相模野のトト

家計調査データを読む

都道府県庁所在市別「りんご、みかん、バナナ」の消費(購入数量、支出金額)について(その2)

2016年10月29日 15時57分19秒 | 社会・経済

みかんの消費について続けます。
収支項目分類表には、「みかん」は「温州みかん」一種類となっています。
温州みかんには、収穫時期によって「極早生」「早生」「中生」「晩生」および「ハウスみかん」があり、6月から3月頃に出回りますが、6月から9月に出回っているのは「ハウスみかん」です。
なお、「有田みかん」「愛媛みかん」「三ケ日みかん」という名前で販売されていますが、いわゆるブランド名で全ては「温州みかん」です。

◇都道府県庁所在市別「みかん」の消費(購入数量、支出金額)について

順位    都市名      数量(g)  金額(円)  購入単価(円/100g )
 1位    静岡市      18,648      5,679       30.45
 2位    松山市      18,104      5,433       30.01
 3位    長崎市      17,712      3,340       18.86
 4位    大分市      17,542      4,432       25.27
 5位    和歌山市   15,384      6,204       40.33
  …        …             …             …             …
43位    岡山市       9,884      3,437       34.77
44位    神戸市       9,521      4,141       43.49
45位    大阪市       8,816      3,609       40.94
46位    那覇市       8,084      3,272       40.48
47位    岐阜市       7,916      3,516       44.42
          平   均      12,271      4,342       36.08

都道府県庁所在市別「みかん」の購入数量1位は静岡市の18,648g、2位は松山市の18,104g、3位は長崎市の17,712gとなっています。
支出金額1位は和歌山市の6,204円、2位は静岡市の5,679円、3位は松山市の5,433円となっています。
購入数量1位の静岡市の購入数量は平均購入数量の約1.5倍、最下位の岐阜市の約2.4倍となっています。
りんごほどには都市間の格差は大きくありません。


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

みかんの収穫量のうち、1位は和歌山県が19.2%を占め、2位は愛媛県の15.9%を占め、3位は静岡県の13.4%を占め、上位3県で全体の約半分を占めています。
ちなみに、長崎県は6.8%で熊本県に次いで5位となっています。
りんごと同様に、主産地での消費が多くなっています。

◇みかんの実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるみかんの実購入頻度の推移は、2006年1月の2.0回/月から2016年8月の2.0回/月とほぼ横ばい状態での推移となっています。
みかんは、以下に述べるように季節性の強い果物で、平均的には月2回程度ですが、12月の多い時で3回弱/月、少ない5月で1.3回程度となっています。



購入頻度がほぼ一定で推移していることは、みかんの消費が家計に完全に定着していて、需要の増加が期待できないことを表しているものと思われます。

◇みかんの購入1回当り購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるみかんの購入1回当り購入数量の推移は、2006年1月の600g/回から2016年8月の320gへとほぼ一貫した減少傾向となっています。



購入数量が一貫して減少傾向にあることは、少子高齢化に伴って、世帯単位での購入数量が減少していることを表しているものと思われます。

○主要都市のみかんの卸売数量について

農林水産省の「青果物卸売市場調査報告」には、全国、主要都市および卸売市場別の青果物の卸売数量、価額(総額)、価格(単価)が公表されていますが、全国の数値は推計値ですので、主要都市の数値を見てみます。
先に説明したように、6月から翌年の3月までが出回り時期で、10月から12月の間が最盛期となっています。



直近の5年(2010年~2014年)の平均で見ると、12月の卸売数量は148,856トン、6月は1,019トンとなっています。

○みかんの購入数量と購入単価の季節変動(二人以上の世帯)について


みかんの購入1回当りの購入数量の季節変動と購入単価の季節変動を対比してみると、下のグラフのように数量と単価が9月と3月で交差し、最盛期には価格が安く、端境期には価格が高いという関係が明らかだと思います。



季節変動は、購入数量は12月(3.6)をピークとし6月(0.1)をボトムとする、購入単価は7月(1.9)をピークとし11月(0.6)をボトムとする、それぞれ1年周期の変動となっています。
数量と単価が交差する時期では、9月と10月では、購入数量は10月が約4倍多いのですが、購入単価は約4割ほど下がり、3月と4月では4月に購入数量は3分の1に減少しますが購入単価はほとんど変わっていません。


◇みかんの購入1回当り支出金額の推移(二人以上の世帯)について


分析期間におけるみかんの購入1回当り支出金額の推移は、2006年1月の170円/回から2016年8月の140円/回へと緩やかな減少傾向で推移しています。



購入1回当りの支出金額は、購入数量と次の購入単価の結果によって決まる数値ですので、購入数量が減少傾向、購入単価が上昇傾向にあることから、購入単価の上昇の割合より購入数量の減少の割合が僅かに上回っていることから、結果として支出金額は緩やかな減少傾向となっています。

◇みかんの購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるみかんの購入単価の推移は、2006年1月の43円/100gから2016年8月の62円/100gへと期間中若干の増減が有るものの、緩やかな上昇傾向での推移となっています。



◇みかんの購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるみかんの購入世帯割合の推移は、2006年1月の33.9%から2016年8月の27.0%へと緩やかな減少傾向での推移となっています。

世帯当たりの購入頻度は横ばい状態で推移していますが、購入世帯割合は減少傾向となっています。
この状態も、少子高齢化に伴った現象ではないかと思われます。


都道府県庁所在市別「りんご、みかん、バナナ」の消費(購入数量、支出金額)について(その1)

2016年10月21日 10時25分59秒 | 社会・経済

都道府県庁所在市別「生鮮果物」の消費(購入数量、支出金額」を見てきましたが、2016年3月11日に総務省統計局から公表された、「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市および政令指定都市ランキング(平成25年(2013年)~平成27年(2015年)平均」には、生鮮果物としてりんご、みかんなど個別14品目の数値が掲載されています。
これら個別品目のうち、りんご、みかん、バナナについては最近の消費の推移についても見て行くこととします。
3品目を選んだ理由は、生鮮果物の購入数量に占める割合が、りんご16.4%、みかん15.2%、バナナ22.6%、また、支出金額に占める割合がりんご14.9%、みかん12.7%、バナナ12.7%と、3品目だけで購入数量で5割以上、支出金額で4割以上をしめる主要な生鮮果物と言えるためです。

◇バナナ、りんご、みかんの小売価格の推移(東京都区部)について

比較的長期(1964年以降)な統計がありましたので、約50年間のバナナ、りんご、みかんの小売価格の推移を比べてみました。

1964年のりんごの小売価格は11.1円/100g、みかんは15.9円/100g、バナナは22.8円/100gとなっており、バナナはりんごのほぼ2倍と比較的高額な果物でありました。
10年後の1974年のりんごの小売価格は20.8円/100g、みかんは19.9円/100g、バナナは17.7円/100gとなっており、ほぼ同じような小売価格となっているが、バナナが一番安くなっています。
20年後の1984年のりんごの小売価格は42.5円/100g、みかんは40.4円/100g、バナナは25.8円/100gとなっており、りんごとみかんはほぼ同じ小売価格ですが、バナナの1.6倍となっています。
30年後の1994年のりんごの小売価格は51.5円/100g、みかんは59.8円/100g、バナナは20.3円/100gとなっており、みかんが一番高くバナナの約3倍、りんごが約2.5倍となっています。
その後は、それぞれ横ばい状態が続き、50年後の2014年のりんごの小売価格は51.3円/100g、みかんは55.0円/100g、バナナは21.7円/100gとなっています。
りんごは50年前の約4.6倍、みかんは約3.5倍に上昇しましたが、バナナは5%ほど安くなっています。


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

◇都道府県庁所在市別「りんご」の消費(購入数量、支出金額)について

順位    都市名    数量(g)    金額(円)  購入単価(円/100g )
 1位    青森市     35,721        9,523       26.66
 2位    盛岡市     31,320      11,220       35.82
 3位    長野市     30,256      10,800       35.70
 4位    福島市     26,099        9,257       35.47
 5位    秋田市     22,534        7,770       34.48
  …        …            …               …            …
43位    鹿児島市   9,054        3,968       43.83
44位    大津市      8,920        4,196       47.04
45位    岡山市      8,830        3,643       41.26
46位    熊本市      8,523        3,385       39.72
47位    那覇市      7,734        4,026       52.06
          平   均     13,508       5,236        40.18



都道府県庁所在市別「りんご」の購入数量1位は青森市の35,721g、2位は盛岡市の31,320g、3位は長野市の30,256gとなっています。
支出金額1位は盛岡市の11,220円、2位は長野市の10,800円、3位は青森市の9,523円となっています。
購入数量1位の青森市の購入数量は平均購入数量の約2.6倍、最下位の那覇市の約4.6倍となっています。
購入数量の4位以下は、福島市、秋田市、山形市、前橋市、新潟市、仙台市の順となっており、購入数量は東北地方、信越地方および群馬県となっています。
りんごの収穫量(2013年)は660,700トンで、そのうち青森県が56.2%、長野県が20.8%、山形県が6.1%、岩手県が5.5%、福島県が3.6%を占めています。
このことから、収穫量の多い地域が購入数量も多くなっていることが分かります。
一方、購入量の少ないのは、沖縄・九州地方となっています。

◇りんごの実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるりんごの実購入頻度の推移は、2006年1月の2.3回/月から2016年8月の2.4回/月まで横ばいから緩やかな増加傾向での推移となっています。



1年の内でりんごの購入頻度の多い月は、10月、11月、1月から4月で、月に2回強となっています。

◇りんごの購入1回当り購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるりんごの購入1回当りの購入数量の推移は、2006年1月の460g/回から2016年8月の480g/回とほぼ横ばい状態での推移となっています。



りんごの1個当たりの平均重量は約300gですので、1回の購入量は1.5個から1.6個となり、実際は購入1回当り1個か2個と思われます。

◇りんごの購入1回当り支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるりんごの購入1回当り支出金額の推移は、2006年1月の180円/回から2016年8月の200円/回と緩やかな増加傾向となっています。



支出金額は、購入数量と次の購入単価の結果として決まるもので、家計の予算に応じて購入単価に見合った購入数量を決めて購入しているものと思われます。

◇りんごの購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるりんごの購入単価の推移は、2006年1月の39円/100gから2012年4月をピークとする一時的な高騰を含んで2016年8月の45円/100gへと、上昇傾向の推移となっています。

分析期間におけるりんごの平均購入単価は、41円/100g±4円/100gとなっていることから、1個当たりでは123円/個±12円/個となります。
購入数量が横ばいで推移する中で支出金額が増加しているのは、購入単価が上昇していることが主因と思われます。

◇りんごの購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について

分析期間におけるりんごの購入世帯割合の推移は、2006年1月の43%から2016年8月の42%へと、ほぼ横ばい状態の推移となっています。



長期間にわたって購入世帯割合が横ばい状態で推移していることは、「流行り」や「廃れ」が無いということで、需要が安定していることを表しているものと思われます。


生鮮果物の都道府県庁所在市別消費(購入数量、支出金額)と最近の消費の推移について

2016年10月16日 16時51分51秒 | 社会・経済

2016年3月11日に総務省統計局から、「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市および政令指定都市ランキング(平成25年(2013年)~平成27年(2015年)平均」が公表されました。
公表の目的は、どのような品目でどの程度の地域差があるのかを明らかにするために行われています。
例年、同調査の公表に合わせてこのブログでは、ビジュアル的に一目で地域差等が明らかになるよう、各都道府県庁所在市の購入数量及び支出金額から購入単価 (平均価格)を算出した上で、平均購入単価と各市の購入単価の差と、先の購入数量及び支出金額を一つのグラフ(3D効果付きバブルグラフ)上に表示してきました。
グラフは、X軸に購入数量、Y軸に支出金額とし、色付きのバブルは平均購入単価より高く、色無しのバブルは平均購入単価より安いことを表し、また、バブルの大きさは大きければ平均単価からの乖離が大きく、小さければ乖離が少ないことを表しています。
本年の公表分については、「穀類」「魚介類」「肉類」「乳卵類」「生鮮野菜」および「乾物・海藻」についての都道府県庁所在市別の消費(購入数量、支出金額)を既に見てきましたが、「果物」等の残りの品目についても見て行くこととします。
なお、作図の関係で政令指定都市は省略しました。

◇都道府県庁所在市別「生鮮果物」の消費(購入数量、支出金額)について

順位    都市名      数量(g)      金額(円)    購入単価(円/100g )
 1位    盛岡市      100,663     40,624     40.36
 2位    長野市        99,510     41,074     41.28
 3位    新潟市        98,215     39,933     40.66
 4位    秋田市        95,659     37,841     39.56
 5位    福島市        94,524     44,021     46.57
 …         …               …            …             …
43位    熊本市       68,579     26,774     39.04
44位    鹿児島市    68,259     28,148     41.24
45位    大阪市       67,995     29,502     43.39
46位    福岡市       65,118     27,924     42.88
47位    那覇市       60,080     29,704     49.44
           平均         81,078     34,914     43.19


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

生鮮果物にはりんごやみかんなどの国内産の果物の他に、グレープフルーツ、オレンジなどの輸入果物も含まれています。
したがって、色や形が異なっているほか、味や購入単価なども異なるものが「生鮮果物」として一括されていることに、留意が必要です。

生鮮果物の購入数量は、東北、信越地方で多く、また同地域はりんごなどの果物の主産地でもあります。
また、九州・沖縄地方では少ない傾向にあります。
盛岡市の購入数量は平均の1.24倍、最下位の那覇市の1.68倍となっています。
なお、特徴的なものとして、山形市と松山市を比べると、購入数量は88,392gと89,742g、支出金額は44,500円と33,058円、購入単価は50.34円/100gと36.84円/100gとなっていて、購入数量はほぼ同じですが、支出金額、購入単価が大きく異なっています。
山形市のある山形県で収穫量の多い果物は、りんご(全国第3位)、西洋梨(1位)、さくらんぼ(1位)、もも(5位)およびかき(9位)となっており、一方、松山市のある愛媛県で収穫量の多い果物は、いよかん(1位)、ポンカン(1位)、カワチバンカン(1位)、キウイフルーツ(1位)およびキヨミ(1位)とほとんどがかんきつ類となっています。
同じ生鮮果物と言っても、地方、地域で食べられている果物は、大きく異なっています。

◇最近の生鮮果物の消費の推移について

総務省統計局の家計調査支出データ項目(商品)の多くには、100世帯当たり購入頻度、支出金額、購入数量、平均価格および10,000世帯当たりの購入世帯数が掲載されています。
 100世帯当たり購入頻度は、100世帯が1ヶ月当たり何回購入したかの購入回数を表し、一方、10,000世帯当たりの購入世帯数は、文字通り10,000世帯の内、何世帯がその項目のものを購入したかを表しているので、百分比に置き換えることもできます。
すなわち、9,500世帯であれば95%の世帯、100世帯であれば10%の世帯が購入している購入世帯割合(普及率)ということであり、これを先の100世帯当たりの購入頻度を10,000世帯の購入頻度と置き換えて、この数値を10,000世帯当たりの購入世帯数で除せば、購入した世帯のみの購入頻度(実購入頻度)を算出することができます。
この実購入頻度を用いて、支出金額および購入数量を除せば、実際に購入した世帯のみの1回当りの支出金額および購入数量を算出することができます。
なお、購入単価(平均価格)は、原データの支出金額を購入数量で除しても、購入した世帯購入しなかった世帯をあわせて1回当りの支出金額を購入数量で除しても、また、実際に購入した世帯のみの1回当りの支出金額を購入数量で除しても、いずれの場合にも同じ購入単価になります。
このことから、実購入頻度、購入世帯のみの1回当りの支出金額、購入数量および購入単価ならびに購入世帯割合の推移を分析することで、ストレートに家計調査の数値を分析するよりは、1世帯当 たりの消費行動がわずかながら明らかになるのではないかと思われます。

◇生鮮果物の実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における生鮮果物の実購入頻度の推移は、2006年1月の8.0回/月から2009年4月の8.8回/月まで増加傾向で推移した後、2016年8月の8.4回までは緩やかな減少傾向での推移となっています。



分析期間における実購入頻度は、平均的には8.4回/月±0.2回/月と、1週間に2回程度の購入頻度となっています。

◇生鮮果物の購入1回当り購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における生鮮果物の購入1回当り購入数量の推移は、2006年1月の960g/回から2016年8月の760g/回とほぼ一貫した緩やかな減少傾向が続いています。



先にも述べたように生鮮果物には様々な種類の果物が含まれており、その組み合わせで購入重量も決まってくるので、一概にこの推移だけで購入数量は減少傾向にあるとは言えないのかもしれませんが、調査の集計世帯に偏りがないとすれば、少子化高齢化に伴って世帯当たりの購入数量は減少傾向にあるものと思われます。

◇生鮮果物の購入1回当り支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における生鮮果物の購入1回当り支出金額の推移は、2006年1月の370円/回から2013年2月の330円/回と緩やかな減少傾向で推移した後、2016年8月の370円/回までは緩やかな増加傾向での推移となっています。



支出金額の推移は、購入数量と次の購入単価の推移によって結果的に決まるもので、単独ではその推移を説明するのは不十分と思われます。

◇生鮮果物の購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における生鮮果物の購入単価の推移は、2006年1月の39円/100gから2007年1月の44円/100gまで値上がりした後、2009年12月の36円/100gまで値下がりしています。
2010年1月の37円/100gから2016年8月の50円/100gまではほぼ一貫した値上がり傾向での推移となっています。



先にも述べた通り、生鮮果物には様々な種類の果物も含まれており、説明した傾向通りの推移とはいい難い面があるものの、調査集計世帯に偏りがないとすれば、購入単価の推移は説明の通りと思われます。
最近の支出金額が増加傾向で推移しているのは、購入数量が減少する中にあっても、購入単価の値上がりがそれを上回っていることによるものと思われます。

◇生鮮果物の購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における生鮮果物の購入世帯割合の推移は、2006年1月の94%から2009年6月の94%までは期間中減少する期間があるものの横ばい状態での推移となった後、2016年8月の92%までは、ほぼ一貫した減少傾向となっています。



購入世帯割合は、調査集計世帯のうち何世帯が購入したかを表す数値ですので、減少傾向での推移は巷間言われている「果物離れ」の傾向にあることを証明しているものと思われます。


最近の肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)の生産量と卸売価格の推移について

2016年10月09日 13時58分36秒 | 社会・経済

3回にわたって、最近の肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)の消費の動向を、総務省統計局の家計調査の数値を使って、その推移を見てきました。
肉類の消費の動向、すなわち需要側の動向を見てきましたが、今回は供給側の動向がどのように推移しているかを、農林水産省の畜産物流通統計等の数値を利用して、見て行くこととします。
使用したデータは、牛肉(生産量、卸売価格)、豚肉(生産量、卸売価格)および鶏肉(生産量、卸売価格)の2006年1月から2016年8月までの各月の数値、分析は、米国センサス局の季節季節調整法X-13Arima-Seatsを利用しました。

◇牛肉の生産量の推移について

日本国内で流通している牛肉には、大きく分けると「国内産牛肉」と「輸入牛肉」の二つがあります。
国内産牛肉には、成牛と子牛、品種によって「和牛」「乳用牛」「交雑牛」および「その他の牛」があり、さらに性別で「めす」「去勢」「おす」と分けられます。
輸入牛肉は、生産国別に「米国産」「豪州産」「NZ産」「カナダ産」等に分けられます。


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

分析期間における牛肉の生産量の推移は、2006年1月の28,900トン/月から2012年1月の30,800トン/月まで緩やかな増加傾向で推移し、その後は2016年8月の27,200トン/月へと減少傾向での推移となっています。
この分析期間における推移で、目に付くのは、2011年3月に発生した東日本大震災とその後の福島第一原発事故の影響で放射能に汚染された牛肉が市場に出回ったことが判明(その後、検査等の体制が整い汚染牛肉が出回ることは回避されている)したことで、実績値で7月が対前年同月比で-11.4%、8月が-9.6%と大きく減少しています。

◇牛枝肉(和牛去勢A3)の卸売価格(東京市場)の推移について

卸売市場で取引される牛肉は、頭やつま先、しっぽおよび内臓除き、皮をはがした状態の枝肉という形に成形されています。
さらに、歩留まりや肉質によって等級が分けられ、歩留まりは良い方からA、B、Cの3段階、肉質は良い方から5、4、3、2、1の5段階にわけられ、枝肉ごとにその組み合わせて格付けられます。
また、枝肉の取引は、牛の品種、性別単位にも区分されているので、今回の例示のように「和牛去勢A3」「乳用牛去勢B2」のように卸売価格についても区分ごとに公表されます。



分析期間における和牛去勢A3の卸売価格の推移は、2006年1月の1,940円/Kg から2011年11月の1,170円/Kgまで減少傾向で推移し、その後は2016年8月の2,470円/Kgまでは増加傾向での推移となっています。
特に、2011年6月から2012年4月までの間は、先に説明した放射能汚染牛肉が市場に出回ったこともあり、実績値の対前年同月比で、6月-7.0%、7月-21.1%、8月-15.0%、9月-21.0%、10月-31.0%、11月-22.2%、12月-23.9%、1月-15.2%、2月-16.4%、3月-15.1%、4月-6.0%と大きく減少しました。

○牛肉生産量と卸売価格(和牛去勢A3、東京市場)との関係について

牛肉の生産量と卸売の関係を調べるため、先にも述べたように、牛肉は品種、性別および格付け等級ごとに細分化され、その内容で個々の生産量と卸売価格を対比する必要があるのですが、おおよそどのような関係になっているのかを掌握できればよいだろうとの考えから、牛肉の総生産量と品種、性別、等級別および市場別の卸売価格との関係で見てみました。



分析期間における牛肉の生産量と東京市場における和牛去勢A3の卸売価格との関係は、相関係数(R2乗)は0.8807と非常に強い正の相関となっています。
すなわち、牛肉の生産量が増えれば卸売価格(和牛去勢A3、東京市場)が値下がり、反対に生産量が減れば卸売価格が値上がりするという関係になっています。
最近の卸売価格(和牛去勢A3、東京市場)の値上がりの主因は、牛肉の生産量が減っていることによるものと言えます。

◇牛枝肉(乳用牛去勢B2)の卸売価格(東京市場)の推移について

分析期間における乳用牛去勢B2の卸売価格の推移は、2006年1月の870円/Kgから2011年12月の370円/Kgまで減少傾向で推移し、その後は2015年9月の1,120円/Kgまで値上がりした後、2016年8月の1,020円/Kgまでは値下がり傾向での推移となっています。
、2011年7月から2012年4月までの間は放射能汚染牛肉が市場に出回ったこともあり、実績値の対前年同月比で、7月 -14.8%、8月-13.6%、9月-33.3%、10月-45.3%、11月-41.0%、12月-46.0%、1月-45.4%、2月 -42.9%、3月-37.0%、4月-25.1%と和牛去勢A3よりも大きく減少しました。



○牛肉生産量と卸売価格(乳用牛去勢B2、東京市場)との関係について

分析期間における牛肉の生産量と東京市場における乳用牛去勢B2の卸売価格との関係は、相関係数(R2乗)は0.7494と非常に強い正の相関となっています。



最近の卸売価格(乳用牛去勢B2、東京市場)の値上がりの主因は、和牛去勢A3と同様に牛肉の生産量が減っていることによるものと言えます。

○和牛去勢A3の卸売価格と乳用牛去勢B2の卸売価格との関係について

和牛去勢A3の卸売価格と乳用牛去勢B2の卸売価格の両方とも、牛肉生産量が増加すると価格が値下がり、生産量が減少すると価格が値上がるという同じ傾向となっています。
分析期間における和牛去勢A3の卸売価格は平均的には1,750円/Kg±320円/Kg、乳用牛去勢は780円/Kg±170円/Kgと、価格差は970円/Kgも開いています。
同じ牛肉と言っても、品種、性別および規格等級によって、価格は大きく異なったものとなっています。



先にも述べたように、国内で流通している牛肉は、国内産、輸入品の区分の他、品種、性別、規格等級別など様々なものが流通しています。
大きく分けて、国内産が40%、輸入品が60%です。さらに、国内産は和牛が46%、乳用牛が31%、交雑種が22%、その他の牛が1%となっています。
また、牛肉の32%は家計向け、5%が加工製品向け、63%が業務用、外食向けとなっています。
したがって、一般の消費者がスーパー等で牛肉を購入する場合は、様々な種類の牛肉が販売されていますので、ラベル(現在は原産地や品種等の表示が義務付けられている)を確認し、用途や品質等に応じた価格に見合った商品を賢く選ぶことが必要となってきます。

◇豚肉の生産量の推移について

牛肉と同様に国内で流通している豚肉も、「国内産豚肉」と「輸入豚肉」の二つに分けられます。
豚も、品種や性別があるのですが、牛肉のように細分化されず、生産量は「豚肉」と一つで表されています。



分析期間における豚肉の生産量の推移は、2008年4月の71,800トン/月から2009年11月の77,300トン/月まで急増し、その後2011年1月の73,600トン/月まで減少した大きな増減は有るものの、2006年1月の72,200トン/月から2016年8月の75,400トン/月までは穏やかな増加傾向が続いています。

◇豚枝肉(規格「上」)の卸売価格(東京市場)の推移について

豚枝肉には、半丸枝肉重量と背脂肪の暑さ(および外観、肉質)に基づいた、「極上」「上」「中」「並」および「等外」の5階級の取引規格があります。
半丸とは、枝肉を背骨を中心に左右に分割したもののことで、牛肉も卸売市場での取引は、半丸枝肉単位です。



分析期間における豚枝肉(上)の卸売価格の推移は、2006年1月の450円/Kgから2008年3月の560円/Kgまで値上がり傾向で推移した後、2009年7月の430円/Kgまで値下がりしています。
その後、2009年8月の430円/Kgから2011年1月の490円/Kgまで値上がり、その後は2012年12月の440円/Kgまで値下がり傾向で推移しています。
さらに、2013年1月の440円/Kgから2015年1月の630円/Kgまで急騰し、その後は2016年8月の520円/Kgまでは値下がり傾向での推移となっています。
豚枝肉の卸売価格は、数年間隔の単位で増減を繰り返すという特徴があります。

○豚肉生産量と卸売価格(規格「上」、東京市場)との関係について

豚肉の生産量は緩やかな増加傾向が続いているものの、豚肉の卸売価格(規格「上」、東京市場)は数年間隔での値上がり、値下がりとなっていることから、その関係は相関係数(R2乗)は0.1497と弱い正の相関があり、わずかながら生産量が増加すると卸売価格が値下がり、生産量が減少すると卸売価格が値上がりする傾向にあります。



最近、国内に流通している豚肉は、国内産が53%、輸入品が47%とほぼ同量が流通していることから、牛肉のように国内産、輸入品の品質格差等が少ないこともあり、国内での豚肉の総流通量によって、卸売価格が影響を受けているものと思われます。

◇鶏肉の生産量の推移について

鶏肉の生産量は、2011年3月に発生した東日本大震災の影響を受けた3月から7月の大幅な減少を除くと、2006年1月の111,200トン/月から2016年8月の128,900トン/月とほぼ一貫した増加傾向が続いています。



2011年3月から7月までの実績値の対前年同月比は、3月-9.8%、4月-15.8%、5月-7.8%、6月-6.4%、7月-5.1%となっています。

◇鶏肉(「もも」)の卸売価格(東京)の推移について

鶏肉(もも)についての卸売価格は、牛肉や豚肉のように卸売市場でのセリ取引のような形態はなく、民間の卸売事業所での仲間取引価格を農林水産省が聞き取り調査した結果が公表されています。



分析期間における鶏肉(もも)の卸売価格(東京)の推移は、2006年1月の570円/Kgから2008年7月の760円/Kgまで値上がり、その後2009年4月の560円/Kgまで値下がるという大きな変動があったものの、その後の2009年5月の570円/Kgから2016年8月の650円/Kgまでは多少の変動は有るものの平均的には620円/Kg±30円/Kgと横ばいからやや値上がり傾向での推移となっています。

○鶏肉生産量と卸売価格(「もも」、東京)との関係について

鶏肉の生産量は一時的な変動は有るもののほぼ増加傾向で推移している中で、卸売価格(もも)はやや大きな変動を含み、横ばいからやや値上がり傾向での推移となっており、関連性は薄いものとなっています。
分析期間における生産量と卸売価格(もも)の相関係数(R2乗)は0.0019と全くの無関係の推移となっています。



最近、国内で流通している鶏肉は、国内産が76%、輸入品が24%と、牛肉や豚肉に比べて輸入品の流通量が少なく影響は少なそうに思われますが、
国内での鶏肉の需要は、その他の部位に比べて「もも」の需要が非常に強いことから、輸入鶏肉が「もも」に偏っていると、生産量に関係なく価格への影響は大きくなっているものと思われます。


最近のエンゲル係数上昇に大きく寄与している肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)の消費動向について(その3)

2016年10月02日 16時01分52秒 | 社会・経済

鶏肉について、続けます。

◇鶏肉の支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の支出金額の推移は、2006年1月の880円/月から2015年12月の1,300円/月まで、若干の増減や横ばい状態があるものの、ほぼ増加傾向で推移しています。
直近は、2016年7月の1,240円/月と、やや減少傾向となっていますが、期間中と同様に一時的なものかどうは、今後の推移や他の指標となる統計で確認する必要があります。


(グラフをクリックすると拡大したグラフを見ることができます。以下のグラフについても同じです。)

2012年8月から2016年7月までの推移は、1,040円/月から1,240円/月まで年率換算で4.63%の増加傾向での推移となっています。

◇鶏肉の実購入頻度の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の実購入頻度の推移は、2006年1月の3.1回/月から2016年7月の3.7回/月と、ほぼ一貫した増加傾向での推移となっています。



この頻度は、ほぼ8日に1度の割合となっています。

◇鶏肉の購入1回当り購入数量の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の購入1回当り購入数量の推移は、2006年1月の310g/回から2016年7月の360g/回へと、緩やかな増加傾向が続いています。



◇鶏肉の購入1回当り支出金額の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の購入1回当り支出金額の推移は、2006年1月の280円/回から2016年7月の340円/回へと、期間中若干の増減が含まれるものの、ほぼ増加傾向での推移となっています。



2012年8月から2016年7月までの推移は、300円/回から340円/回まで年率換算で3.08%の増加傾向での推移となっています。

◇鶏肉の購入単価の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の購入単価の推移は、グラフでは変動が大きく見えますが、平均的には92.5円±4.4円と5%前後の増減が有るものの、横ばい状態での推移と言えそうです。



◇鶏肉の購入世帯割合の推移(二人以上の世帯)について

分析期間における鶏肉の購入世帯割合は、2006年1月の78.2%から2015年6月の83.4%と増加傾向推移した後、2016年7月の81.8%までは減少傾向での推移となっています。



分析期間における鶏肉の実購入頻度、購入1回当り購入数量および最近は若干減少傾向ですが購入世帯割合は増加傾向を示しており、食料では珍しく需要が拡大していると思われる商品の一つです。