
今日、店にキングが来た。
アメリカで、キングといえばこの三人。
マーティン・ルーサー・キング牧師
スティーブン・キング
エルヴィス・プレスリー
店に来たのは、三番目のロックンロール”キング”プレスリー。本人じゃないもちろん。亡霊でもない。エルヴィス妄想のある人がCDを売りに来た。ごわごわの、ずれずれの、牛鬼みたいなヅラかぶって来た。びらびらの、キラキラの、白いジャンプスーツ着て来た。「自分のCDを売りにきた」と言って来た。サングラスの中の目が、もう非常に怖い。思わず手がカウンターの下の非常ベルへ伸びる。うそうそ、そんなもんないない。でも、これはやばいと瞬間思って、師匠が後ろにいたので、目で合図したら、隣に来て一緒に聞いてくれた。キングは古いCDを二枚カウンターに置く。私がそれを開けようとすると、「あーちょっと待って」かなんか言って、白いハンカチを出してディスクをていねいに拭く。さっと査定して、私が、「ええー二枚で一ドル五十セントです」というと、キングは首をかしげた。
「なんだと? 俺のCDがなぜそんな安いのだ?」
しかたなくいつものように私が、「一枚は2009年度に再版されたものなので状態がよければ二ドルですが、あまりに傷が多いので一ドル。もう一枚は、1994年度版なので五十セントです。」と率直に答えると、キングは私が何を言ってるかまじ理解できないようで、ぽかんとしてる。
そこへ入ってきた客が、「ヘイ、キング」と声をかけた。キングは私をにらんだまま後ろの客に手を振り、ずっと私から目を離さず、「ここは俺の来る場所じゃなかった。商談終り」と静かに言い、二枚のCDをゆっくりつかんで、白いズボンの裾をひるがえして出てった。まじびびった。
今日、楼前先生のところに新しい生徒が来た。ロシア人の十九歳の女の子。若いときのジョディフォスターに似てる。レッスンが終わったところにちょうど私が帰った。先生がハンバーガーを焼いてる間に、私はシューマンコンチェルトを聞かせてもらう。彼女はジュリアードの生徒で、趣味でバレエを習ってる。気さくに壁のところに立ち、一番ポジションでプリエして見せてくれる。完璧なターンアウト。別に苦労なしに最初かららくらくできたんだって。いいなあ。
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