家計調査における平成24年平均速報結果の概要の中で最近の家計消費の特徴(二人以上の世帯)で、注目された商品の動きの中で取り上げられている商品は、米、ヨーグルト、果実・野菜ジュース、炭酸飲料、うなぎの蒲焼、電気代、外国パック旅行、耐久財では、自動車、テレビ、電気冷蔵庫、及びエアコンディショナーである。
米及び自動車については既に取り上げたので、残りの中から特に注目される動きとなっているヨーグルト、電気代及びテレビについての動向を分析してみました。
結果の概要との重複を避ける意味でも、勤労者世帯のデータについて、米国センサス局の季節調整法X-13を用いて行いました。
◇ヨーグルト支出金額の推移
(グラフをクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。)
2012年のヨーグルト支出金額は、前年に比べて17.9%の大幅な増加となっています。
収入が伸び悩み支出が抑えられる傾向の中にあっては、驚異的な伸びとなっておりますが、原因は2012年1月23日のNHK朝の番組「イチおし」の中で、「新発見続々 すごいぞ!ヨーグルトの力」で乳酸菌の機能性食品としての効能が紹介されたことによるものと思われます。
同じ様なことが2002年に生じており、この時はヨーグルトの持つ「花粉症」の症状緩和効果がマスコミで紹介されました。
マスメディアの持つ力が示された格好です。
◇電気代支出金額の推移
2012年の電気代支出金額は、前年に比べ6.2%増加しました。
前年の△2.1%、前前年の2.1%に比べ大きな増加を示し、特に後半は増加率が大きくなっています。
大震災後の原発事故、それに伴う原発の稼働停止、火力発電へのシフト、コスト高に由る電力料金の値上げが影響しているものと思われます。
なお、電気代支払金額は、「支払金額=電力使用量?電力平均単価」で決まることから、次にこれらのこともみてみることとします。
◇電力使用量の推移
電力の使用量は、2月がピークで、その後6,7月まで次第に減ってゆき、8,9月に一旦上昇し、10、11月に減少し、12、1,2月に上昇するという明確な季節性を有しています。
2012年の電力使用量は、前年に比べ1.8%増加しましたが、前年は原発事故による節電の影響で△4.1%だったことを考えると、節電意識が若干緩んだものと考えられます。
◇電力平均単価の推移
2012年の電力平均単価は、前年に比べ4.4%の値上がりとなっています。
前年の2.5%、前年の△3.8%に比べ大幅な値上がりとなっています。
家計調査では、2005年以前は電気代の支出金額のみ公表されていましたが、現在は使用料、単価も公表されわかりよくなってきています。
その影響かどうかわよくわかりませんが、グラフ化すると2009年を境に電力の単価が大きく変化しており、最近は7月~11月(ピークは9月)が高く、12月~6月(5月がボトム)が安いという季節性を有しています。
電力使用量の多い冬の季節に安くなっていますが、今の電気代の仕組みからは高くなりそうですがそうはなっていません。
なぜこのようになるのか、もう少し勉強してから解説したいと思います。
◇テレビ支出金額の推移
2012年のデレビ支出金額は、前年に比べ△68.3%と大きく減少しましたが、前年の2011年も△56.5%の大幅減少を示し、2年連続の大幅減少となっています。
その前前年、前年の2009年の28.5%増、2010年の39.2%増と比べると、テレビは全く売れなくなったということがよく分かります。
シャープやパナソニックが経営難に陥っているという話も理解できる現象です。
2011年7月24日に地上波デジタルへの切り替えを前に、受信機の買い替えが行われたことと、買い替え後は5,6年は買わなくなるどろうという予想ができたことなのに、売れている時は「いけいけどんどん」となるため、経営の難しいところです。
◇テレビ購入台数の推移
これを購入台数で見ると、2009年は前年に比べ52.7%増、2010年は79.8%増と大幅に増加し、2011年は△37.7%、2012年は△64.4%と大きく減少し、殆ど売れない状況が続きそうです。
◇テレビ平均購入単価の推移
テレビの購入単価は、地デジ移行への買い替えと大型液晶テレビ人気が重なり、2005年12月まで上昇を続け、その後2008年6月までは14万円前後推移し(ピークは2008年6月の15万2千円)、その後は低価格競争の激化も有り2011年11月の5万6千円まで値下がっています。
売れなくなったことも有り、その後は6万円前後の推移となっています。
家計調査における消費支出が若干増加したことから、総務省の家計調査の結果の公表を受けて、表記のような報道がなされています。
本当に財布のひもが緩んだのでしょうか?
勤労者世帯の消費支出をカテゴリー別で見てみました。
◇カテゴリー別消費支出
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下同じ。)
総務省の家計調査結果の概要では、2012年の勤労者世帯の消費支出は1.8%増加しておりますが、これをカテゴリー別で見ると、交通・通信が10.7%、保健医療が8.0%、光熱・水道が3.7%、被服及び履物が3.7%、食料が1.6%、家具・家事用品が0.9%増加し、一方、住戸が5.0%、教育が2.8%、教養娯楽が2.2%、その他の消費支出が0.3%減少しています。
このことから見ても、財布のひもが緩むような状況では無さそうです。
なお、グラフからもわかるように、バブルが崩壊した1991年以降で支出の増え続けているのは交通・通信、光熱・水道及び保健医療で、支出が減っているのは「その他の消費支出(こずかい、交際費、冠婚葬祭費等)」、食料、被服及び履物であり、収入が減少傾向にある中で大幅に減少させており、この部門での節約が進んでいることを表しているものと思われます。
「衣食足りて……」のとおり、収入が増えないことには財布のひもが緩む状況は生まれそうもありません。
次に、支出が10.7%と大幅に伸びた勤労者世帯の交通・通信について、その内容を自動車購入、ガソリン及び移動電話通信料を時系列分析することとし、米国センサス局の季節調整法X-13で行なってみました。
◇自動車購入支出金額
勤労者世帯の自動車購入支出金額は、前年比で54.3%の大幅な増加を示し、購入台数も33.3%増加しています。
総務省の調査結果の概要でも触れられている通り、前年が大震災の影響で供給台数が制限されたこと、前年のエコカー補助金で前倒し的に2010年に購入が進んだ反動で、2011年の支出金額及び購入台数が大幅に減ったことによるものであり、さらに2012年に新たなエコカー補助金が導入されたことが重なって、大幅な増加となっております。
エコカー補助金は予算の関係で9月に打ち切りとなったこともあり、8月以降減少傾向に変わってきています。
◇ガソリン支出金額
ガソリンの支出金額は、購入数量と単価(円/リットル)で決まりますが、季節的には8月と12月に多いという明確な季節性を有しています。
支出金額は前年より1.4%増加していますが、購入数量は0.8%にとどまっています。
単価は9月までは前年と同水準でしたが、それ以降値上がり傾向で推移したことから0.8%高くなっています。
2012年の特徴として、例年7,8月に支出金額が増える傾向が見られないことです。
猛暑が影響したものと思われますが、他のデーター等との照会が必要です。
安倍政権になった以降円高が加速し、単価の値上がり傾向が続いていますが、今後の家計の推移を見守る上での主要なアイテムの一つと言えそうです。
◇移動電話通信料
移動電話(携帯電話)の通信料は、固定電話から携帯電話へ移行しながら、いつどこでも利用できる利便性から増加の一途をたどっています。
最近は、スマートホンの普及などから、いつどこでも情報が入手できることから、ますます通信料がかさむ状況が読み取れます。
2012年の移動電話通信料は前年に比べ3.1%の増加となっています。
総務省が2月19日に公表した家計調査で、「消費支出が前年に比べわずかに増加した」との発表うけて、20日付けの朝日新聞は表記のような記事を掲載しています。
本当に財布のひもはわずかに緩んだのでしょうか?
このことについて、家計調査の中で収入の明細がわかる勤労者世帯(二人以上の世帯)の2000年以降の月別データを、米国センサス局の季節調整法X-13を用いて分析してみました。
以下は、その結果です。
◇勤労者世帯の消費支出の推移
(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下同じ。)
勤労者世帯(二人以上の世帯)の消費支出は前年に比べて1.8%増加しています。
その意味では、前年に比べて「財布のひもがわずかに緩くなった」との表現は適切なように思われますが、上のグラフの通り「傾向値」は若干の増減はあるものの、2000年以降ほぼ右肩下がりで推移している中では、財布のひもが緩むほどではなかったものと思われます。
次に、もう少しこの季節調整法(X-13)で得られる分析結果から様子を見てみましょう。
◇勤労者世帯の消費支出の季節要素、不規則要素
上のグラフから、なぜ2012年の消費支出が若干増加したかがわかります。
3.11の大震災とその後の原発事故の影響でしょう、2011年3月以降の不規則要素が他に比べて大きくマイナス要因として働いています。
大震災にあって、買い控え傾向が進んだことと電力等の節約志向が進んだことによるものと思われます。
したがって、2011年の消費支出の減少がそれ以前の傾向より大きく減少したことにより、その反動で2012年の消費支出の回復が顕著に見えたものと思われます。
対前年との数値と比べてのみ判断すると、「財布のひもが緩む」というような表現が当を得ているように思われますが、適切な表現でしょうか?
もう一つの要因として、消費支出の増減を大きく左右する、収入はどのような推移となっていたのでしょうか。
◇勤労者世帯の世帯主収入の推移
2012年の世帯主収入は前年に比べ0.2%の微増でした。
2000年以降の世帯主の収入は、2006年半ばから2009年半ばまで若干増加しましたが、傾向としては右肩下がりの減少傾向が続いています。
勤労者世帯の収入の太宗を占める世帯主の収入が増えないことが、デフレからの脱却を困難にしているものと思われます。
◇勤労者世帯の配偶者収入の推移
一方、配偶者の収入は、年によって増減はありますが、55,000円±5,000円の幅で横ばい状態で推移しています。
若干様相が変わってきたのは、2011年3月以降、52,500円を底として2012年12月の62,000円まで増加傾向なっております。
2012年の配偶者の収入は前年に比べ11.5%の大幅に増加しましたが、家計(経常収入)に占める割合が11.6%とそれはど大きくないことも有り、経常収入は前年に比べ1.7%の増加となっております。
3.11の大震災以降、何かが変わってきているのかもしてませんが、もう少し推移を見てから判断したいと思います。