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拾い読み★2011-193≪コラム記事≫

2011年07月11日 20時02分18秒 | マリーンズ2011~15
“異端の投球哲学”を持つ唐川侑己。
その美しすぎるフォームの秘密。


 本気で話してる?
 高校時代、インタビュー中に、何度となく、そんなことを言った記憶がある。
 そして、そのたびにこんな風に笑って誤魔化されたものだ。
「よく言われます。人と話してても、『今、流した?』って」
 ストレートがこれといって速いわけでもない。変化球のキレが特別鋭いわけでもない。それでも7月10日現在、リーグ4位となる防御率1.806を維持している千葉ロッテの唐川侑己の投球はこう形容されることが多い。
 捕らえ所がない――。
 その「感じ」は、マウンド上だけではない。
 オニギリ。
 成田高校時代、唐川は一部のスタッフと部員からそう呼ばれていた。
 どこがどうというわけではないのだが、確かに、帽子を取ったとき、坊主頭の唐川はノリを巻いた三角形のオニギリを想起させた。唐川の話しぶりが、ほんわかとした雰囲気を漂わせていたことも、そのイメージ作りを手伝っていたように思う。

「できるだけ楽をしたいっていうのがあるので」
 唐川は、その頃から「力投派」に分類されるタイプの投手とは、あらゆる面で対照的だった。
「状況とか相手の打者を見て、けっこう手を抜いてます。昔からやってましたね、そういうことは。できるだけ楽をしたいっていうのがあるので」
 高校1年冬、選抜大会出場を控えていたときだ。対戦したいチームを問うと、こう答えた。
「特にないです。あまり知らないんで、高校野球」
 プロ志望ということで、プロに入って対戦したい打者を尋ねたときも、似たようなリアクションが返ってきた。
「あんまりいいバッターとは対戦したくないですね。だって、打たれる可能性もあるわけじゃないですか。まあ、やると決まったら、やるしかないんですけど……」
 最後の夏を迎える直前、「夏に向けて、何か言い残したことある?」と聞いたときなどはこうだ。
「あ、この前、ランニングしてて、初めて足がつりました。運動してなかったからでしょうね。テスト明けで。今もけっこうつってる感じです。あんまり関係ないですね。はははは」
 手ごたえがないものだから、こちらも、つい変に力が入ってしまう。結果、何となくかわされる――。

身体能力も低いし、小さい頃の「伝説」も無いし……。
 今、唐川に手玉にとられている打者の姿を見るたびに、当時のそんな自分の姿が思い出されてならない。
 いかにも唐川らしいが、小さい頃の話を聞いても、一般的なプロ野球選手が持っているような「伝説」の類はほとんど出てこなかった。
「跳んだり、走ったりするの、苦手なんです。もともとバネがないんで。長距離もそんなに速くないです。鉄棒とかもダメですね。身体能力が問われるようなものは全部ダメです。父がそうだったみたいで。遺伝子の問題だと思います。小さい頃は、二つ上の姉と一緒に野球をして遊んでたんですけど、よく顔にぶつけられてました。それでも犬みたいについて回っていたんです」
 肝心の野球についてもこう振り返る。
「自分、もともと野球がうまくないんですよ。打ったりするのは、今も無理。投げる以外のことはまったくダメなんです」
 本人の言葉通り、高校時代から、唐川の打席は、まるでプロ野球の投手が打席に立っているときのように打つ気配がほとんど感じられなかった。
 しかし、かといって唐川はそんな自分を否定しなかった。それどころか、プラスに変えた。
「腕にはまったく力は入れていません。最後に指先にちょっと力を入れるぐらいです。バシッ、て。筋力やセンスがなかったぶん、人より楽をして投げよう投げようとしていた。その結果、こういうフォームになったんだと思います」
 この性格があったからこそ、これ以上ないと思えるほど力みのない、流麗なフォームが身に付いたのだ。
 そして、おそらくは、「捕らえ所のない」投球スタイルも、である。
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