東方のあかり

東アジア(日、韓、中+その他)のまとまりを願ってこのタイトルにしました。韓国在住の日本人です。主に韓国発信の内容です。

北の恋人たち

2023-01-22 00:00:00 | 韓国物

北朝鮮にこんな言葉がある。「男性は年を取るほど金の価値
だが、女性は幼いほど金の価値だ」。過去の北朝鮮男性は
軍服務以後、良い所に職場を配置されたり、除隊後大学を
推薦されたり卒業して来ることになれば誰もが望む一等新郎
候補だ。このような理由で男性は「年を取るほど金の価値」と
いうことになる。

北朝鮮は1990年代後半までは結婚適齢期が女性20~25歳、
男性27~30歳程度だった。結婚適齢期の女性たちは25歳に
なると両親と周辺の知人たちから「いつ結婚するのか」という
質問を受ける。北朝鮮の社会通念上、25歳を過ぎると女性は
「老妻」に分類される。しかし最近になって結婚に対する認識
が変わり結婚適齢期が高まっている。また、結婚に対する根
本的な価値観も変化し始めた。

多くの脱北者は、北朝鮮の若い世代の認識変化には経済問
題と外部から入ってくる映像物などが大きな原因として作用
したと口をそろえる。北朝鮮の経済難、別名「苦難の行軍」は、
生計問題だけでなく男女の恋愛、結婚に対する考えも変える
決定的な契機になった。

ここ数年前から結婚せず一定期間同居したり、結婚式をした
後も子供を産む前まで法的に結婚登録をせずに暮らす同棲
恋人が増加した。あえて結婚登録をしない理由の一つは
配給制が瓦解し、女性が結婚して夫の扶養家族に登録され
たとしても実質的な恩恵を得にくいためだ。

また、同棲する場合には一緒に暮らして別れても複雑な離婚
手続きが必要ないためだ。北朝鮮では法的には離婚が認め
られているが、その過程で女性の意思が十分尊重されにくく、
手続きも複雑だ。このため若い女性たちは、ちょっと暮らして
みてから結婚を決めるやり方でまずは同棲をやってみようと
いう女性が増加しているわけだ。

彼らが(婚前)同棲をする理由については「最も重要な部分
は女性の立場や考え」とし「母親世代とは異なり家族に対す
る犠牲より自身の人生と未来がより大切だという考えが強く
作用するようになっているようだ」。

実際、北朝鮮で同棲経験のあるB氏は「過去には恋愛した
だけでも無条件結婚しなければならないと思ったが、2010
年以後には大きく変わった」とし「一生を共に生きる人なの
だから結婚前に自分と合うのかも見なければ分からない
のではないか」と話す。

新型コロナウイルス感染症以降、北朝鮮の女性たちが新郎
候補に望む男性像が変わった。過去には、北朝鮮女性が
最も望む「夫」観は、平壌(ピョンヤン)に居住する男性だっ
た。その後、保衛員や安全機関関係者らに対する選好度
が高かった。

最近は海外に親戚がいる男性、すなわち韓国に家族がい
る男性を最も好む傾向という。コロナ19の事態で深刻な経
済難に苦しんでいる北朝鮮の住民たちの中で脱北した家
族がいる住民たちはそれでも生活が良いことが評価され
ているためだ。

なので韓国から定期的にお金を送ってあげる両親や兄弟
がいる男性が一等花婿候補だ。韓国に脱北した人たちは
自分の親や子供、兄弟を北朝鮮に残してきたことに対す
る「済まなさ」をもっており、これをお金で弁済しようとする
性向が強い。一度に100万ウォンから多くは、数百万ウォ
ンまで送ってあげる。もちろんこれらの金も余裕があって
送るのはではない。自分が使うお金を節約して送るのだ。
このように送ってあげたお金なら、北朝鮮で金持ちとまで
はいかなくても少なくとも飢えることはない。

結婚に対する北朝鮮の若者たちの考えを変えたのには、
韓国の映画やドラマも決定的な役割を果たした。北朝鮮
の女性たちに「ロマンチックな愛」を伝えたのは、外部か
ら流入した映画、ドラマ、Kポップなどの文化コンテンツだ。

特に韓国映画とドラマは、北朝鮮メディアでは珍しい男
女間の愛とロマンチックな恋人関係を北朝鮮女性たちに
見せてくれた。彼らは映画やドラマに現れる韓国人の行
動方式、例えば男性に立ち向かう女性の姿、女性に配
慮する男性の姿に注目し、これを北朝鮮男性の行動様
式と比較するようになった。

金正恩政権後、韓国映画やドラマに対する取り締まり
を大幅に強化したが、若い女性たちは統制を避けて
韓国映画やドラマを見て、信頼できる友人と話を交わす。
そのように映画やドラマで見せてくれる愛の情緒は、
若い北朝鮮女性たちの情緒に反映される。映画やドラ
マが見せる男女間の意思疎通と人間関係の方式は、
既成世代とは異なる考えと行動様式を作り出した。

外部社会から流れてきた新鮮な文化は、恋愛関係で
女性が積極的に愛を表現するセクシュアリティ
(Sexuality)の変化にもつながった。2010年以降、国
境地域と大都市を中心に2030世代女性の間では男女
間の自由な恋愛とスキンシップ、避妊と中絶、(婚前)
同棲などセクシュアリティ側面の新しい実践が行われ
ている。

これに対する社会的視線は地域によって差があるも
のと見られる。平壌のような大都市や中国と隣接した
国境地域では、手を繋いだり腕を組んで歩く恋人たち
を簡単に見かける。しかし、農村地域ではまだそのよ
うな行為をすれば厳しい視線を浴びたり、非難された
りすることになる。

北朝鮮で同棲する恋人たちは、住宅問題をどう解決
するだろうか。多くの脱北者の証言によると、3つ程度
の方法がある。

第一に、家を借りることだ。同棲する若い恋人たちは
主に一人暮らしの老人の家にお金を払って彼らと一緒
に暮らす。彼らが家主に支払う家賃は、毎月北朝鮮通
貨3万ウォン程度だという。北朝鮮専門メディア「デイリ
ーNK」によると、2023年1月9日基準で1ドル当たりの
北朝鮮通貨は8400ウォンだ。ドルで計算すると約3.4
ドル程度だ。ウォンにすると3744ウォン=390円だ。

では、なぜ彼らはこの方法を選ぶのだろうか。何より
も随時行われる宿泊検閲を避けるためだ。宿泊検閲
にひっかかっても高齢者の孫娘や親戚だと言い張れ
ば、比較的簡単に見過ごされる。検閲にかかる場合
も、大抵は賄賂を渡せば解決できる。

第二に、旅館を借りて生活する場合だ。北朝鮮では
ほとんどの地域に旅館が1、2軒ずつ存在する。さま
ざまな理由で、他の地域から来て寝る場所がない場
合や、汽車に乗り遅れて一晩泊まらなければならな
い場合に備えたものだ。そのため、北朝鮮ではほと
んどの旅館は駅の近くに位置している。

しかし北朝鮮住民は宿泊料のため旅館をあまり利用
しない。そのため、大半の地域の旅館は空いている
状態だ。旅館を管理するところではお金を稼ぐため
に人々に1か月ずつ賃貸してあげる。もちろん不法だ。
しかし、北朝鮮では1990年代の苦難の行軍以後、秩
序が崩れ、不法も合法になって久しい。旅館を1か月
間借りる費用は、北朝鮮通貨で2万ウォン(260円)
程度だという。

第三に、家を買い入れることだ。北朝鮮の市場が本
格的に活性化し、過去とは違って未婚の若い女性た
ちも商売をするケースが多くなった。手腕が良い場合、
多くの富を蓄積することになる。お金を稼いだ女性た
ちは、自分たちで男性を選んで同棲する。この場合、
家を購入するのは女性の方だ。しかし、このような
ケースが多いわけではない。住宅価格が高いため、
家を買える人があまりいないためだ。

北朝鮮の若い恋人たちは、主にどこでデートをし、
愛を分かち合うのだろうか。地域によって偏差がある。
平壌の場合、若い男女がデートする場所が比較的
多い方だ。彼らは遊園地やゲームセンターなどを
転々としながらデートができる。

平壌以外の地域の場合はそうではないため、主に
夜にデートをする。一日の仕事が終わった夕方に一
緒に出て公園の椅子に座って話をしたり芝生に座っ
てデートを楽しむ。このように夜、ひっそりとした場所
でデートし、密かに恋を交わす恋人たちもいる。

最近になって北朝鮮でも韓国のように「非婚」を選ぶ
女性が増えている。北朝鮮の男性は依然として結婚
しなければならないという考えを持つ場合が多い。
一方、女性たちは出世に対する関心や経済的な能
力があるなら、あえて結婚する必要はないという考え
から非婚を選ぶケースが増えている。

北朝鮮の女性たちが結婚を避ける理由の一つは、
結婚後、女性たちに課される労働負担をこれ以上
運命だと思って生きないということだ。北朝鮮では
結婚後、男性に代わって女性が市場活動を通じて
家族の生計を維持することが当然視され、まだ家事
労働も女性が主に担当しているが、若いMZ世代は
そのような暮らしを拒否するようになっているわけだ。
(朝鮮日報ベース)
                

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