今日、実家の母が「飼い猫が3日前から家に戻っていない」と、僕に伝えにきた・・・
『猫は、自分の死期が近づくと飼い主の元を離れていくと聞く・・・』
家族を失ったようなショックを受けた。
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彼女が産まれたのは、20年も前になる・・・
彼女の母猫は、野良の迷い猫。
僕の家の蔵に住み着き、5匹の子猫を産んだ。
『・・・彼女は、最後に生き残った1匹だった』
彼女の他の兄弟たちは、他所の野良猫に殺された・・・
そのことが、あまりの恐怖だったのか、鳴くことを忘れ、何も話せなくなった彼女・・・
幸い、これは2~3年で回復してくれた。
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しばらくして・・・今度は、母猫が姿を消してしまった。
『居候の彼女が、正式に「家族」となったのはこの頃だった』
気まぐれで、わがままで、結局最後までしつけることができなかった彼女。
それでも、お腹がすくと「にゃ~ん」と甘えた声で足元に寄り添ってくる。
冬の寒い夜は、自分から布団の中に潜り込んできて、僕の脇の下で傍若無人ぶりを発揮してくれた。
そして夜中でも、外に出たいと言って、部屋の扉の前で切なそうに「にぃゃぁ~ぉん」と鳴く君。
ここ数年は、僕が実家に住んでないせいだろう、逢うたびに細くなっていくのが目についた。
それに、年のせいだろう、日中の散歩より昼寝の時間が多くなった君。
『その君の全ては「思い出」の中だけになってしまうのだろうか?』
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別に最後を看取ったわけでもない、死んでしまったのを確認したわけでもない。
もちろん永遠の命などなく、常識的に人より長生きする猫など存在しないことも知っている。
しかし「不安」と言う文字が心を蝕んでいくのが、微かに滲む瞼で自覚する。
『生きてるなら、早く戻って来い』
今、こう思いながら、パソコンの前にある君の写真を見つめている・・・
【写真】