国際情勢について考えよう

日常生活に関係ないようで、実はかなり関係ある国際政治・経済の動きについて考えます。

弱者の恫喝

2007-02-14 | 地域情勢

むかしむかし、あるところに、札付きの不良少年がいました。この不良少年は、ちょっとした悪事を働いては、周りの大人に怒られていたのですが、あるとき度外れた悪事を働いたところ、周りの大人たちは怒るどころか、逆に怖気づいてしまい、頼むから悪いことをしないでくれと、いろいろなご褒美を持って、懇願しに来ました。不良少年は、この不思議な体験から、ものすごく悪いことをすると、逆にご褒美がもらえることに気づき、ますます悪事を重ねることとなりました・・・。

北朝鮮は、1994年にアメリカと核開発停止の約束をしましたが、その直後から北朝鮮は約束を破り、核開発を再開していました。国際社会は、この事実に8年後の2002年になってから初めて気付き、それ以来北朝鮮に様々な圧力をかけてきましたが、北朝鮮は圧力にまったく動じることなく、昨年暮れにはとうとう核実験に踏み切って、事実上の核保有国になってしまいました。そうしたら今度は、国際社会は、北朝鮮に支援(重油の提供)を差し出す代わりに、核開発を止めるよう申し入れることになりました。この話が非論理的であることは、小学生でも分かると思います。

 

今回の六者協議の合意を頭ごなしに否定することはできませんが、すでにいろいろな合意文書の抜け穴が指摘されていることからも(関連記事)、先行きが明るいものでないことだけは確かなようです。たいへん残念だったのは、1994年の米朝合意のときも(前回投稿参照)、アメリカはボスニア紛争という第一次世界大戦の初期に酷似した深刻な地域紛争への政策判断に神経を集中していて、また今回も、イラク戦争にかかりきりで、北朝鮮問題に外交・軍事・財政上のエネルギーを十分割けなかったことです。実は、北朝鮮もこの要素を織り込んでいたからこそ、昨年暮れにあえて核実験に踏み切り、今回の外交上の果実を得たとも言えます。

済んだことは仕方がないですから、今後は今回の合意文書を母体にして、核関連施設の運転停止、施設の解体等の具体的な手順を定めた付帯文書を作り、合意の実際の履行を担保する必要があります。もし、このような丹念なフォローアップをしないとしたら、今回の合意文書はただの実効性のない宣言のようなものになってしまうでしょう。これまで数年間の六者協議の努力が、すべて水泡に帰すことになります。

実は、北朝鮮問題がこじれて被害を受けるのは、日本などの周辺国や、アメリカのような覇権国だけではありません。実は、最大の被害者は北朝鮮の一般市民です。ですから、ある意味では、こうした人々の力も借りて、根本的な問題解決を図ることは理に適ったことです。今回の六者協議の結末は、外圧だけではどうにもならない五カ国の国力の限界を露呈したとも言えます。今後は、外圧だけでなく、内圧も利用して、無血の政権移行を図るような根本的な解決を探る努力も必要です。そうしないと、この弱者の恫喝はエンドレスに続く可能性があります。

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