相模野のトト

家計調査データを読む

あまり改善されない可処分所得

2013年08月27日 15時00分25秒 | 社会・経済

◇可処分所得の推移

可処分所得は「可処分所得=実収入ー非消費支出」の式で表せます。
すなわち、実収入から税金、社会保険料などの非消費支出を差し引いた、手取り収入のことであり、消費や貯蓄に回すことの出来る金額で、購買力の強さを測ることができる指標です。
勤労者世帯の最近の可処分所得の推移は、2012年7月から12月までは年率0.3%、13年1月から6月までは1.6%の伸びを示していますが、7年初めの44万6千円/月(傾向値)から少しづつ減少し、11年半ばに41万9千円/月でボトムとなり、その後徐々に増加し42万9千円/月まで戻ってきています。
最近のピークからはまだ1万7千円/月程少ない水準です。

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(上のグラフをクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。以下も同じです。)

◇黒字の推移

黒字は、「黒字=実収入ー実支出=可処分所得ー消費支出」の式で表され、家計の余裕を示す指標と言えます。
最近の推移は、2012年7月から12月までは年率-4.8%減少、13年1月から6月までは6.3%増加という動きになっています。

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◇エンゲル係数の推移

エンゲル係数は、「エンゲル係数(%)=(食料÷消費支出)×100」の式で表され、係数が低いほど生活水準が高いとされています。
分析期間における傾向値はy=0.00002x+14.991(R2乗=0.6766)と係数が高くなる傾向がつづいており、最近では2012年7月から12月までは年率0.5%の増加、13年1月から6月までは1.8%の増加となっています。
すなわち、少しずつ生活水準が悪化してきているとも言えると思います。

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◇平均消費性向の推移

平均消費性向は、「平均消費性向(%)=(消費支出÷可処分所得)×100」の式で表され、1982年以降1998年まで長期にわたり低下傾向で推移してきたものがその後増加傾向で推移し、分析期間では若干の増減があるもののほぼ横這い傾向にあり、最近では2012年7月から12月までは年率1.3%の増加、13年1月から6月までは-2.0%の減少となっています。

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来年4月からの消費税税率改正(現行5%、14年4月8%、15年10月10%予定)について、法律に付されている経済情勢判断をめぐって議論が活発となってきていますが、収入が増えない中にあって消費税率を上げることは、デフレ傾向によってかろうじてバランスのとれていた家計に大きな影響を与えることが懸念されます。


3・11東日本大震災以前の水準に回復した家計支出

2013年08月22日 15時18分54秒 | 社会・経済

◇実支出の推移

季節調整法X-13による傾向値で見ると、実支出は東日本大震災の発生により大きく減少しましたが、その後徐々に回復していることがよくわかると思います。

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(上のグラフをクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。以下も同じです。)

これを具体的数値で見ると、震災前の41万4千円(10年11月)から39万4千円まで落ち込んだものが、最近では41万6千円(13年6月)となっています。
こ れを増加率で見ると、12年7月から12月までは年率ベースで2.9%で伸び、その後の13年1月から6月までは年率1.6%の伸びと、震災前の水準まで は急速に回復したものの、実収入があまり増加していないこともあり、伸びは鈍化を示し、収入見合いの水準となってきていると思われます。

◇実支出の前年同月比と傾向値の推移

上記の動きを、前年同月比と傾向値でみると、10年12月から11年2月まで収入の減少により支出が減少し、11年3月の大震災発生によって大幅に減少したものが、その後2年かかって以前の水準まで戻していることを読み取る事ができると思います。

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◇消費支出の前年同月比と傾向値の推移

上記の動きを消費支出(実支出の8割弱を占める)と非消費支出(実支出の2割強を占める)に分けてみると、11年3月の大震災により消費支出が大きく減少したことが分かります。

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◇非消費支出の前年同月比と傾向値の推移

補償費支出も震災の影響で、11年3月、4月は大幅に減少しましたが、その後は増加傾向が続き、少なからず消費支出を圧迫しだしているものと思われます。

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いっこうに増えない家計の収入

2013年08月07日 13時52分38秒 | 社会・経済

昨年12月に安倍政権が誕生し、経済対策として「アベノミクス」が打ち出され、この結果、株高、円安が生じ、デフレ脱却に由る景気回復基調に変わりつつあると言われてきていますが、この間の家計はどのように変化してきたのでしょうか。

7月30日に総務省統計局より「家計調査(平成25年6月分)」の結果が公表されました。
公表されたデータについて米国センサス局の季節調整法X-13を用いて分析を行いましたので、その結果を報告いたします。
なお、用いたデータはすべて「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」のデータです。

◇実収入の推移
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(上のグラフをクリックすると、拡大したグラフを見ることができます。以下も同じです。)

実収入は世帯主を含む世帯員全員の現金収入(税込み)を合計したものを表しています。
したがって、勤労者世帯では勤め先からの世帯主,世帯主の配偶者及び他の世帯員の収入と社会保障給付等が主な収入源となっています。
この半年間(平成25年1月から6月の間)の推移は、年率ベースで1.65%の微増で推移していますが、増加傾向となったのはちょうど1年前の平成24年6月からであり、今次の経済政策が現時点では家計の収入増に寄与しているとは言い難いと思われます。
株高、円安が一部の企業に恩恵をもたらしているとは思われますが、賃金増加をもたらすような全体的な景気回復は、まだ先のようです。

◇世帯主収入の推移
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この半年間の世帯主の収入は、年率ベースで0.1%に達しない水準で推移しており、2011年1月以降はほぼ横ばい状態です。
そのような中で、6月単月の収入は前年同月比で2.2%の増加を示しており、景気回復基調が僅かながら賞与の形で寄与したものと思われます。

◇配偶者収入の推移

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この半年間の世帯主の収入は、2011年4月以降増加傾向で推移してきたものが、2013年4月以降幻想傾向に転じたことから年率ベースで-2.5%の減少となっています。
なお、2011年4月以降の増加は年率ベースで11.2%の増加で推移し、家計の収入増に大いに寄与してきましたが、これから先も続くかどうかはもう少し推移を見守る必要が有るものと思われます。

◇その他の収入の推移
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この半年間のその他の収入は、年率ベースで-1.02%の減少で推移しています。
なお、その他の収入の内容は、他の世帯員(世帯主、その配偶者を除く世帯員)、事業・内職収入、社会保障給付及び受贈金等の特別収入が含まれ、その約4割強を社会保障給付(2ヵ月単位で給付)が占めていることから、実際の収入は2ヵ月単位で大きく変動しています。