Nさんの寄稿の続きです。
3日目はザハロワとマトヴィエンコが主役を務めた。
ザハロワは劇場を圧倒するようなオーラを放つ、華やかなマルグリットであった。
それだけに病に苦しむ悲しみが際立ち、悲劇性に説得力があった。
アルマンと2人で郊外の別荘にやって来たときは少女のような可憐さもあり、マルグリットの様々な面を明確に演じていた。
日本ではどうしてもオデットやキトリを踊る機会が多いがドラマティックな役柄を演じる舞台をもっと観たいと思わせた。
またここボリショイでも人気は絶大でカーテンコールはいつまでも続き、最後は1階席の観客の多くが舞台近くまで来て拍手を送っていた。
マトヴィエンコは初演以上に喜怒哀楽の表現がはっきりとしていたように感じた。
そして慣れている広々としたホームの劇場のためであろう新国立でのとき以上に跳躍や回転がダイナミックであった。
そのほか印象深かったのは2幕のメヌエットであった。
この作品中唯一コメディタッチな場面であるのだが、現地の観客達が本当に楽しそうに笑ってくれたからである。
というのも、ロシア到着からこの場面になるまで声を上げて笑っているロシア人になかなか出会わなかった。
果たして笑ってくれるのか当初は心配でならなかったが、いざその場面になるとあちこちから笑い声が聞こえ、鑑賞前の心配を吹き飛ばしてくれた。
トレウバエフさんと吉本さんの巧さに改めて感服した。
それから、初演のときと変わっている箇所があったので紹介したい。
まず、チャルダシュの人数が3名から4名になっていた。
川村さん、遠藤さん、西山さん、本島さんで軽快で楽しげな雰囲気を作り上げていた。
それから、アラブの踊りはなくなり、代わりにジプシーの音楽に乗ってジプシーの女性とアラブの男性のパ・ド・ドゥが踊られた。
ジプシーは湯川さん、アラブは芳賀さん。
アクロバティックにそして縦横無尽に踊り回るなど大胆さはこの作品の中で抜きんでおり、良いスパイスを添えていた。
ボリショイで『椿姫』を上演すると知ったときは、いくらザハロワやマトヴィエンコが気に入っているとはいえこの静かな作品を海外公演、しかもバレエの本場であるロシアで上演して成功するのだろうかと正直いたく不安だった。
しかしながら、会話の詳細はロシア語の知識が殆んどないため分からなかったが、幕間や終演後は、周囲からは大いに堪能できた、楽しめた、というような声が耳に入ってきた。
日本とは違い、傾斜のある舞台にダンサー達は練習で四苦八苦したそうだが、本番ではあたかも踊りなれた新国立劇場で踊っているように見えるほど、しっかりと踊りきっていた。
ボリショイバレエ学校に留学中の日本の生徒さんも何名か鑑賞に訪れていて、彼らもまた、日本のバレエ団の成功を目の当たりにして感慨深い思いで一杯になったであろう。
超絶技巧満載のグランドバレエではない作品であっても本場の観客を惹きつけた新国立劇場のダンサー達の姿に心から感激し、誇らしくなった。
次回の海外公演にも期待したい。
上の写真はNさんが撮影された当日のボリショイ新館の横の入り口付近の写真ですがこの拡大した下の写真を見るとこの椿姫のポスターですね。
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