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ミセスローゼンの道後日記

古本に囲まれてゐる猛暑かな


商品の加工に夢中になり、気がついたら両手の親指人差し指中指の爪から血が滴ってた。吸血鬼が見たら理性をおさえきれない瞬間だろう。ペーパーカットも毎日で、ジャックバワーの背中みたいに手がなっちゃってる。先日はレジの下にしゃがんで物を入れようとしたら、腰に小さな稲妻が刺さったみたいに冷やりとして、目の前が真っ暗になった。歩けないほどじゃないが、もう働けない。店を早退して、鍼の治療に行く。一回六十ドル。一回でだいぶ楽になる。もしかしたら保険がきくかもしれない。(それが唯一のグッドニュースだよ。)
下宿に帰ると、楼前先生が悲しい声で、「おやめなさい」と言う。そんな思いをしてまで働くことない、いいほうのチェロを売るから、それで君一人くらい餌をやれる、と言う。でもそう簡単には売れんやろ。っていうか、夏のかき入れ時に、ぎっくり腰で休み続けてたら、こっちからやめるより先に首になってしまうよ。膝の悪いのが直る暇がないのだなあ。膝をかばって一日中立ち仕事してるので、とうとう腰にきてしまったのだなあ。バレエにも行けなくて寂しいなあ。普通に働いて生きてくのって厳しいなあ。
「座ってできる仕事はないのですか?」と先生が聞く。チェリストは座ってできるからいいよね。
「涼しくてきれいなクラブで男性の隣に座って、お酒をまぜたり、楽しいカンバセーションしたり、そんな仕事がいいんじゃないの?」とさらに先生が言う。あほらし、と思う。先生は日本ツァーに行ったとき、主催の人にクラブで接待してもらった。きれいな日本人女性は座ってお酒を混ぜて上品に話すだけ、彼女に触ったりしてはいけないと言われた。見せたり触ったりさしてくれるのは別の国の女性だったそうだ。それってひどい話だよ。でも先生の中ではそれがクラブのイメージ。「とびきりいい靴と洋服を奮発して面接に行きなさい。それがコツです。」などと、乗り気になっちゃってる。一番肝心なことを忘れてる。五十のババーを隣に座らして高い酒をまぜてもらいたい客がどこにいるかつーことよね。私が採用されるわけがない。客が全員日本びいきの老ミュージシャンならともかく。無理だって。無理だろうよ。
ああ生きてくのって、食べてくのって大変。腰も痛いし。

見えにくいけど、この写真はブルックスブラザーズのショーウインドウ。剥製のリス。これってクレイジーだと思うよ。このために殺したんじゃなくても死んだリス堂々と飾って、しかも芸術性・ファッション性はえらい低い。

コメント一覧

十七子
鍼の先生
竹中直人みたいな顔で、声が低いのです。で、痛いところへぐさっと打って、「大丈夫ですか?」って静かに聞く。
私「ちょっと痛いです。」
先生「まだ痛い?」
私「けっこう痛いです。」
先生「がまんできないくらい痛い?」
なんてね。団鬼六の小説みたいですよね。って知らないか、更紗さんは。

更紗
お疲れさまです
鍼治療できるとこあって良かったですね。腰に効きますよ~。
ズンズンと身体の奥に届く鍼治療、大好きです。
昔、本に関わっていたのでよく紙で指を切りました。痛さがわかります。

膝&腰が早くよく治りますように。。。
あったかい楼前先生が守ってくださいますね。

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