ちょこっとGUM

今、自分が出来ること。やれること。それを精一杯やっていかなくちゃ!!

コラム備忘録【12/28】

2018年12月29日 02時10分58秒 | マリーンズ2018
≪2018/12/28≫

愛されて四半世紀。福浦和也が語る
「最下位指名からの2000本安打」


「今年は2000本安打を達成することができました。しかも本拠地の千葉で多くのファンの方の前で達成できたので本当に嬉しかったです。でも一方で、チームは5位に終わってしまいましたからね。僕自身、もっとチームの勝敗に貢献できる働きができていればという悔しさが残るシーズンでもありましたね」

 シーズン終了後のZOZOマリンスタジアム。今年この場所で2000本安打を達成した福浦和也がしみじみと振り返った。

今シーズン、プロ野球史上52人目の2000本安打を達成した福浦和也
「一時は諦めていた2000本を打てたことも周りの人たちのおかげです。井口(資仁)監督、鳥越(裕介)ヘッドを含め、チームのみんながいつも声を掛けてくれたことも力になりました。打席に立つたびに記録が近づくたびにファンの人もたくさん見に来てくれましたし、あれだけの歓声を送ってくれた。最後は声援で打たせてもらったと言っていますけど、本当に最後は気力で打てたと思います」

 愛されて四半世紀──今シーズン、幕張の町ではそんなコピーとともに刻まれた”福浦安打製造所”の作業着を着たマリーンズファンの姿をちょくちょく目にした。

 千葉県習志野市出身。習志野高校から卒業する前年千葉に移転してきた千葉ロッテに入団した。生まれてこの方、千葉を出たのは3年間の浦和の寮生活だけ。マリーンズひと筋25年で、2000本安打を達成した福浦をファンは”俺たちの福浦”と謳(うた)う。マリーンズにとって特別な選手であるだけでなく、現代の野球界におけるフランチャイズプレーヤーとして、最たる存在であることがわかる。

「僕がここまでやれるなんて誰も思っていなかったでしょうね。当の本人ですら想像が及びませんでしたから(笑)。あの、背番号70のひょろひょろピッチャーがよくここまで続けてこられたと思います。たしか入団時の目標は『1日も早くマリンのマウンドに上がる』でしたからね。

 僕、(習志野)高校時代に一度もマリンで投げたことがなかったので、なんとかピッチャーで頑張りたかったんですよ。半年ほどで、山本功児さんに『バッターになれ』と言われてしまいましたが、最初は転向が嫌で逃げ回っていましたからね。でも、その言葉がなかったら、今の僕はここにはいなかったわけですからね」

 93年ドラフト7位──福浦のプロ野球におけるキャリアは、その年の最後に名前を呼ばれた”最下位指名選手”からはじまった。

 世代の一番下から入団した福浦は、今シーズン中日の岩瀬仁紀、同じ昭和50年生まれの西武・松井稼頭央が引退したことで、来季からは巨人の上原浩治とともに球界最年長の冠をいただく。

 それは同年代の野手では誰よりも長く現役を続けた選手の意味でもあるが、福浦は”球界最年長”という言葉には率直に「嫌ですね」とかぶりを振る。

「僕の同級生には、高橋由伸や松井稼頭央、上原浩治とか、すごい選手がたくさんいました。僕にとって彼らはライバルなんですけど、それ以上に特別な存在です。やっぱり負けず嫌いだったんでしょうね。僕なんて打つだけですから『バッティングだけは絶対に負けたくない』という思いを常に持ってやってきました。同級生とは一緒のグラウンドに立っているだけでも楽しかったんですよ。ピッチャーと対戦したり、一塁に出塁してきた選手と言葉を交わしたり、めちゃくちゃ意識はしていました。

 とくにカズオくん(松井稼頭央)の存在は大きかった。ルーキーの時から二軍でも一緒にやってきましたからね。ここ最近はご飯を食べに行くたびに『1年でも長くやれるように一緒に頑張ろう』とずっと言っていました。2000本も彼の前で打てましたしね。花束を持ってきてくれた時も、『来年も一緒に頑張ろう』って思っていたら……辞めちゃった。全然知らなかったんですよ(笑)。まぁ、さみしくなりますけど、こればっかりはさみしくとも各々の人生ですから、しょうがないですよね」

 ロッテ選手の2000本安打は、球団生え抜きの左打者として同じ”安打製造機”の異名を持つ求道者、榎本喜八氏以来の偉業。42歳9カ月での到達は、元中日・和田一浩氏に次ぐ2番目の年長達成である。

 しかし、多くの関係者は福浦の打者としての価値は数字以上のものがあると口を揃える。福浦が師と仰ぐ故・山本功児氏は生前「本来ならばもっと早く2000本を達成できる選手。ただ、どんなに腰が悪くても決して痛いとは言わずチームのために試合に出続けた」とよく口にしていた。

 福浦とともにプレーしたOB選手も「足がない福浦のヒットは、ほとんどが完璧に捕えたもの。同じ2000本でも価値が違う」と、打者として最大級の賛辞を送る。

 そんな福浦の25年の野球人生を以てしても「バッティングはわからないことだらけ」と言う。

「掴んだように思えても、すぐにすり抜けていく。若い時は『何とかヒットを打って一軍に残りたい』とただがむしゃらに喰らいつき、レギュラーになれば”打って当たり前”と見られているなかで結果を残していく難しさがありました。

 首位打者を獲った頃は『こう振れば、こう打てるんだな』とか、『こうやって力を抜けば、そこに落ちるんだな』という”ヒットを打つコツ”を掴みかけたことはなんとなくありました。振ればヒットになるような、いわゆるゾーンに入る感覚もありました。

 だけど、そう簡単に掴ませてくれるほど甘くなかったということですね。ベテランになってからは、なかなか思い描くような動きができなくなっていきますが、その世界を一度見てしまうと、またあの場所を目指そうとする。何度も試してはみたのですが、やっぱりなかなか。

 また、代打になったことで4打席あったものが1打席での勝負になり、対戦する投手はセットアッパーやストッパーになる。同じ”ヒット”ではあっても時代時代で、まったく違った意味があったと思います。年数を重ねていくうちに、1本の重みというものをより感じるようになりましたね」

 1本の安打を打つために若い頃はチームの誰もが認める練習量で力をつけてきた。やがて年を重ねると、慢性的な腰痛や首痛など身体の不調と付き合いながら、ケガをしない調整や体調管理でコンディショニングに細心の注意を払ってきた。

 不動の一塁手がDHとなり、代打とチーム内での役割が変わっていくなか、43歳となったベテランは、形が変わろうとも、その1打席に掛ける準備への姿勢は変わらない。

「準備も練習もこれでいいというものはないと思うんです。若い時はがむしゃらに練習をしても、それに耐えられる体力がありましたが、年を重ねていくとそうはいかない。身体のコンディションも、日によって全然違いますからね。今日調子がよくても、翌日には『バットが重い』『身体が重い』となってしまうことも珍しくない。身体の調子を見極めながら、今日はどれぐらいやれば、一番いい状態で打席に向かえるかですね。

 年齢を重ねていくと、やっぱり凡打の内容が変わってきたように感じることがあります。以前まではいい当たりができていたものが、最近では三振が増えていたり、差し込まれていたりします。相手の攻め方を見ても、年を取るとついていけなくなる”速い真っ直ぐ”の割合がやっぱり増えています。

 僕自身、年齢のことはあんまり言われたくないけど、周りはそうは見てくれませんからね。だから、僕は逆に速い真っ直ぐを狙いに行きますよ。まだ引っ張れますから(笑)。肉体で衰えるところは、頭の方で補うようになっていると思います」

 一般的にベテランになってからの2000本は、記録達成を区切りにして引退する選手も少なくないなか、福浦は来季も現役を続けることを選んだ。

「辞める選択もなきにしもあらず……でした。だけど、もう少しやりたかったんです。今年も夏場に二軍に落ちました。朝は早いし、グラウンドはめちゃくちゃ暑いし、体力的には厳しいですよ。だけど、僕はそこでも野球の楽しさというものを感じることができた。もちろん、一軍でやるのが当たり前でなければいけないんですけどね。

 やっぱり、あのマリンの大歓声を聞いていたら、このままでは終われないですよ。この人たちの前で1本でも多くヒットを打ちたい。リーグ優勝を果たして、ZOZOマリンで井口監督を胴上げしたいという心残りがどうしてもありますからね」

 最後に求めるものはチームの優勝と井口監督の胴上げ。福浦は2005年のマリンガン打線、2010年の史上最大の下剋上と二度の日本一を経験。そして1998年の18連敗と、マリーンズの強い時も、弱い時も知り尽くしている。ここ数年低迷するチームが優勝するために必要なものは何かという質問に「今のチームも個々の選手の能力は決して劣らない」と即答した。 

「昔から勢いに乗った時のうちは本当に強い。それは今も同じだと思います。個々の能力や意識が、日本一になった時の選手に劣るということはないと思います。ただ、今の子は性格的にマジメで、気持ちの優しい子が揃っている気はしていますね。今の選手たちだって乗ればガッといく力はあるんです。だけど、ちょっと負けが込むと沈んでしまう。そういう時に恐いものなしで前に進める、西岡剛みたいな若い選手が出てくるといいですよね」

 現役26年目のシーズンとなる2019年は、頭から二軍打撃コーチを兼任する。安田尚憲(ひさのり)、藤原恭大(きょうた)など、将来のマリーンズを背負って立つ若い左打者を育てる指導者としての役割を求められるなか、1人の打者としても負けるつもりはさらさらない。

「まずは自分がグラウンドに立ち続けることです。まだバリバリ振れるし、飛ばせるという姿を見せること。そして若い選手たちに、チームが勝つという経験をさせてあげたい。僕が2000本を打った時、みんな我がことのように喜んでくれた。あの喜びを、次は優勝で分かち合いたいと思います。自分の引き際がどういうものになるのかはまだわかりませんが、自分の中でやり切ったと思える時がユニフォームを脱ぐ時なんでしょうね。

 だけど、僕は欲深いんです。やっぱりいくつになっても、全部の打席でヒットを打ちたい。杖をついて打席に立っても……って言ったら、さすがに怒られますかね(笑)。だけど1日でも長く、日本の、千葉の、ZOZOマリンで、ずっとヒットを打ち続けられるように頑張りたい。それが今の正直な気持ちですね」 

村瀬秀信●文

(Sportiva)

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≪2018/12/28≫

新生ロッテ誕生へ「3本柱」を大改革/今岡真訪2

ロッテ今岡真訪2軍監督(44)に就任1年目の今季を聞いた。現役時は阪神で03年首位打者と05年打点王に輝き、2度の優勝に貢献した一方で、不遇も味わった。現役時代の経験をもとにして、若き指揮官が抱く哲学を2回連載でお届けする。ファーム指導で浮き彫りになったのは「無言力」「1軍力」「管理力」だ。最初に“教えない将”の若手へのアプローチに迫る。

◆◆◆

本気でロッテを変える。今季から就任した今岡真訪2軍監督(44)が盟友の井口資仁監督とともに抱く決意だ。指揮1年目は118試合で59勝54敗5分けの3位。昨季、借金5の4位から躍進した。チーム打率はリーグ2位、同本塁打数は同1位だ。「今岡野球」って何ですか? そんな問いにしばし考え、反論した。

今岡 2軍監督の野球って、そんな「色」はいらない。選手を1軍に上げる、1軍につながっている野球をするのに「俺の野球」って何? やるのは1軍に行っても絶対にやらないといけないこと。極力、1軍と2軍で求められるもののギャップが出ないように。必要な打撃、必要な声やね。

1、2軍の連係がチーム強化の根幹にある。ファームの若手が1軍でも戸惑わずプレーできるか。いわば「1軍力」を鍛えているのだ。試合のなかでも、勝ちにつながる行動を追求。今岡が特にナインに伝えるのは、個々の技術以上にチームプレーの徹底だった。

◆チームバッティング

今岡 前提として勝とうとしないと教育できない。例えば走者が三塁にいて、内野手は1点やってもいい守備陣形で下がっているのにポップフライや空振り。こういうのは強烈に言う。「下がっているのに空振りしても何も生まれない。当ててゴロで1点やろ?」と。バント失敗した選手には次の日、点差に関係なく、絶対にバントのサインを出す。エンドランに失敗した選手も、次の機会で必ずサインを出す。ミスを怒ることはないけど、成功するまでサインを出し続ける。

◆チームボイス

今岡 極端に言えば「さあ、行こうぜ!」というありきたりな声はいらない。「チームボイスを出しなさい」と言っている。選手同士で、いいプレーをしたら、まず褒め合え、悪いプレーをしたらヤジり合え、と。コーチが言う前にね。それがチームプレー。ピリッとしたいい空気になる。

勝つための道を進み、攻守ともに、細かく突き詰めてきた。例えばシートノックだ。「タッチプレーが柔らかかったら、やり直しをさせる。必ず、強く『タッチ!』とやらないと」。時にはアウト1つが命取りになる。だからこそ、タッチの差も制すべく、細かいプレーをおろそかにしない。

ロッテ変革は「管理力」の強化にも表れている。今季から指導体系を一変。練習メニューから日常生活まで、すべてを主導するのはトレーニングコーチだという。練習負荷、体重計測、食事量…。日々、細かく選手の状態を把握する。「トレーニング」「休養」「食事」の3本柱を、いかに循環させるか。今岡は「トレーニングコーチから『体重が落ちました。体力的に弱っています』と報告が来たら、普段の特打や特守はなしにしましょう、としている」と説明。プロ野球界は打撃、投手など、技術部門のコーチの意見が優先されがちだが、ロッテは違う。現役時から筋力強化を重んじた井口の方針もあって、トレーニング部門を重視した強化を推し進めている。

象徴的な光景があった。あるときのビジター戦だ。新人安田ら若手が、5回で急に交代。トレーニングコーチが付き添い、ウエート室に向かう。プレーを途中で切り上げてまで徹底して取り組ませていた。

今岡 高卒1年目の選手に、そこまでしてウエートをさせるのは若いうちから意識づけをさせるということ。それくらい、我々はウエートを大事にしている。

合理的な理由もある。関東近郊でビジター戦を終えると拠点の埼玉・浦和までバスで帰る。渋滞なら4時間かかる。「帰ってから夜にウエートしろとか無理。それなら、遠征先でやればいい」。ユニークな操縦法で若手の体力強化を図る。

日常生活も整える。今岡が取り組んだのが「お風呂改革」だ。今年の新年早々、浦和の寮に一夜、寝泊まり。「そうしないと改善点が分からない」。気づいたことがあった。「朝、お風呂に入ろうと思ったらお湯が出ない。聞けば『朝は寮でお風呂に入れない』と」。練習前の朝、体を温めるために風呂に入る選手は多い。戦える環境を作った。

改革は、寮の食生活にも及ぶ。これまで休日は朝昼晩の食事なし。コンビニや外食で済ませる選手が多かったという。今岡は休日の食事の必要性を訴え、午後6時からの夕食を義務づけた。「寮生として当たり前のことができていないと感じた。寮生活は体を作る上で大事な時期。強く意識させている」。すべて井口に提案し、相談して決めた取り組みで、着々と新生マリーンズの礎を築く。

◆◆◆

1時間少々の今岡へのインタビューで、ボソッと言った言葉が脳裏に焼きつく。「邪魔しないことやね、コーチが」。グラウンドで選手に声を掛けず“教えない将”の本音に触れた気がした。いつも今岡の背中は伸びている。規律、礼節、志…。指導のあるべき姿を自戒しつつ、こう言う。

今岡 2軍は若手だけじゃなく中堅、ベテランもいる。誠実にモノを言うのが大事。例えば「気合を入れろ」と言うなら、気合を入れている自分でいないといけない。自分が吐く言葉は自分が鏡。自分が、いつ見られても絶対に凜(りん)としていること。「あの人に言われたら文句ない」と思われないといけない。だらしない、緊張感がない指導者であってはいけない。現役のときは自分のことばかり考えて角が立って、ある意味、生意気でした。人の言うことを聞かないタイプでした。だからこそ、いま、人にモノを言うときは自分を律しないといけない。毎日、そう思いながら過ごしています。(敬称略)(終わり)【酒井俊作】

(日刊)

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≪2018/12/28≫

聞きにくい契約更改のハナシを里崎智也さんに聞いてみた

“野球とお金”をテーマに展開してきた「グラゼニ特集」
今回はプロ野球OBの里崎智也氏にスペシャルインタビューを敢行。
なかなか聞けない“おカネにまつわる話”をいろいろと聞いてみました。

“推定年俸”って合ってるの?

 プロ野球も長いオフシーズンに入り、最近の話題と言えば、選手たちが自身の契約について球団と話し合う「契約更改」がメインになってきた。

 スポーツニュースなどで契約更改に関する情報が伝えられる際、必ずと言っていいほど出てくるのが“推定年俸”というワード。プロ野球選手という職業は特殊なもので、選手名鑑を見たり、ネットで調べたりすれば、すぐにその人の年収が分かってしまうのだ。

 今回は「グラゼニ シーズン2」でも見どころのひとつとなっている“契約更改”について、当事者しか知りえないウラ側に迫るべく、元プロ野球選手で現在は解説者として活躍している里崎智也氏にインタビューを敢行。なかなか聞けない“おカネ”にまつわる質問に答えていただいた。

―― ズバリ、“推定年俸”って合っているんでしょうか?

里崎:まぁ、70~80%くらいじゃないですかね?

―― それは数字が、というより真偽性という意味で?

里崎:そうです、そうです。まず記者会見の時に自分から言う人、言わない人がいますけど、それでも“プラスアルファ”の部分って言わないですもんね。

―― 出来高だったり、見えない部分も多いですね。

里崎:そういうことです。皆までは言わないでしょう。そういう意味で、7~8割くらいの感覚で受け取るのがいいんじゃないでしょうか。

―― 里崎さんは自分から言ってましたか?

里崎:僕は言いません。言ったことないと思います。

―― 記者たちが話し合って出ていたと。

里崎:そうじゃないですかね。記者の人たちの想像か、あとは球団の人に聞いたりとか。

―― 報じられた金額が全然ちがうなんてことも…

里崎:ありましたよ。でも、そんなの知ったこっちゃないというか、僕には関係ないですからね(笑)

―― えー!気にはならないんですね。

里崎:だって、合っていようがいまいが、僕がもらえる金額は変わらないですから(笑)

重要なのは「自分が満足できるかどうか」

―― 契約更改って、どういう場なんでしょうか。

里崎:年俸の交渉ってイメージが大きいかもしれませんけど、僕の場合はお金の話というよりも球団への要望とか、改善してほしい部分の相談がメインでしたね。

―― たしかに、年俸の部分でない待遇改善を訴えるシーンも見かけます。

里崎:しっかり話し合うことができるのも1年に1回ですからね。そこは聞いてもらっていました。

―― いわゆる“銭闘”的なことはなかったですか?

里崎:金額の交渉はしたことないですね。基本的には想定の範囲内で収まっていたので。

―― たしかに、いつもスムーズだった印象はあります。

里崎:僕の場合、自分が想定したラインの中に入っていたら、そこから1円でも高くとかは思わない。自分が満足するかどうか、だけなので。

―― 最近は“ゴネる”選手も減っていますが、当時は多かったのではないですか?

里崎:契約に関しては、人のことをどうこう言う話でもないし、言うべきでもないんですよ。結局、自分が満足できるかどうか、という部分。誰かと比べて~だとか、ましてや他の球団の選手と比べるとかはないですよね。チーム状況も、資本も違うんだから。

―― 下交渉もあるんですか?

里崎:ありますよ。最近は多いんじゃないですかね。やっぱり「保留」が出ると球団も選手もイメージが悪くなってしまうので。

―― 最近は「保留」が大きなニュースになりつつありますね。

里崎:「契約更改」は文字通り“契約”を“更改”する日ですからね。条件の提示を含めて、その日が初めて会話をする場である必要はないんです。お互いのイメージが悪くならなくて済みますから、ある程度お互いに納得してから「契約更改」でいいと思います。

査定は「どんぶり勘定」

―― 細かい査定ポイントとかって説明されるんですか?

里崎:評価はもう完全に“どんぶり勘定”ですよ。

―― どんぶり…勘定…?

里崎:だってホームラン15本と14本の1本でいくら違うんですかって。ヒット100本と99本、打率の1厘とか。もし全部を正確に測るとしたら、たぶんそんなキリのいい金額にはならないですよ(笑)

―― ここが良かった、とかの説明はあるんですよね?

里崎:それはありますけど、シーズン終わっての後付けですよね。例えば事前に細かい査定表のようなものが開示されていて、お互いに確認した上でのやり取りだったら分からないですけど、後から出てきた評価ポイントなんて、あってないようなものですから。

―― となると、交渉って難しいですよね。

里崎:自分から「ここどうなってますか」ってツッコんだら大体だめですよ。細かいポイントが決まってないうえ、「加味してるよ」って言われて終わりです。

―― 金額を上げるコツとかってないんですかね。

里崎:自分から欲しい金額を言わないことです。

―― アピールをしないこと?

里崎:それもそうですし、球団から「来年いくら欲しい?」って聞かれても、言っちゃダメです。

―― と、言いますと?

里崎:これって世の中すべてに通用することだと思いますけど、例えばお小遣いとか。「1万円欲しい」って正直に言ってしまった時、もし相手が「2万円あげても良い」と思っていたら、「ラッキー」と思われますよね。もし相手が「5000円しかあげたくない」と思っていたら、「そんなにあげられない」って言われるんですよ。言っても得することがないでしょ。

―― 球団からの言葉は罠なんですね。

里崎:めちゃめちゃ罠ですよ。僕の場合は「100億円くらい欲しいです」って言ってはぐらかす(笑)

―― 罠を回避して、ようやく交渉と。

里崎:乗らなければ、だいたい流れますからね。「で、いくらくれるんですか?」と聞いていく。お金の交渉って全部そう。相手の懐事情次第ですから。

―― とはいえ、そこから引き出していかないといけませんよね。

里崎:あとは感情的にならないということです。常に冷静に、そして先にしゃべらない。交渉で主導権を握るのって、先にしゃべるじゃないんです。相手にしゃべらせることなんです。

―― 先手必勝ではない?

里崎:だって、先に「これだけやった」とアピールしたところで、「知ってるよ」と言われたら終わり。たとえ相手が知らなかったことでも、先に言っちゃうということは、答えを与えてしまうことなので。

―― 先に説明をしてもらうと。

里崎:話を聞いたうえで、ひとつひとつのツッコミどころを潰していく作業です。「ここどうなってるか知ってます?」と聞けば、相手は「知ってる/知らない」で答えるしかない。「知ってる」で納得いく説明・回答がなければチャンスだし、「知らない」なら加味していないということだから、上積みポイントになると。

―― 自分から欲しがったらダメなんですね。

里崎:欲しい時って、どうしても感情的になりがちですからね。「僕こんなに頑張ったのに」って。それで良い方向に転ぶことってほぼないですよ。

―― 深いですね。

里崎:もちろん、それができるくらいの実力・実績は必須ですよ。「いいですよ。他所をあたるだけなので」と言えるだけの価値がないと。ぺーぺーの時なんか「はい、さようなら」と言われて終わりですから。

取材・構成=尾崎直也(おざき・なおや)



聞きにくい契約更改のハナシを里崎智也さんに聞いてみた・その2

頑張ったから」アップ!?

 先日の放送で最終回を迎えたアニメ「グラゼニ シーズン2」。なかでも見どころのひとつとなっていた“契約更改”について、当事者しか知りえないウラ側を聞いてみようというインタビュー企画の第2弾。

 【第1弾】に引き続き、今回もプロ野球OB・里崎智也さんに契約更改のエピソードや、今オフも大きな話題を呼んだFA移籍に関するお話も伺った。

―― 金額の交渉はしたことがないとおっしゃっていましたが、不満に思うことがなかったということですか?

里崎:そうですね。僕の場合は「自分を厳しく見積もった時のライン」と「自分を甘やかして見た時のライン」を決めて、それを頭に入れて交渉に行っていたので、提示がその間に入っていれば一発サインです。

―― そのライン設定が正確だったということですね。

里崎:想定のラインから外れたことは1回しかなかったですね。それも上回った方で。いつも「妥当やな」と思っていました。

―― なにかアピールをしてアップを勝ち取ったこととかは…?

里崎:1回だけありましたね。WBCで優勝した時に、先に交渉した俊ちゃん(渡辺俊介)が「頑張ったなって500万円もらった」とか言っていたので、「いや俺が一番頑張りましたよ」と言ったら上がった(笑)

―― そんなこともあるんですね(笑)

里崎:だからやっぱり、評価は“どんぶり勘定”ですよ。

―― ダウン時の交渉も聞こうと思いましたが、里崎さんは大幅ダウンもないまま引退していますよね。

里崎:そうですね。辞める時もすんなり、でした。

―― 余力を残しての引退だったと思いますが、現役に未練などはなかったのでしょうか。

里崎:ユニフォーム着ている時間よりも、ユニフォーム脱いでからの“第2の人生”の方が長いですからね。男性の平均寿命が約80年と言われていますけど、そう考えるとリスタートが遅くなればなるほどが“第2の人生”の成功確率は低くなるわけで。ケガもありましたが、自分の思い通りのプレーが出来なくなってまでプレーするよりは、早くリスタートを切りたいと思っていました。周りの方に「まだ出来たんじゃないの?」と言われる中で引退できたのは幸せです。

“野球以外の部分”の評価

―― グラウンド外の働きって、年俸に加味されるものなのでしょうか。

里崎:ほぼないでしょうね。見えないところでやっている人もいるわけで、そんな部分を盛り込むのってどうなのかなと。あるとしても、メディア受けするように球団がそういう名目を付けて言っただけとか、そんな気がしますけど。

―― 里崎さんはかなりファンサービスやイベントに積極的だった印象があります。

里崎:「ファンサービス査定」って耳にはしますけど、反映されたことはなかったですねぇ。

―― ほかにも、ベンチの雰囲気づくりとかもよく聞きます。

里崎:ファンサービスと同じですけど、見えないところでやっている選手もいますからね。その辺を正確にジャッジできないのに、査定ポイントにはできないですよね。やっぱり後付けですよ。

―― 今年はその部分に関して「保留」が出たりも…。

里崎:それは選手側が言ったんですよね?それしか言うことがなかったということでしょ。上がったんですか?

―― 変わりませんでした。

里崎:まぁ、それはそうですよね。自称ですから。評価は第三者がするものですし、言っても響きませんよね。だって車屋さんでも、「僕ね、今年車1台も売れてませんけど、ショールームの雰囲気作りは常に全力だったんですよ」って言って、ボーナス上がらないでしょ(笑)

―― それはそうですね(笑)

里崎:何もない時ほど、情に訴えかけるしかなくなるんですよね。自分からそれを言っても、突っぱねられて終わりです。

「評価は“お金”」

―― 時期的にFAのことについてもお聞きしたいのですが、里崎さんは行使を考えたことは?

里崎:僕はロッテでもらっている給料に不満がなかったですからね。

―― よくある「評価を聞いてみたい」という感情も?

里崎:結局、評価って“お金”ですからね(笑)他所だったら自分にどれだけ払ってくれるかな、という。僕は金額的な不満はなかったので、その願望もなかったです。

―― 「野球人生、1チームだけで終わるのはもったいない」というような声もありますが、移籍したいと思ったこともなかったですか。

里崎:僕の場合、まず「面倒くさい」というのが…(笑)キャッチャーなので、新天地でそこの投手のことを理解して、関係を作ってというのをイチからやらないといけない。ほかのポジションだったら考えなくてもいいでしょうけど、軽く移籍しようとか考えられないですよね。

―― たしかに、仕事量は多いですね。

里崎:あとは金額だけでなく、楽しくやれるかどうかということ。例えばですけど、ソフトバンクに行って優勝して泣けるかな…とか(笑)ロッテで優勝したら泣けると思うんですよ。そういった意味でやりがいもあって、金額面も不満がない。引退後のこととかも考えてみて、総合的に見たら残った方が良いですよね。

―― 移籍で評価を下げてしまうリスクもありますよね。

里崎:目先のお金に飛びついて後悔する人もたくさんいますからね。今振り返ってみても、残っていて良かったなと思いますし。隣の芝生は青く見えるんですよ。

―― 最近は移籍に対するファンの反応も過敏になってきています。

里崎:ファンの人の気持ちも分からなくもないですが、あまりにも心無い言葉とかが出てしまうのはね。自分事として考えてみてほしいんですけど、皆さんも仕事でヘッドハンティングされて、相手は誰もが知る一流企業で、給料は倍です。待遇も良くなります。これで断る人いますかね?(笑)

―― たしかに…(笑)選手側から見た、味方選手のFA移籍ってどんな気持ちなんですか?

里崎:いや、なんとも思わないですよ(笑)僕があまり他人に興味ないっていうのはあるかもしれませんけど、チームのことを考えるのは監督であり、編成ですからね。僕はただの選手なので。来る者は拒まず、去る者は追わず、です。

取材・構成=尾崎直也(おざき・なおや)

(ベースボールキング)

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≪2018/12/28≫

レギュラー高齢化目立ち、猛追も0.5差届かず 4位でCS逃す…2008年のロッテ

西岡、今江、大松以外のレギュラーはほとんどが30代

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。今回はロッテだ。

2008年 千葉ロッテマリーンズ 73勝70敗1分 勝率.510 4位

 この年のパ・リーグは首位西武から4位ロッテまでが4.5差という混戦。序盤に独走した西武が調子を落とし、2位オリックス、3位日本ハムが追いかける構図。ロッテは5月、6月と負け越して最下位に沈んだが7月に16勝9敗と盛り返し、3位日本ハムを急追したが0.5差でCS進出を逃した。

 4年目のボビー・バレンタイン監督は3回目のCS進出がならなかった。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1遊・西岡剛(24歳) 116試 473打142安 13本 49点 18盗 率.300(10)
2二・根元俊一(25歳) 110試 314打93安 3本 29点 9盗 率.296
3一・福浦和也(33歳) 105試 310打78安 1本 44点 0盗 率.252
4外・サブロー(32歳) 105試 346打100安 6本 56点 6盗 率.289
5外・大松尚逸(26歳) 134試 447打117安 24本 91点 1盗 率.262(24)
6三・今江敏晃(25歳) 117試 405打125安 12本 55点 3盗 率.309(6)
7指・ベニー(37歳) 97試 279打79安 5本 42点 3盗 率.283
8外・早川大輔(33歳) 133試 369打92安 5本 32点 18盗 率.249
9捕・里崎智也(32歳) 92試 330打86安 15本 45点 1盗 率.261
内・オーティズ(31歳) 100試 337打97安 11本 37点 1盗 率.288
捕・橋本将(32歳) 93試 280打87安 11本 55点 1盗 率.311
一・ズレータ(33歳) 73試 241打52安 8本 33点 1盗 率.216
外・大塚明(33歳) 103試 139打37安 3本 20点 7盗 率.266
外・竹原直隆(28歳) 67試 116打21安 3本 16点 1盗 率.181
二・堀幸一(39歳) 41試 93打19安 0本 6点 2盗 率.204

 遊撃の西岡は2年連続の3割、3塁の今江も3割を打ち、4年連続のゴールデングラブを受賞。大松も中軸打者として活躍したが、他の野手陣は固定できず、打線は猫の目打線となった。捕手の里崎が4番を打つこともあった。レギュラー級の選手は軒並み30歳を超え、高齢化が進んでいた。

先発投手陣は安定も救援の枚数が足りず

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・渡辺俊介(32歳) 26登13勝8敗 0SV 0HD 172回2/3 防御率4.17(18)
先・清水直行(33歳) 25登13勝9敗 0SV 0HD 165回2/3 防御率3.75(15)
先・成瀬善久(23歳) 22登8勝6敗 0SV 0HD 150回2/3 防御率3.23(7)
先・小林宏之(30歳) 23登5勝12敗 0SV 0HD 138回 防御率5.02
先・唐川侑己(19歳) 15登5勝4敗 0SV 0HD 81回2/3 防御率4.85
先・小野晋吾(33歳) 15登5勝4敗 0SV 0HD 73回1/3 防御率6.50
兼・久保康友(28歳) 33登4勝7敗 0SV 7HD 91回 防御率4.95
中・伊藤義弘(26歳) 51登0勝0敗 0SV 9HD 59回 防御率3.05
中・シコースキー(34歳) 54登5勝1敗 1SV 13HD 48回1/3 防御率2.23
中・小宮山悟(43歳) 33登3勝2敗 0SV 2HD 39回1/3 防御率5.72
中・川崎雄介(26歳) 65登2勝5敗 1SV 29HD 60回 防御率3.00
抑・荻野忠寛(26歳) 58登5勝5敗 30SV 1HD 58回2/3 防御率2.45

兼は先発、救援の兼任

 渡辺、清水、成瀬、小林の4投手がローテーションを維持。投球内容は優秀とは言えなかったが、試合を作ることはできた。

 2007年のドラフトで大阪桐蔭高の中田翔、仙台育英高の佐藤由規とともに「高校ビッグ3」の一人として注目された成田高の唐川侑己は、4月23日のソフトバンク戦で1軍初先発。勝利して「平成生まれ最初の勝利投手」になった。最終的には5勝。

 救援では2年目の荻野がクローザーに定着。中継ぎ陣ではシコースキー、伊藤、川崎が優秀だったが、枚数がやや足りない印象だった。

 この顔ぶれで現役選手は、野手では今年2000本安打を達成した福浦和也。今江は、FAで楽天に移籍して健在。根元俊一は今季限りで引退、コーチ就任。西岡はMLBに挑戦した後阪神に入団したが今季戦力外に。大松尚逸もヤクルトに移籍したが今季戦力外になった。

 投手では唐川が現役。成瀬善久はエースとして活躍したのちヤクルトに移籍。今季戦力外となったが、オリックスが春季キャンプで入団テストを行うという。

長野は入団拒否、育成の西野は今も現役、岡田は今年限りで引退

○ドラフト会議

1位 木村雄太(投手)東京ガス
2位 長野久義(外野手)Honda※入団拒否
3位 上野大樹(投手)東洋大学
4位 坪井俊樹(投手)筑波大学
5位 山本徹矢(投手)神戸国際大学附属高
6位 香月良仁(投手)熊本ゴールデンラークス

育成
1位 木本幸広(投手)日高高中津分校
2位 鈴江彬(投手)信濃グランセローズ
3位 角晃多(内野手)東海大学付属相模高
4位 生山裕人(内野手)香川オリーブガイナーズ
5位 西野勇士(投手)新湊高
6位 岡田幸文(外野手)全足利クラブ
7位 吉田真史(内野手)太田工業高
8位 田中崇博(投手)八日市南高

 ドラフトと育成ドラフトで12球団最多の14人を指名したが、2位指名の長野は入団拒否。

 本指名6人のうち、入団した5人はすでに退団。育成指名選手のうち、5位の西野が現役で投げている。6位の岡田は外野守備の名手としてゴールデングラブを2回受賞。今季、引退を表明した。

 バレンタイン監督は翌2009年に退任。退任に際して一部ファンが抗議行動を起こした。この年の観客動員は、前年から32万人増の141万人。この時期から熱心なロッテファンが増加し、人気は高まっていった。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

(フルカウント)
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