国際情勢について考えよう

日常生活に関係ないようで、実はかなり関係ある国際政治・経済の動きについて考えます。

政治の世界は怖い?

2006-09-13 | 地域情勢

前回の投稿で、アメリカ連邦議会の上院の諜報(情報)委員会というところが、フセイン政権とアルカイダの連携関係を否定した報告書を公表したことに触れました。しかし、ここで大変興味深い点は、この上院諜報委員会というのは、委員長がブッシュ大統領と同じ共和党で、メンバーも8:7で共和党の方が多いということです。上院自体の多数派が共和党ですから、その中にある一委員会の構成がこうなるのは自然なことなのですが、それにしてもこのような共和党主導の委員会が、同時多発テロの5年目の直前の9月8日というタイミングで、あのような内容の報告書を出すということは、味方であるはずの大統領を背後から刺すようなもので、どうにも理解に苦しみます。なぜ、こんなことをしたのでしょうか。

 

アメリカの連邦議会というのは、1994年以来ずっと上下両院とも、共和党が過半数を押さえてきており、これまで絶大な予算承認権を振り回して、クリントン民主党政権を苦しめ、ブッシュ共和党政権の政策をフリーパスに近い形で承認してきました。しかし、今度の11月に行われる連邦議会の中間選挙(上院の3分の1、下院全員を改選)では、現在のところ与野党逆転も予測されるなど、大変な大接戦が見込まれています。その理由は言うまでもなく、ブッシュ大統領のイラク政策、対テロ政策にあり、議会選挙であるにも関わらず、大統領への信任投票のような奇妙な様相を呈しています。

現在のアメリカの有権者の心境というのは、共和党に入れようと思っている人は、大統領も共和党、議会も共和党で一致してもらい、とにかくアメリカ本土の防衛を徹底してほしいと願っているようです。一方、民主党に入れようと思っている人は、議会を民主党に牛耳らせて、その予算権を使ってブッシュ政権の過激な対外政策を、ことごとく物理的に止めさせようと思っているようです。同時多発テロ以降のアメリカでは、特に浮動票層にいる人々は、これまで前者の立場を取る人が多かったようですが、最近では後者の方に軸足を移す人も増えているようです。そういうこともあり、選挙の行方が、これまでの共和党に有利な傾向から、両党が拮抗する方向へ少しずつ動いてきているようです。

こうした世論の動きを考慮すると、さきほどの議会の諜報委員会の共和党メンバーなどは、「われわれはブッシュ大統領とは違う」というスタンスを有権者にはっきり見せて、民主党に傾斜しつつある浮動票の取り込みを図ろうと考えたとしても不思議ではありません。おそらく、あの報告書があのタイミングで出たことで、ブッシュ大統領の支持率はまた下がると思いますが、その一方で、あの報告書のおかげで、いま選挙戦を戦っている多くの共和党連邦議員候補への支持率は、浮動票が流れて少し上がるかもしれません。こう考えていくと、ここで恐るべきコワーイ"陰謀説"が浮上してきます・・・。陰謀説とかが嫌いな人は、もちろんここで読むのをやめてもらって構いませんが・・・。 

 

アメリカでは、大統領の三選というのは憲法で禁じられています。だから、すでに二期目のブッシュ大統領はもう選挙がなく、支持率をそれほど気にしなくてもいい立場にいます。しかし、スムーズな政権運営のためには、予算権を握る議会が共和党によって押さえられていることがどうしても必要です。

そこで私が思うのは、ブッシュ大統領は、議会を押さえるためなら、たとえ自分に多少不利になるとしても、あの報告書に盛られたイラク戦争に関する証拠くらい、議会にリークさせるのではないかということです。つまり、あの報告書の内容の出元は、ブッシュ大統領の周辺ではないかということです。大統領が、共和党の議会リーダーに会って、「これやるからさ。適当に流せよ。これで選挙勝てるだろ?」とか言って、議会のリーダーも、「サンキュー、ジョージ。あと二年、全部あんたの法案通してやるよ。」とか言ったかもしれません。これは、あくまで仮説の集積で、一つの遊びですが、こう考えると確かにすべての辻褄は合います。

「肉を切らせて、骨を絶つ」ということでしょうか。もしこれが本当だとしたら、アメリカの政治もなかなか泥臭いところがあるということなんでしょうか。

 

PS 近日中に、自民党総裁選を取り上げます。