地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

29.ビール工業 地理総合

2019-03-30 11:01:48 | 地理講義

ビール工場の立地
ビールの価格は安い。輸送費用節減のため、消費地である大都市周辺に工場がつくられる。沖縄にもビール工場がある(オリオンビール)。



ビールの90%は水である。水はビールの原料であるとともに、製造工程でも多く使われる。ビール大瓶1本633mℓ当たり5ℓ~10ℓの水を使う。
地下水を大量に得ることのできる工場では地下水を使う。水道のような残留塩素はないし、地下からただ同然で得られる。地下水にまれに含まれる雑菌を除去し、ミネラルをビール用に調整するための経費はかかる。ミネラルなどの含有量は工場や季節・天候によって変動するため、ビールの品質維持のための経費もかかる。
地下水を使わずに公共の水道水を使う工場もある。価格は高いが、水質はほぼ全国同基準で供給されるため、ビールの安定供給には都合がよい。
地下水をビール原料用の水とし、製造工程で使う水を水道水とする工場もある。

麦芽
二条大麦を水に浸して発芽させ、熱風で芽を残した穀粒の成育を止め、さらに細かに砕いたものが麦芽である。麦芽はビールの色と甘みを出す。ビール1本に10グラム程度を使う。
二条大麦の産地は栃木県、佐賀県、福岡県などである。各ビール会社が農協単位で二条大麦を買い取る。国内産二条大麦から麦芽を作ると1トン15万円だが、輸入麦芽は4万円である。国産麦芽を使わずに、輸入麦芽を使う傾向が強まり、国内全ビールの90%は輸入麦芽を使っている。
国産麦芽100%を使ったビールが地域・季節限定で販売されることがある。

ホップ
ビール1本にに1グラム使われる。香りや苦みを出す。雑菌をおさえたり、泡持ちを良くする効果もある。日本のホップ産地は岩手県、秋田県、山形県、北海道などである。各ビール会社と地域ごとの生産者組合との取引である。
日本は気候的にはホップ栽培に適しているが、ホップの栽培農家は高齢化と後継者難のために減少傾向であり、輸入ホップが90%を占める。

 遠野のビール
岩手県遠野市は国内最大のビール産地である。ホップの県別生産面積(生産量)は、
岩手県53ha(116t)、秋田県33ha(80t)、山形県23ha(53t)などである。東北・北海道はホップの生産適地である。


遠野ホップ農業協同組合がキリンビールと契約栽培している。1963年に7haからホップ栽培が始まり、最盛期の1974年に239戸112haであった。2018年には64戸53ha(116t)に減少したが、それでも全国のホップ生産量の1/4を占める。64戸で2億6千万円を販売、1戸当たり400万円であり、低い金額ではない。しかし、高齢化と後継者難の問題が深刻である。キリンビールは積極的にホップ栽培を奨励しているが、なかなか実を結ばない状況である。キリンビールは、仙台工場限定で、
遠野のホップだけを用いたビールを製造している。
サッポロビールは北海道富良野で生産される大麦とホップを用いた、サッポロ工場限定のビールを製造している。


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