さな範囲で増減を繰り返しており、ほぼ横ばい状態にあるものと思われます。
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます、以下も同じ。)
◇清酒の購入1回当たり購入数量の推移について
分析期間における清酒の購入1回当たり購入数量は、2000年の550ml前後から2014年の350ml前後へと1回に付き200mlも減少しています。
傾向的にも若干の増減はありますが、ほぼ一貫して減少傾向となっています。
なお、清酒の購入数量の季節変動は、8月(0.79)をボトムとして12月(2.07)をピークとする周年変動となっています。
さらに詳細に見てゆくと、1月の0.99から8月までは下がり続け、9月から徐々に増え、11月に1.05という変動ですから、12月は年末年始の家庭行事用の需要増と言えそうです。
◇清酒の購入1回当たり支出金額の推移について
購入単価とも関係してきますが、例えば購入単価が変わらないとすれば、購入数量が減っていく分、支出金額は減り続けることになります。
購入数量と同様、分析期間における清酒の購入1回当たり支出金額は、2000年の470円前後から2014年の285円前後へと1回に付き185円も減少しています。
傾向的に見ても、ほぼ一貫した減少傾向となっていますが、2013年11月以降は増加傾向に転じ出したように見えます。
◇清酒の購入単価の推移について
購入単価は、支出金額÷購入数量の関係にありますから、上述の購入数量、支出金額の推移から減少傾向にあるだろうということは容易に推測出来ます。
事実、分析期間における清酒の購入単価は、2000年の86円/100ml前後から2012年の75円/100ml前後まで11円/100mlも下がりましたが、その後は80円/100mlと急な値上がりとなっています。
このことが、2013年11月以降、購入数量が減る中で支出金額が増加している理由です。
ただ、なぜこのように急に購入単価が値上がったかは、原因がよくわかりません。
別の方法で、原因を探す必要があります。
◇清酒の購入世帯割合(普及率)の推移について
分析期間における清酒の購入世帯割合(普及率)は、2000年から2001年の23%前後から2014年の20%前後まで、緩やな減少傾向となっています。
以上見てきた結果から、少しづつ清酒離れが進んでいるようです。
日本食が世界遺産に登録されたことから、日本食ブームが起こるかもしれません。
その時が、清酒復活のチャンスが来ると期待できそうです。
◇清酒の都道府県庁所在都市別消費について
清酒の消費量は、雪深い地方や東北地方で多く、暖かい沖縄、九州、四国地方では少ない傾向にあるようです。
いわゆる、米どころ、酒どころでの消費は多くなっています。
都道府県庁所在都市の中で清酒の消費量の多いのは、新潟市(購入数量:13,808ml、支出金額:11,706円、購入単価:84.8円/100ml)、秋田市(12,393ml、9,982円、80.5円/100ml)、盛岡市(10,642ml、8,469円、79.6円/100ml))、長野市(9,814ml、7,419円、75.6円/100ml))及び福島市(9,722ml、7,308円、75.2円/100ml)の順であり、少ないのは、鹿児島市(1,551ml、1,476円、95.2円/100ml)、那覇市(1,985ml、1,573円、79.2円/100ml)、宮崎市(2,900ml、2,735円、94.3円/100ml)、熊本市(4.590ml、3,820円、83.2円/100ml)及び大分市(5,228ml、3,820円、87.3円/100ml)の順です。
◎焼酎
◇焼酎を実際に購入した1世帯当たりの購入頻度の推移について
分析期間における焼酎を実際に購入した1世帯当たりの購入頻度は、2000年の1.60回/月前後から2014年の1.95回/月前後と、期間中若干の増減はありますが、ほぼ一貫して増加傾向が続いています。
◇焼酎の購入1回当たり購入数量の推移について
分析期間における購入1回当たりの購入数量は、2000年の370ml前後から2006年の480ml前後までほぼ一貫した増加傾向が続き、その後は2010年まで横ばい状態が続いています。
2011年以降は減少傾向に転じ、2014年には430ml前後まで減少しています。
なお、焼酎の購入数量の季節変動は、6月(1.26)と12月(1.21)をピークとし、9月(0.91)と1月(0.85)をボトムとする、年に2回の山、谷のある周年変動となっています。
◇焼酎の購入1回当たり支出金額の推移について
分析期間における購入1回当たり支出金額は、購入数量の推移と同様の傾向をたどり、2000年の240円前後から2005年の320円前後まで一貫した増加傾向で推移し、その後は2010年の320円前後までほぼ横ばい状態で推移しています。
最近は減少傾向の推移に転じ、2014年では290円前後まで減少しています。
◇焼酎の購入単価の推移について
分析期間における購入価格は、67円/100ml±1円(±2%)の範囲の変動で、期間中若干の増減を含みやや緩やかな増加傾向で推移しています。
◇焼酎の購入世帯割合(普及率)の推移について
分析期間における普及率は、2000年の13%前後から2005年の19%前後まで一貫して増加傾向で推移し、その後は2010年まで19%前後で横ばい状態で推移しました。
最近は、減少傾向で推移し2014年では18%前後まで減少しています。
以上見てきたように、一頃の焼酎ブームは去ったようですが、家計における焼酎の地位は確保されつつ有るようです。
◇焼酎の都道府県庁所在都市別消費について
焼酎の消費は、九州・沖縄地方及び北日本で多い傾向にあります。
京阪神、中京地区では少ないようです。
都道府県庁所在都市の中で焼酎の消費量の多いのは、宮崎市(購入数量:22,910ml、支出金額:16,117円、購入単価:70.3円 /100ml)、青森市(17,029ml、9,614円、56.5円/100ml)、鹿児島市(15,642ml、13,274円、84.9円 /100ml))、秋田市(14,368ml、8,740円、60.8円/100ml))及び山口市(14,074ml、10,125円、71.9円 /100ml)の順であり、少ないのは、岐阜市(4,315ml、3,283円、76.1円/100ml)、福井市(5,804ml、4,081円、 70.3円/100ml)、大阪市(6,311ml、4,784円、75.8円/100ml)、水戸市(6,695ml、4,720円、70.5円 /100ml)及び京都市(6,794ml、5,359円、78.9円/100ml)の順です。
(参考)清酒の購入数量と焼酎の購入数量との関係(都道府県庁所在都市別 )
清酒と焼酎は競合しそうな関係にあるように思えますが、若干その傾向はあるものの地域特性が強いようです。
青森市、秋田市、松江市、盛岡市及び新潟市は、清酒も焼酎も飲む量が多く、宮崎市、鹿児島市、山口市、大分市及び熊本市は、焼酎は多いが清酒は少なく、長野市、福島市、金沢市、水戸市及び福井市は、清酒は多いが焼酎は少なく、岐阜市、大阪市、高松市、松山市及び福岡市は清酒も焼酎も少ないグループに分けることができそうです。
前々回のブログで宿題とした、チーズの家計消費について分析を行なってみましたので報告いたします。
用いたデータは、総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)の収支項目分類、乳卵類に含まれる「チーズ」です。
家計調査のデータには、購入頻度、支出金額、購入数量、平均価格及び購入世帯数について、全てのデータが記載されているものと、購入数量や平均価格のないもの、また、支出金額ののみのものがありますが、チーズについては幸いなことに全てのデータが揃っています。
家計調査報告の解説には、支出金額だけで説明を行なっているものが少なくありませんが、このデータが全て揃っていないと、消費の実態が掌握するのが困難と思われます。
データはそのまま使用して分析を行うこともできますが、今回はより家計消費の実態が理解しやすいよう、若干データを加工してみました。
購入頻度は、支出の頻度を100世帯当たりの回数として表記されていますが、これを実際に購入した世帯が月のどれくらいの頻度で購入したかを見るため、購入頻度を10,000世帯当たりの回数にし、購入世帯数(10,000分比)で除して算出してみました。
また、上記の方法で得られた購入頻度を用いて、1回当たりの購入数量、支出金額を算出してみました。
さらに、用語として理解のしやすさから、平均価格を購入単価と読み替え、購入世帯数(10,000分比)を100分比に変えて普及率としました。
◇チーズを実際に購入した1世帯当たりの購入頻度の推移
実際に購入した世帯の購入頻度は、2000年1月を例にとると、100世帯当たりの購入頻度は90回、購入世帯数は4,655世帯、したがって100世帯当たりを10,000世帯に換算し9,000回、これを購入世帯数4,655で除すと1.93回/月が得られます。
以下、2014年11月までの数値を算出し、これをもとに季節調整法X-13で得られた数値をグラフ化したのが下図です。
傾向値で見ると、2000年1月から2007年2月までの間は、1.96±0.03回/月と横這い状態ですが、その後は増加傾向となり2014年11月では2.45回/月まで増加しています。
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます、以下も同じ。)
◇チーズを実際に購入した世帯の割合(普及率)の推移
購入世帯数(10,000分比)を100分比に換算し推移を見ると、2005年1月までは47.80±0.58%と横ばい状態で推移し、その後は増加傾向で推移し2014年11月では62.04%まで増加しています。
◇チーズ購入1回当たりの購入数量の推移
購入数量をチーズを実際購入した1世帯当たりの購入頻度で除すと、購入1回当たりの購入数量が求められます。
2000年1月から2006年3月までの間は96.70±0.66gでほぼ横ばい状態で推移しています。
その後、2006年4月から2008年10月の間は96.41±4.00gと大きく変動していますが、原因はよくわかりません。
2008年11月から増加傾向となり、2013年2月に104.98gまで増加し、最近は減少傾向で2014年11月には101.00gまで減少しています。
◇チーズ購入数量の推移
実際に購入した1世帯当たりの購入頻度に、1回当たりの購入数量をかけると購入数量が得られますが、当たり前といえば当たり前ですが、これは家計調査の購入数量と同じ数値になります。
2000年1月から2008年9月までの間は、190.54±4.00gと横ばい状態で推移し、その後は2014年2月の239.41gまで増加、最近は減少傾向となり2014年11月では235.43gまで減少しています。
今後増加するかどうかは不明ですが、購入頻度の増加傾向、普及率の増加傾向から見て、可処分所得等が増えれば再び増加傾向に推移するものと思われます。
◇チーズ購入1回当たりの支出金額の推移
支出金額をチーズを実際に購入した1世帯当たりの購入頻度で除すと、購入1回あたりの支出金額が得られます。
2000年1月の143円/回から2004年12月の126円/回まで減少傾向で推移し、その後は増加傾向に転じ、2014年11月では169円/回まで増加しています。
◇チーズ支出金額の推移
購入数量と同様、1世帯当たりの購入頻度に1回当たりの支出金額をかけると、家計調査の支出金額と同じ数値になります。
支出金額は、2000年前半は異なりますが、2000年7月以降は252.78±5.46円とほぼ横ばい状態で推移した後、2014年11月の411.36円まで増加傾向で推移しています。
◇チーズ購入単価の推移
購入単価は、支出金額を購入数量で除すと得られる数値です。
支出金額が一定であれば、購入数量が増えれば購入単価は下がり、購入数量が減れば購入単価が上がるという関係になります。
逆に、購入数量が一定であれば、支出金額が増えれば購入単価が上がり、支出金額が減れば購入単価が下がるという関係でもあります。
したがって、家計を考えれば、購入単価が安ければ購入数量を増やすか、購入単価が高ければ購入数量を減らすという消費行動になりそうですが、チーズの場合はそうでもないようです。
購入単価が高ければ購入数量を減らす傾向にありますが、購入頻度、普及率の動向から見て、購入単価が高くても支出金額は増える傾向にあるようです。
購入単価は、2008年1月を境に、それ以前は136.48±3.96円/100gと、それ以後の158.98±6.21円/100gとに分けられるようです。
購入単価が安い時は、購入数量、支出金額とも横這い状態で推移し、購入単価が高くなってからの方が、購入数量、支出金額とも増えています。
以上見てきたように若干複雑な推移となっていますが、需要の強さは継続しそうです。
そこで、昨今のバターのように生乳生産量が減少する中で不足が生じないか懸念されますが、バターと異なりチーズは1950年代から輸入が自由化されており、生乳生産量がどうであれ不足する事態は生じないものと思われます。
家計調査については総務省統計局より、毎月末頃に前月の結果が公表されます。
平成26年11月の調査結果は、平成26年12月26日に公表され、冒頭に調査結果のポイントが次のように説明されています。
《ポイント》
二人以上の世帯
・消費支出は,1世帯当たり 280,271円
前年同月比 実質2.5%の減少 前月比(季節調整値) 実質0.4%の増加
名目0.3%の増加
・消費支出(除く住居等※)は,1世帯当たり 242,926円
前年同月比 実質0.9%の減少 前月比(季節調整値) 実質0.6%の増加
名目2.0%の増加
・勤労者世帯の実収入は,1世帯当たり 431,543円
前年同月比 実質3.9%の減少
名目1.1%の減少
また、本文は
1 消費支出の推移
(図1 消費支出の対前年同月実質増減率の推移(二人以上の世帯:数表)
2 勤労者世帯の収入の推移
(図2 実収入の対前年同月実質増減率の推移(二人以上の世帯のうち勤労者世帯;数表)
3 消費支出とその内訳
(表1 消費支出の内訳(2014年11月-二人以上の世帯)
(図3 消費支出(季節調整済実質指数)の推移(二人以上の世帯);数表)
4 勤労者世帯の収支
(表2 収支の内訳(2014年11月-二人以上の世帯のうち勤労者世帯)
の説明で構成されています。
以上の内容、すなわち前年同月比(名目、実質)の増減で消費支出や実収入の推移の実態を理解できるのだろうかという素朴な疑問と、消費支出と収支の内訳に付されている「◯◯か月連続の実質減少(増加)」という表現が適切に実態を表しているか違和感をおぼえたことが、このブログを始めることとしたきっかけです。
そこで、家計調査で示されている前年同月比(名目、実質)と、このブログで利用している米国センサス局の季節調整法X-13の分析結果を同じグラフ上にプロットし、検証して見ることにしました。
季節調整法は、時代とともに色々な方法が開発され、最近ではパソコン等を利用したより高度(適切)な方法が開発されてきましたが、基本的には、実数(原系列(O))は「傾向変動(T)」「循環変動(C)」「季節変動(S)」及び「不規則変動(I)」の変動要因で構成されており、「O=T×C×S×I(乗法モデル)」または「O=T+C+S+I(加法モデル)」を分解し「TCI値(季節調整済値)」「TC値(傾向値)」「S値(季節変動値)」及び「I値(不規則変動値)」として時系列データの分析値として利用されています。
ちなみに、家計調査など日本の官公庁等おける季節調整法は、多くは同じ米国センサス局のX-12を利用しています。
◇消費支出の推移について(二人以上の世帯)
表示した期間における消費支出の傾向値(TC)は、平均的には288,300円±1,750円(±0.6%)の範囲で横這い状態で推移しています。
前年同月比を見ると、プラスの時期が続いている時、マイナスの時期が続いている時などがありますが、傾向的にはどのように推移しているかは明確ではないようです。
傾向値との対比をもう少し詳しく見ると、2012年2月から8月までは7ヵ月間連続して名目、実質とも前年同月比でプラス(増加)で推移していますが、傾向値では2012年2月の286,100円から8月の285,700円まで減少傾向で推移しています。
また、2014年4月から11月までの間は、実質前年同月比8ヶ月間連続して減少(名目は増減まちまち)していますが、傾向値では2014年7月の287,700円から11月の288,100円に増加傾向での推移となっています。
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます、以下も同じ。)
前年同月比で推移を見る場合は注意が必要となってきます。
比率は相対的に前年同月との比較ですから、当月の前年同月比と前年の当月の前年同月比とを見る必要があり、1年以内の連続増加は必ずしも増加傾向を表しておらず1年以上続いて増加傾向にあると言えます(減少も同じ)。
最近のマスメディア等での報道は、「消費支出の連続8ヵ月減少」をとらえ、2014年4月の消費税率アップ(5%→8%)に伴い3月に駆け込み需要が生じた反動と税率アップに伴う買い控えと説明しているようですが、的確な推移の説明になっているのでしょうか。
例えば、仮に10月の前年同月比-3%(減少)と、11月の前年同月比-3%(減少)とは減少比率が同じであった場合、前年10月の金額と11月の金額が異なれば、10月は前年より100円安く、11月は50円安いということも起こりえるので、場合によっては推移を見誤ることも起こりえます。
もう少し的確に推移を把握するには、次に述べる季節変動(S)と不規則変動(I)を理解する必要があります。
(参考)消費支出の季節変動及び不規則変動について
グラフに表示した期間の消費支出の季節変動(S)は、12月に最大の値(1.15)、3月(1.07)、4月(1.05)に支出の多い月となる周年の変動で、この影響を除去(季節調整済)した値の前月比の増減は、傾向の増減を表します。
不規則変動は、2011年3月の東日本発生時に0.95と大きく減少し、2014年3月の消費税率アップ時の駆け込み需要で1.11と大きく増加した以外はプラスマイナス0.2の変動の範囲での比較的穏やかな変動となっています。
不規則変動の増減は、前年同月比の増減に影響しています。
不規則変動を仔細に見てゆくと、2011年3月の東日本大震災は、9月ころまで消費支出の減少となっており、2014年3月の駆け込み需要の反動は5月までで終わっていると見ることができます。
このことからも、3月の駆け込み需要の反動と4月の消費税アップによる買い控えが継続しているとの解釈が適切かどうかに疑義が生じます。
◇実収入の推移について(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)
表示した期間の実収入の傾向値(TC)は、平均的には517,700円±4,800円(±0.9%)の範囲での動きで、ほぼ横ばい状態で推移していると見ることができます。
それでも仔細に見ると若干の増減が有り、直近では、2013年7月の525,200円から2014年8月の515,600円円まで14ヶ月間減少傾向が続き、9月から増加傾向に転じています。
その間の前年同月比は、名目は2014年2月まで増加が続きその後は減少となっており、実質は2013年10月から減少が続いています。
ここでも、傾向値(TC)と前年同月比の動きとは異なっています。
さらに、比率の数値の大小と傾向値の数値の大きさとは関係のない動きとなっています。
(参考)実収入の季節変動及び不規則変動について
実収入の季節変動(S)は、12月が最大値(1.74)、6月(1.37)、7月(1.10)が多く、他の月はほぼ同一水準の周年変動となっています。
実収入の太宗は、勤め先収入が占めており、賞与の出る12月、6月、7月が多いのは当然といえば当然です。
実収入の不規則変動は、1.00±0.01の範囲での変動と、大きな変動はみられません。
これも、勤め先収入が、何らかの原因で大きく変動するということがないことから、当然といえば当然の動きとなっています。
以上見てきたように、家計調査報告のように前年同月比の動きで、消費支出や実収入(他の項目でも同じことですが)の推移を説明することは、その動向を見誤る場合も起こりうるということを理解した上で、同報告書を読むことが肝要かと思います。
データベースも増やしたことですし、今後は家計調査に限らず色々な統計データを読んでいこうと思っています。