ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団 『パゴダの王子』 2011年11月1日(火)3日(木)

2011年11月06日 | Weblog

初日に続きNさんは『パゴダの王子』1日、3日もご覧になり
舞台美術や照明も含め、初日よりも楽しんで鑑賞できたとのことです。

下記寄稿です。何時もながらNさん寄稿ありがとうございます

写真は舞台模型です。

新国立劇場バレエ団 『パゴダの王子』 2011年11月1日(火)3日(木)


さくら姫:長田佳世
王子:芳賀望
皇后エピーヌ:川村真樹
皇帝:マイレン・トレウバエフ

北の王:福田圭吾
東の王:奥村康祐
西の王:小口邦明
南の王:厚地康雄

道化:吉本泰久
宮廷官吏:貝川鐵夫

妖怪:高橋一輝 野崎哲也 八木進 小野寺雄

雲:西川貴子 北原亜希 千歳美香子 川口藍 成田遥
  古川和則 輪島拓也 アンダーシュ・ハンマル 小柴富久修
  田中俊太朗 原健太 宝満直也 宇賀大将(交替出演)

星:大和雅美 石山沙央理 奥田花純 五月女遥 盆子原美奈 益田裕子

泡:さいとう美帆 高橋有里 寺島まゆみ 寺田亜沙子 堀口純
  丸尾孝子 井倉真未 加藤朋子 柴田知世 細田千晶

タツノオトシゴ:八幡顕光 江本拓 奥村康祐 福田圭吾
         小口邦明 清水裕三郎 林田翔平(交替出演)

深海:貝川鐵夫 小柴富久修

炎:大和雅美 奥田花純 盆子原美奈 益田裕子

長田さんのさくら姫は快活で前向き、
どんな試練が立ちはだかろうとも持ち前の明るさで切り抜ける
頼もしい姫だった。
さくら姫は全編通して踊る量が多いが、
歯切れ良い踊りで終始舞台を牽引していた。
中でも自然界を駆け抜けていくときの
泡や炎など様々な自然と共に踊り出すところでは
確かな技術が光り、職人芸を堪能させてくれた。

芳賀さんは妹思いな優しい王子を生き生きと明るく演じ、
代役を立派に果たしていた。
また長田さんと良いパートナーシップを築き上げ、
終盤のパ・ド・ドゥでのいつ転倒してもおかしくないような
複雑な振付も難なくこなし、技術の高さを感じさせた。

ただ残念だったのは眉を細く描き過ぎていたために
大衆演劇の役者さんのように見えてしまったことである。
劇場側での指導なのか理由は不明だが、
せっかくの生まれ持った顔立ちを生かすためにも
もっと自然な状態の方が良かったのではと思う。

川村さんのエピーヌも似合っていた。
善良で温厚な役柄の印象が強く
悪女をどう演じるか楽しみにしていたのだが、期待以上であった。
登場時の和装姿は雛人形のようでたおやかな平安貴族そのものの姿であったが、
物語が進むにつれて内面から徐々に毒気を滲ませる恐ろしい皇后であった。
湯川さんが演じる見るからに怖いエピーヌとはまた異なる
おどろおどろしい魅力を持っていて、新境地を開拓していた。

3日は上の階から鑑賞したため
照明や舞台美術の美しさがより感じられた。

照明は緻密で繊細、特に東西南北4人の王のソロでは
それぞれの性格、地域性を思わせるデザインが舞台に広がり
工夫に富んでいた。

さくら姫の旅では、進行と共に
舞台全体を囲むように波や炎のセットが下り、
その後はパリのセットが後方から前に出てくるなど
迫力があり、飛び出す絵本を眺めているような気持ちになる。

天災、治安、経済悪化と国内外問わず歪んだ状態で
将来への不安が募る状況にある中、
多くの試練を乗り越え最愛の兄と再会を果たすさくら姫の行動力は
心に訴えかけてくるものを感じた。
ビントレーの込めた強いメッセージが伝わる作品である。

5日は米沢唯さん、菅野英男さんペアの主演を鑑賞する。
揃って入団し、鮮烈なデビューを飾った昨シーズン開幕公演の
シンフォニー・イン・Cの第一楽章、
そして先月のオープニング・ガラのドン・キホーテで披露した
正統派のクラシックはいずれも観客を唸らせ、印象深いお2人である。
初主演の舞台に期待したい。



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2 コメント

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Nさん、同感ですね (aruyaranaiyara)
2011-11-06 09:40:43
この日のパゴダは、川村エピーヌに尽きます。

>毒気を滲ませる恐ろしい皇后

ひたすら美しい容姿のお雛様ですが、
その佇まいは、Nさんのおっしゃる、
凄まじいまでの邪悪を瞳と身体全体から放ち、
他を圧倒されてましたね。
美しいが故に、ひたすら怖いと!

今回は、お出にならなかった、
佇まいでは他の追従を許さない、
プリンシパルの山本さんとの絡みを観たかったです。
さぞかし、美と内面発進の競合になったでしょうね。

Nさんの、照明についてのお話、興味深く伺いました。
私の定位置、上の階での鑑賞の楽しみ方を、
教わりましたね。
いつもながらに、感謝いたします。
返信する
引き続きありがとうございます (N)
2011-11-06 23:43:02
aruyaranaiyara様

引き続きコメントいただきありがとうございます。

>凄まじいまでの邪悪を瞳と身体全体から放ち、
他を圧倒されてましたね。
美しいが故に、ひたすら怖いと!

ええ本当に、身体の奥底から光を放っているようで
圧倒されました。
『美しいが故に』はまさにぴったりです。

>今回は、お出にならなかった、
佇まいでは他の追従を許さない、
プリンシパルの山本さんとの絡みを観たかったです。
さぞかし、美と内面発進の競合になったでしょうね。

こちらも同感です。
より深みのある物語になったのではと思います。
ペアを組む機会は少ないようですが、
昨年5月、ビントレー振付のガラントリーズで
お2人のパ・ド・ドゥがあり、
溜め息物の美しさだったことは
印象深く残っています。
つい先日発売されたアラジンのDVDブックに
ビントレー作品の紹介写真として
掲載されていますので、
是非ご覧になってみてください。

>Nさんの、照明についてのお話、
興味深く伺いました。

舞台上にはきらきらとしたラメが散りばめられて
繊細な光が舞台一杯に広がっていましたが、
このような照明の色合いを堪能できるのは
上階での鑑賞の醍醐味ですね。
泡や深海場面での深い味わいのある
色のセンスも良く、
日本の照明技術の素晴らしさに
改めて感服いたしました。


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