相模野のトト

家計調査データを読む

最近のエンゲル係数上昇に大きく寄与している肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)の消費動向について(その2)

2016年09月28日 05時22分33秒 | 社会・経済

豚肉について、続けます。

◇豚肉の支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の支出金額の推移は、2006年1月の1,900円/月から2008年7月の2,150円/月まで増加した後、2012年6月の1,950円/月までは減少傾向で推移しています。
その後は、2012年7月の1,950円/月から2015年8月の2,500円/月まで急増した後、2016年7月の2,430円/までは若干の減少となっています。


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

2012年8月から2016年7月までの推移は、1,960円/月から2,430円/月まで年率換算で5.70%の増加傾向での推移となっています。

◇豚肉の実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の実購入頻度の推移は、2006年1月の4.9回/月から2015年7月の5.7回/月まで、期間中若干の増減は有るもの増加傾向での推移となっています。
その後は、2016年7月の5.5回/月まで減少傾向となっています。



この購入頻度は、週に1,2回の購入頻度に相当します。

◇豚肉の購入1回当り購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の購入1回当りの購入数量は、2006年1月の290g/回から2013年7月の310g/回まで緩やかな増加傾向で推移した後、2014年12月の290g/回まで減少し、その後は2016年7月の310g/回まで回復しています。



2013年8月から2014年12月までの減少は、後述の購入単価の急騰によるものと考えられます。

◇豚肉の購入1回当り支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の購入1回当りの支出金額の推移は、2006年1月の390円/回から2012年9月の380円/回までは、平均的には390円/回±6円/回とほぼ横ばい状態での推移となっています。
その後、10月の380円/回から2016年7月の440円/回までは急増状態となっています。



2012年8月から2016年7月までの推移は、380円/回から440円/回まで年率換算で4.19%の増加傾向での推移となっています。

◇豚肉の購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の購入単価の推移は、2006月の134円/100gから2008年9月の140円/100gまで上昇した後、2012年8月の126円/100gまで値下がっています。
その後は、9月の126円/100gから2015年2月の150円/100gまで急騰した後、2016年7月の145円/100gまではやや値下がり傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年7月までの推移は、126円/100gから145円/100gまで年率換算で3.66%の値上がり傾向での推移となっています。
この購入単価の値上がりが、支出金額増加の原因となっていますが、豚肉の生産量や卸売価格、小売価格の統計等を見てみないと、単価の上昇の原因は分かりません。

◇豚肉の購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における豚肉の購入世帯割合の推移は、2006年1月の92.1%から2016年7月の93.7%まで、期間中小刻みな増減を繰り返しながら、緩やかな増加傾向での推移となっています。
2011年12月から2013年1月の間にやや大きく減少していますが、持ち合わせている情報では、何が原因となっているかよくわかりません。



購入世帯割合が90%以上と、豚肉は家庭ではよく食されている食品の一つと言えます。


最近のエンゲル係数上昇に大きく寄与している肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)の消費動向について

2016年09月24日 06時45分33秒 | 社会・経済

先に、エンゲル係数上昇の原因となった食料への支出金額の推移を食料を構成する項目(品目)別に見てき、項目別では、寄与の割合で見て行くと、肉類(20.3%)、外食(20.3%)、調理食品(16.9%)、野菜・海藻(11.9%)および菓子類(10.2%)で約8割を占めていることを報告しました。
そこで、大きく上昇に寄与している肉類について、その主要品目である牛肉、豚肉および鶏肉の最近の消費の動向を見て行きたいと思います。
なお、肉類以外で同じく上昇に大きく寄与している外食および調理食品については、個別品目が多岐にわたり、また、個々には支出金額等が少額となってしまうことと、消費の動向を知る指標の「購入数量」および「平均価格(購入単価)」の項目が無いことから、省略ことといたしました。
分析に用いたデータは、総務省統計局の家計調査結果(各月)の2006年1月から2016年7月までの牛肉、豚肉、および鶏肉の100世帯当たりの購入頻度、支出金額、購入数量、平均価格および10,000世帯当たりの購入世帯数の数値です。
この100世帯当たりの購入頻度を10,000世帯の購入頻度と置き換えて、この値を10,000世帯当たりの購入世帯数で除せば、実際に購入した世帯のみの購入頻度(実購入頻度)を算出することができます。
したがって、この1世帯1ヶ月当たりの実購入頻度で、支出金額および購入数量を除せば、それぞれの購入1回当りの支出金額および購入数量となります。
また、購入単価は、実際に購入した世帯のみの購入1回当りの支出金額を購入1回当りの購入数量で除しても、公表されている平均価格と同じなります。
一方、10,000世帯当たりの購入世帯数は、文字通り10,000世帯の内、何世帯がその項目のものを購入したかを表しており、百分比に置き換えることもできます。
今回の分析は、より具体的なイメージが沸くように、「支出金額」と「実購入頻度」「購入1回当りの購入数量」「購入1回当りの支出金額」「購入単価」および「購入世帯割合」の数値を用いて、米国センサス局の季節調整法X-13Arima-Seatsを利用して行っています。
なお、報告は、「牛肉」「豚肉」および「鶏肉」の3回に分けて行います。

◇牛肉の支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における牛肉の支出金額の推移は、2006年1月の1,700円/月から2012年9月の1,500円/月へと減少傾向で推移しています。
その後は、増加傾向となり2016年7月の1,800円/月まで増加しています。



エンゲル係数の上昇の原因となった食料への支出金額が急増した2012年8月から2016年7月までの推移は、1,500円/月から1,800円/月まで年率換算で5.25%増加傾向の推移となっています。
なお、この期間のエンゲル係数の上昇は年率換算で2.76%、食料への支出金額の増加は年率換算で2.37%、ちなみに消費支出は年率換算で-0.38%の減少となっています。

◇牛肉の実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における実購入頻度の推移は、2006年1月の2.75回/月から2012年3月の2.64回/月へと減少傾向で推移し、その後の2016年7月までの期間は平均的に2.68回/月±0.02回/月と若干増減はあるものの、横ばい状態での推移となっています。



実際に牛肉を購入する世帯では、10日に1回弱程度の頻度で牛肉を購入していることを意味しています。

◇牛肉の購入1回当りの購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における牛肉の購入1回当りの購入数量の推移は、2006年1月の206g/回から2011年10月の220g/回まで緩やかな増加傾向で推移し、その後は2016年7月の198g/回までは減少傾向での推移となっています。



2011年10月からの減少傾向は、3月の東日本大震災とその後の福島第一原発事故の影響で、牛の飼料となる稲わら等を介して牛肉から放射能が検出されたため、牛肉が避けられたことと購入単価の上昇により、減少したものと思われます。

◇牛肉の購入1回当りの支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における牛肉の購入1回当りの支出金額の推移は、2006年1月の630円/回から2012年9月の559円/回までは穏やかな減少傾向で推移し、その後は2016年7月の683円/回までは増加傾向での推移となっています。




2012年8月から2016年7月までの推移は、559円/回から683円/月まで年率換算で5.24%増加傾向の推移となっています。
購入数量が減少で推移しているのも関わらず、支出金額が増加で推移しているのは、次の購入単価に原因があります。


◇牛肉の購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における牛肉の購入単価の推移は、2006年1月の303円/100gから2012年3月の263円/100gまでは横ばいから値下がり傾向で推移し、その後は2016年7月の348円/100gまでは増加傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年7月までの推移は、268円/100gから348円/100gまで年率換算で6.85%増加傾向の推移となっています。
牛肉の生産量、流通量、卸売価格、小売価格等の供給側の統計等を確認する必要がありますが、生産量減少による卸売価格、小売価格の上昇が原因と思われます。

◇牛肉の購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について


分析期間における牛肉の購入世帯割合の推移は、2006年1月の67.0%から2011年6月の67.5%まで、平均的には67.0%±0.4%とほぼ横ばいで推移し、その後は2016年7月の64.0%まで減少傾向で推移しています。



2011年7月からの減少をオリジナルの値で見ると、7月の対前年同月比は-4.9%、8月-8.5%、9月-6.9%、10月-5.8%、11月-3.1%と急激な減少となっています。
これは、先に説明した3月に発生した東日本大震災によるその後の福島第一原発事故の影響と、その後は購入単価の上昇により購入を控える世帯が増えているものと思われます。


二人以上の世帯と勤労者世帯の違いについて(エンゲル係数を例として)

2016年09月14日 09時38分48秒 | 社会・経済

家計調査で毎月公表される調査結果については、主として「二人以上の世帯」および「勤労者世帯」の数値が掲載されています。
このブログでは、収入を構成する項目が分かることから、主として「勤労者世帯」の数値を用いていますが、メディア等で使われるのは主として「二人以上の世帯」の数値が用いられています。
そこで、これら二つの数値がどの程度異なっているのか、エンゲル係数とその構成項目の推移を用いて比較してみました。

家計調査における世帯区分は次の通りとなっています。

 
なお、総務省統計局のホームページの用語の解説には、次のような説明が掲載されています。

「勤労者世帯」とは、世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯をいう。ただし、世帯主が社長、取締役、理事など会社団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」とする

「勤労者以外の世帯」とは、勤労者世帯以外の全ての世帯をいう。「個人営業世帯」には世帯主が商人、職人、個人経営者、農林漁業従事者の世帯が分類され、「その他の世帯」には世帯主が法人経営者、自由業者、無職などの世帯が分類される

また、調査結果の公表については、総世帯は四半期ごとに調査最終月の翌々月中旬公表、単身世帯と同時公表、二人以上の世帯は調査月の翌月末公表、単身世帯は四半期ごとに調査最終月の翌々月中旬公表、総世帯と同時公表となっています。

したがって、速報的に家計調査の結果を分析できるのは、二人以上の世帯(うち、勤労者世帯を含む)の数値(データ)のみです。

勤労者世帯のエンゲル係数とその構成項目(消費支出、食料への支出金額)の推移は、8月28日のブログを参照してください。

◇エンゲル係数(季節調整済)の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるエンゲル係数の推移は、2006年1月の22.9%から2013年10月の23.5%までは穏やかな増加傾向で推移した後、2013年11月の23.6%から2016年6月の25.9%へと急上昇しています。



○二人以上の世帯および勤労者世帯のエンゲル係数(傾向値)の推移について

二人以上の世帯のエンゲル係数と勤労者世帯のエンゲル係数を、同一グラフにプロットしてみました。
2006年1月の二人以上の世帯のエンゲル係数は22.9%、勤労者世帯は21.4%で格差は1.5ポイント、2016年6月では25.9%、24.2%で格差は1.7ポイントとなっています。



分析期間における二人以上の世帯のエンゲル係数は平均的には23.7%±0.8%、勤労者世帯のエンゲル係数は平均的には22.3%±0.7%と、ほぼ一定の格差でパラレルに推移しています。
格差は、1.4ポイント勤労者世帯の方が低く、若干余裕のある生活水準と思われます。

◇消費支出(季節調整済)の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における消費支出の推移は、2006年1月の296,000円/月から2007年11月の299,000円/月まで増加傾向で推移した後、12月の299,000円/月から2016年6月の283,000円/月までは、期間中若干の増減を含み減少傾向での推移となっています。



なお、分析期間における消費支出の推移を季節調整済(不規則変動要因が含まれる)の値で見ると、2011年3月の東日本大震災発生に伴い大きく減少し、減少が半年程度続いたこと、2014年3月には消費税率アップ(5%→8%)に伴い駆け込み需要が発生し大きく増加し、4、5月はその反動で大きく減少しているのが読み取れると思います。

○二人以上の世帯および勤労者世帯の消費支出(傾向値)の推移について

2006年1月の二人以上の世帯の消費支出は296,000円/月、勤労者世帯は323,000円/月で格差は27,000円、2016年6月では283,000円/月、311,000円/月で格差は28,000円となっています。



分析期間における二人以上の世帯の消費支出は平均的には291,000円/月±4,500円/月、勤労者世帯の消費支出は平均的には318,000円/月±4,400円/月と、勤労者世帯は短期間での小幅な増減が含まれるものの、ほぼ一定の格差でパラレルに推移しています。

◇食料への支出金額(季節調整済)の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における食料への支出金額の推移は、2006年1月の67,800円/月から2008年10月の69,000円/月まで増加傾向で推移した後、期間中若干の増減を繰り返し、2011年11月の67,300円/月まで減少傾向で推移しています。
2011年12月の67,500円/月から2016年6月の73,100円/月までは、エンゲル係数上昇の原因となった急激な支出増となっています。



○二人以上の世帯および勤労者世帯の食料への支出金額(傾向値)の推移について

2006年1月の二人以上の世帯の食料への支出金額は67,800円/月、勤労者世帯は69,300円/月で格差は1,500円、2016年6月では73,100円/月、74,200円/月で格差は1,100円となっています。



分析期間における二人以上の世帯の食料への支出金額は平均的には68,800円/月±1,700円/月、勤労者世帯の食料への支出金額は平均的には70,800円/月±1,800円/月と、ほぼ一定の格差でパラレルに推移しています。



勤労者世帯の食料への支出金額の推移について(その2)

2016年09月03日 19時34分22秒 | 社会・経済

前回に続き、食料の残りの6品目について、支出金額の推移を見て行くこととします。

◇油脂・調味料への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における油脂・調味料への支出金額の推移は、2006年1月の2,900円/月から2009年3月の3,300円/月までは増加傾向で推移し、その後は2013年10月の3,200円/月までは平均的には3,200円/月±30円/月でほぼ横ばい傾向で推移しています。
2013年11月の3,200円/月から2016年6月の3,400円/月までは再び増加傾向での推移となっています。



食料への支出金額が急増となった2012年8月から2016年6月までの推移は、3,200円/月から3,400円/月まで増加傾向での推移となっています。
油脂・調味料への支出金額は、食料への支出金額の4.5%を占め12項目中11位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇にわずかながら寄与しているものと思われます。

◇菓子類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における菓子類への支出金額の推移は、2006年1月の5,100円/月から2009年5月の5,700円/月まで増加傾向で推移し、その後は2012年5月の5,400円/月までは減少傾向での推移となっています。
2012年6月の5,400円/月から2016年6月の6,000円/月までは急増状態の推移となっています。



食料への支出金額が急増となった2012年8月から2016年6月までの推移は、5,400円/月から6,000円/月まで急増傾向での推移となっています。
菓子類への支出金額は、食料への支出金額の7.8%を占め12項目中7位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇に大いに寄与しているものと思われます。

◇調理食品への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における調理食品への支出金額の推移は、2006年1月の8,700円/月から2013年12月の8,500円/月まで、期間中平均的には8,400円/月±190円/月と若干の増減は有るものの横ばいで推移しています。
その後は、2014年1月の8,500円/月から2016年6月の9,600円/月へと急増状態での推移となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、8,600円/月から9,600円/月まで急増傾向での推移となっています。
調理食品への支出金額は、食料への支出金額の12.1%を占め12項目中2位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇に大いに寄与しているものと思われます。

◇飲料への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における飲料への支出金額の推移は、2006年1月の3,600円/月から2016年6月の4,600円まで、期間中若干の増減が含まれるもののほぼ一貫した増加傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、4,200円/月から4,600円/月まで増加傾向での推移となっています。
飲料への支出金額は、食料への支出金額の5.7%を占め12項目中8位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇に寄与しているものと思われます。

◇酒類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における酒類への支出金額の推移は、2006年1月の3,100円/月から2016年6月の3,000円/月へと、期間中平均的には3,100円/月±90円/月で若干の増減は有るものの横ばいから非常に緩やかな減少傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、3,000円/月から3,000円/月まで横ばいでの推移となっています。
酒類への支出金額は、食料への支出金額の4.5%を占め12項目中11位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇に寄与していないものと思われます。

◇外食への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における外食への支出金額の推移は、2006年1月の13,700円/月から2016年6月の15,400円/月まで、期間中若干の増減が含まれるもののほぼ一貫して増加傾向での推移となっています。
既にお気づきと思いますが、前回の6品目と今回の6品目のうち、外食だけがy軸のスケールが500円刻みでその他は100円刻みとなっています。
11品目については、y軸の間隔が広いか狭いかで金額の変動幅が大きいか少ないかがわかるように仕組んでありました。
例えば、果物への支出金額のy軸スケールは1,900円から2,400円まで5段となっていますが、肉類への支出金額のy軸スケールは6,100円から7,800円まで17段となっています。
したがって、肉類への支出金額の方が果物への支出金額に比べて大きく変動していることが、一目で理解できるものと思われます。



2012年8月から2016年6月までの推移は、14,200円/月から15,400円/月まで増加傾向で推移しています。
外食への支出金額は、食料への支出金額の20.4%を占め12項目中1位にあり、上述の推移からみてエンゲル係数の上昇に大きく寄与しているものと思われます。

◎まとめ

エンゲル係数上昇の原因となった食料への支出金額の推移を食料を構成する項目(品目)別に見てきました。
項目別では、寄与の割合で見て行くと、肉類(20.3%)、外食(20.3%)、調理食品(16.9%)、野菜・海藻(11.9%)および菓子類(10.2%)で約8割を占めています。
その他、飲料、乳卵類、油脂・調味料もわずかながら寄与し、穀類、魚介類、酒類および果物は、ほとんど寄与していないものと思われます。



勤労者世帯の食料への支出金額の推移について(その1)

2016年09月01日 15時24分55秒 | 社会・経済

前回はエンゲル係数の推移とエンゲル係数の指標となっている食料への支出金額の推移を見てきました。
分析を行った2006年1月から2016年6月までの期間における食料への支出金額の推移は、2006年1月の69,300円/月から2008年11月の71,100円/月までは増加傾向で推移し、その後2012年7月の68,700円/月まで減少傾向の推移となり、2012年8月の68,900円/月から2016年6月の74,200円/月までは急騰状態になっていることを見てきました。

○食料への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について(再掲)

(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

そこで、収支項目分類表にしたがって食料を構成する品目について、同期間における支出金額を米国センサス局の季節調整法X-13Arima-Seatsを用いて分析し、その推移を見て行くこととし、併せて食料への支出金額急騰へどの品目が寄与しているかを明らかにしたいと思います。
なお、食料を構成する品目は12品目あることから、6品目ずつに2回に分けて報告いたします。

◇穀類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における穀類への支出金額の推移は、2006年1月の6,300円/月から2009年4月の6,800円/月まで増加し、その後2011年4月の6,300円/月まで減少しています。
2011年5月の6,300円/月から2013年5月の6,700円/月まで増加し、6月の6,700円/月から12月の6,200円/月まで急減していますが、理由はよくわかりません。
(家計調査の集計世帯が変更になった?)
2014年1月の6,200円/月から2016年6月の6,500円/月までは、再び増加傾向での推移となっています。



食料への支出金額が急増となった2012年8月から2016年6月までの推移は、2013年7月の6,700円/月から12月の6,200円/月までの急減が含まれ、増加、急減、再び増加という変化を伴って6,500円/月から6,500円/月までと、同じ水準に戻っています。
穀類への支出金額は、食料への支出金額の9.1%を占め12項目中5位にありますが、上述の推移からみて、食料への支出金額増、エンゲル係数の急増には寄与していないと思われます。

◇魚介類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

期間中における魚介類への支出金額の推移は、2006年1月の6,300円/月から2011年5月の5,000円/月まで減少しています。
その後は、2011年6月の5,000円/月から2016年6月の5,100円/月まで平均的には5,100円/月±70円/月とほぼ横ばい状態での推移となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、5,000円/月から5,100円/月へとほぼ横ばいでの推移となっています。
魚介類への支出金額は、食料への支出金額の7.8%を占め12項目中6位にありますが、エンゲル係数の急増には寄与していないと思われます。

◇肉類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における肉類への支出金額の推移は、2006年1月の6,200円/月から2008年7月の6,700円/月まで増加傾向で推移し、その後は2012年6月の6,300円/月まで減少傾向での推移となっています。
2012年7月の6,300円/月から2016年6月の7,500円/月までは急増となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、6,300円/月から7,500円/月へと急増状態での推移となっています。
肉類への支出金額は、食料への支出金額の6.9%を占め12項目中4位にあり、エンゲル係数の急増に大いに寄与しているものと思われます。

◇乳卵類への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における乳卵類への支出金額の推移は、2006年1月の3,300円/月から2011年4月の3,200円/月までは期間中若干の増減が含まれるものの、横ばいからやや減少傾向で推移しています。
その後、2011年5月の3,200円/月から2016年6月の3,700円/月までは増加傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年6月までの推移は、3,300円/月から3,700円/月へと一貫した増加傾向での推移となっています。
乳卵類への支出金額は、食料への支出金額の4.8%を占め12項目中9位にあり、エンゲル係数の増加に寄与しているものと思われます。

◇野菜・海藻への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における野菜・海藻への支出金額の推移は、2006年1月の7,800円/月から2016年6月の7,800円/月へと、期間中平均的には7,600円/月±220円/月と、下図のグラフではy軸の目盛りの関係で大きく増減を繰り返しているように見えますが、2006年1月から2012年9月の7,000円/月までの減少傾向での推移と2012年10月の7,100円/月から2016年6月までの増加傾向での推移と見ることもできます。



2012年8月から2016年6月までの推移は、7,100円/月から7,800円/月へと増加傾向での推移となっています。
野菜・海藻への支出金額は、食料への支出金額の10.7%を占め12項目中3位にあり、エンゲル係数の増加に寄与しているものと思われます。

◇果物への支出金額(季節調整済)の推移(勤労者世帯)について

分析期間における果物への支出金額の推移は、2006年1月の2,100円/月から2016年6月の2,100円/月へと、期間中増減や横ばいでの推移はあるもの平均的には2,100円/月±90円で推移しています。
細かく見ると、2006年1月から2009年7月の間は2,200円/月±50円/月、2009年8月から2014年11月の間は2,000円/月±30円/月、2014年12月から2016年6月の間は2,100円/月±40円/月という、高値で推移した時期、安値で推移した時期という分け方もできるかと思いますが、総じて言へば横ばいでの推移と言えると思います。



2012年8月から2016年6月までの推移は、2,000円/月から2,100円/月へと微増傾向での推移となっています。
果物への支出金額は、食料への支出金額の3.0%を占め12項目中12位にあり、エンゲル係数の増加にはほとんど寄与していないものと思われます。