≪2018/12/29≫
新コーチ陣、期待の若手、ドラ1……。
2019年の千葉ロッテはひと味違うぞ!
毎年恒例、Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の反省と期待を綴る短期集中連載シリーズ。今年もそれぞれの愛すべきチームについて、しっかりと2018年、そして2019年への思いを発表したいと思います。
第3回は、功労者たるベテランの引退と有望な若手選手の台頭……と世代交代が一気に進んだ千葉ロッテマリーンズです!
2万4532人の観客が試合の終了を待たずして、1人、また1人と席を立っていった。
ゲームセットの声がかかった時点でもう3割近くは空席になっていただろうか。
2018年10月7日、千葉ロッテがリーグ57年ぶりとなるホーム連敗記録まであと1つと迫った夜、筆者は多くのマリーンズファンの嘆き、悲しみ、怒りといった負の感情を背中に感じながら、球場最寄りの海浜幕張駅から電車に乗り込んだ。
この日は千葉ロッテ・根元俊一の現役生活最後の試合、でもあった。
本来ならホーム連敗という不名誉な記録から頭を切り離して、13年間に及ぶ根元の活躍を労いながら彼の思い出に浸りたい……そんな想いでチケットを購入したファンも多くいたことだろう。
しかし、この日は序盤に大量得点を許したこともあって、開始早々から球場はどんよりとしたムードが漂っていた。
打線も大した抵抗も出来ないまま試合が進んでいくと、ゲームセットと同時に怒りとも呆れともとれるため息とブーイングが球場中の至るところから漏れてきた。
目を真っ赤にしていた井口監督。
さきの引退セレモニーが終わり、選手および首脳陣がベンチ裏へ引き揚げてくると真っ先に、筆者の目に飛び込んできたのは目を真っ赤に腫らした井口資仁監督の姿だった。
根元の現役生活最後の姿に目頭が熱くなる……その感情だけではなかっただろう。
なぜならこのときの井口監督の表情はやるせない怒りも混じっている、そんな風にも見えたからだ。
3年を区切りに、井口監督を信じたい。
結局、千葉ロッテはその後のホームゲーム2試合でも連敗を続け、ホーム14連敗で2018年のシーズンを終了し、57年ぶりにリーグワースト記録を更新することとなった。
現役時代から自らのことを、あまり多く語らない井口監督のことである。
想いが届かずファンの誤解を招く部分も多々あっただろう。だが、あのやるせない井口監督の表情を見てしまったら、改めてあと1年、出来れば3年を1つの区切りに監督、そして今の選手達を信じてあげてほしいと思う。
そんなことを感じながら2018年最後となるマリーンズの原稿を今、書いている。
“走塁改革”は成功したのだが……。
さて、そんなマリーンズの2018年だが、シーズン全体で考えればそこまで悪いことばかりではなかった。
開幕直後は“走塁改革”の名のもとに機動力を活かした野球を展開、パ・リーグの台風の目になりかけた。
荻野貴司、藤岡裕大、中村奨吾といった面々が積極的に盗塁を仕掛けていっただけでなく、足に自信がない選手、さらにいえばファームの若手選手に至るまで走塁の意識を徹底的に変えていったのは今後に向けても大きい。
さらに鈴木大地、田村龍弘、中村奨吾、藤岡裕大の4選手が公式戦143試合フル出場を果たし、多くの経験を積んだ。
その中でも打率.284を残し、盗塁39で盗塁王のタイトルまであと一歩に迫った中村奨吾の成長があり、さらに、フル出場ではなかったものの井上晴哉も133試合で打率.292、本塁打24、打点99と活躍したことは、まさに井口采配がもたらした、ひとつの功績といえるものだった。
期待できる若手選手が続々!
他にも高卒3年目の平沢大河を一時的に外野手にコンバートして112試合に出場させ、1年間一軍で経験を積ませると、投手でも岩下大輝、土肥星也、種市篤暉といった若きホープたちが頭角を現して、戦力の底上げはまずまず出来たのではないかと思う。
さらに来季は安田尚憲、香月一也といった若手成長株を積極的に起用していく話も出ている。
2年後、3年後を見据えたチーム作りは着々と進んでいる印象は受けた。
ドラ1・藤原恭大への期待。
このオフに、コーチ陣の入れ替えを行った点も、チームの本気度が窺える。
一軍打撃コーチには、これまで平沢、安田らをファームで指導してきた大村巌が二軍打撃コーチから配置転換。
投手コーチも二木康太ら多くの若手投手を一軍の舞台に送った川越英隆を一軍投手コーチにしたばかりでなく、指導力の高さに定評があった吉井理人の一軍投手コーチ招聘に成功した。
さらに今年2000本安打を達成した福浦和也も来季は(一軍コーチ兼任から)二軍打撃コーチ兼任として若い選手たちを指導することとなった。これまでも福浦の助言によって、道を切り開いた若手選手は多く、いよいよその指導力を存分に活かすときが来た。これは大いに期待したい。
さきのプロ野球ドラフト会議では1位指名で、大阪桐蔭・藤原恭大を3球団競合の末に獲得した。
12月4日に千葉市内のホテルで行われた千葉ロッテ新入団選手発表会では、藤原が会場に姿を現すと、ひと際大きな声援が彼に送られ、ファンの期待の高さが窺えた。
今のロッテには成長を見守る楽しみが。
この日、初めてファンと接した藤原は、会の終了後、こんな感想を漏らした。
「(会場から)帰るときも『頑張ってね』とか『新人王に』とか色々な言葉をかけてもらって、本当に頑張らないといけないな、という気持ちになりました」
まだまだ千葉ロッテはチーム全体が若く発展途上のチームである。その部分ではこれからもファンの気持ちをヤキモキもさせるだろう。
一方で近年のドラフト戦略が成功しているように、成長を見守る楽しみは確実にある。
種を蒔き、芽が出て、いよいよ収穫のシーズンへ――。
2018年のあの悔しさは、熱狂の2019年に繋がっている。そう信じたい。
文=永田遼太郎
(Number)
新コーチ陣、期待の若手、ドラ1……。
2019年の千葉ロッテはひと味違うぞ!
毎年恒例、Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の反省と期待を綴る短期集中連載シリーズ。今年もそれぞれの愛すべきチームについて、しっかりと2018年、そして2019年への思いを発表したいと思います。
第3回は、功労者たるベテランの引退と有望な若手選手の台頭……と世代交代が一気に進んだ千葉ロッテマリーンズです!
2万4532人の観客が試合の終了を待たずして、1人、また1人と席を立っていった。
ゲームセットの声がかかった時点でもう3割近くは空席になっていただろうか。
2018年10月7日、千葉ロッテがリーグ57年ぶりとなるホーム連敗記録まであと1つと迫った夜、筆者は多くのマリーンズファンの嘆き、悲しみ、怒りといった負の感情を背中に感じながら、球場最寄りの海浜幕張駅から電車に乗り込んだ。
この日は千葉ロッテ・根元俊一の現役生活最後の試合、でもあった。
本来ならホーム連敗という不名誉な記録から頭を切り離して、13年間に及ぶ根元の活躍を労いながら彼の思い出に浸りたい……そんな想いでチケットを購入したファンも多くいたことだろう。
しかし、この日は序盤に大量得点を許したこともあって、開始早々から球場はどんよりとしたムードが漂っていた。
打線も大した抵抗も出来ないまま試合が進んでいくと、ゲームセットと同時に怒りとも呆れともとれるため息とブーイングが球場中の至るところから漏れてきた。
目を真っ赤にしていた井口監督。
さきの引退セレモニーが終わり、選手および首脳陣がベンチ裏へ引き揚げてくると真っ先に、筆者の目に飛び込んできたのは目を真っ赤に腫らした井口資仁監督の姿だった。
根元の現役生活最後の姿に目頭が熱くなる……その感情だけではなかっただろう。
なぜならこのときの井口監督の表情はやるせない怒りも混じっている、そんな風にも見えたからだ。
3年を区切りに、井口監督を信じたい。
結局、千葉ロッテはその後のホームゲーム2試合でも連敗を続け、ホーム14連敗で2018年のシーズンを終了し、57年ぶりにリーグワースト記録を更新することとなった。
現役時代から自らのことを、あまり多く語らない井口監督のことである。
想いが届かずファンの誤解を招く部分も多々あっただろう。だが、あのやるせない井口監督の表情を見てしまったら、改めてあと1年、出来れば3年を1つの区切りに監督、そして今の選手達を信じてあげてほしいと思う。
そんなことを感じながら2018年最後となるマリーンズの原稿を今、書いている。
“走塁改革”は成功したのだが……。
さて、そんなマリーンズの2018年だが、シーズン全体で考えればそこまで悪いことばかりではなかった。
開幕直後は“走塁改革”の名のもとに機動力を活かした野球を展開、パ・リーグの台風の目になりかけた。
荻野貴司、藤岡裕大、中村奨吾といった面々が積極的に盗塁を仕掛けていっただけでなく、足に自信がない選手、さらにいえばファームの若手選手に至るまで走塁の意識を徹底的に変えていったのは今後に向けても大きい。
さらに鈴木大地、田村龍弘、中村奨吾、藤岡裕大の4選手が公式戦143試合フル出場を果たし、多くの経験を積んだ。
その中でも打率.284を残し、盗塁39で盗塁王のタイトルまであと一歩に迫った中村奨吾の成長があり、さらに、フル出場ではなかったものの井上晴哉も133試合で打率.292、本塁打24、打点99と活躍したことは、まさに井口采配がもたらした、ひとつの功績といえるものだった。
期待できる若手選手が続々!
他にも高卒3年目の平沢大河を一時的に外野手にコンバートして112試合に出場させ、1年間一軍で経験を積ませると、投手でも岩下大輝、土肥星也、種市篤暉といった若きホープたちが頭角を現して、戦力の底上げはまずまず出来たのではないかと思う。
さらに来季は安田尚憲、香月一也といった若手成長株を積極的に起用していく話も出ている。
2年後、3年後を見据えたチーム作りは着々と進んでいる印象は受けた。
ドラ1・藤原恭大への期待。
このオフに、コーチ陣の入れ替えを行った点も、チームの本気度が窺える。
一軍打撃コーチには、これまで平沢、安田らをファームで指導してきた大村巌が二軍打撃コーチから配置転換。
投手コーチも二木康太ら多くの若手投手を一軍の舞台に送った川越英隆を一軍投手コーチにしたばかりでなく、指導力の高さに定評があった吉井理人の一軍投手コーチ招聘に成功した。
さらに今年2000本安打を達成した福浦和也も来季は(一軍コーチ兼任から)二軍打撃コーチ兼任として若い選手たちを指導することとなった。これまでも福浦の助言によって、道を切り開いた若手選手は多く、いよいよその指導力を存分に活かすときが来た。これは大いに期待したい。
さきのプロ野球ドラフト会議では1位指名で、大阪桐蔭・藤原恭大を3球団競合の末に獲得した。
12月4日に千葉市内のホテルで行われた千葉ロッテ新入団選手発表会では、藤原が会場に姿を現すと、ひと際大きな声援が彼に送られ、ファンの期待の高さが窺えた。
今のロッテには成長を見守る楽しみが。
この日、初めてファンと接した藤原は、会の終了後、こんな感想を漏らした。
「(会場から)帰るときも『頑張ってね』とか『新人王に』とか色々な言葉をかけてもらって、本当に頑張らないといけないな、という気持ちになりました」
まだまだ千葉ロッテはチーム全体が若く発展途上のチームである。その部分ではこれからもファンの気持ちをヤキモキもさせるだろう。
一方で近年のドラフト戦略が成功しているように、成長を見守る楽しみは確実にある。
種を蒔き、芽が出て、いよいよ収穫のシーズンへ――。
2018年のあの悔しさは、熱狂の2019年に繋がっている。そう信じたい。
文=永田遼太郎
(Number)