MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2050 国勢調査から見た社会の変化

2021年12月26日 | 社会・経済


 総務省が11月30日に公表した2020年国勢調査の確定値によれば、日本の総人口は1億2614万6099人で、前回調査からの5年間で約95万人減少しています。少子高齢化の進展は(前回調査より)さらに鮮明化しており、65歳以上人口は3602万6632人と前回調査との比較で6.6%の増。一方、14歳以下の人口は1503万1602人と5.8%の減となったということです。

 既に20年余り続いているこうした傾向に伴い、経済活動の主な担い手となる生産年齢人口(15~64歳)は7508万7865人と、(この5年間で)人口全体の減少数の2倍を超える226万6232人の減少を見たとされています。これは、日本の生産年齢人口がピークを打った1995年の8716万4721人と比べて13.9%も少ない数で、総人口に占める割合も59.5%といよいよ6割を切りました。

 女性や高齢者の就労拡大により国内の就業者数全体はこの10年で(逆に)6%程度増えているとはいえ、それもそろそろ限界に来ています。働き手の不足が日本経済の足かせとなることの懸念が、ここに来てさらに大きなものとなっているようです。

 さて、それと同時に今回の調査結果で気になるのが、日本全体で単身化が急激に進む状況と言えるかもしれません。調査によれば、一人暮らしが世帯全体の38.0%を占め、単身高齢者は5年前の前回調査に比べ13.3%増の671万6806人。単身世帯は日本の世帯構成の中で、最もポピュラーな形態です。世代を超えた未婚率の上昇傾向が背中を押す中、人々のこうした暮らしぶりの変化や多様化を踏まえた、まちづくりやセーフティーネットなどの制度設計が求められるところです。

 12月1日の日本経済新聞(「一人暮らし世帯拡大、5年前から14.8%増」)によれば、日本の世帯数は前回調査を4.5%上回る5583万154世帯。1世帯あたりの人員は2.21人で、前回調査から0.12人縮小しているということです。内容を見ると、3人以上の世帯が減少し、特に5人以上の世帯が10%以上の減少を見せる一方で、単身世帯は2115万1042世帯と前回調査から一気に14.8%も増えたとされています。

 中でも65歳以上の一人暮らし世帯の拡大が続いており、高齢者5人のうち1人は既に一人暮らし。男女別にみると男性は230万8171人、女性は440万8635人と、女性が圧倒的に多いのが特徴だということです。こうした単身世帯の増加の背景には、「成長したら結婚して、子供と一緒に暮らす」といった標準的な世帯像の変化があると同記事は指摘しています。

 45~49歳と50~54歳の未婚率の単純平均を基に「50歳時点の未婚率」を計算すると、男性は28.3%、女性は17.9%となる。2000年の調査では男性が12.6%、女性は5.8%だったことを考えれば、この20年間で価値観や家族観の多様化から、中年世代になっても独身というライフスタイルがもはや珍しくなくなっている現実が見えてくるということです。

 確かに、すでにネットをちょっと検索するだけで、「一人で楽しむレストラン」とか「おひとり様温泉」とかといった単身者用の広告が並びます。スーパーに買い物に行っても、食品は単身者用に細かく小分けされており、都心では床面積50㎡前後の単身者用マンションがもっとも売れ筋だという話も聞こえてくるところです。

 もとより、複数人で暮らすよりも家賃や光熱費の負担比率が高まるほか、1人当たりのごみの排出量などが増え、環境負荷が高まることも考えられる。高齢者であれば孤独死などにつながる懸念も高まると記事は指摘しています。人口構成の高齢化と同時進行で単身世帯が増える中で、通院や買い物を近場でできるようコンパクトなまちづくりも課題となる。体調を崩したり、介護が必要だったりする高齢者が増えれば社会保障費の膨張にもつながるということです。

 これから先も、高齢者の単身世帯が増え続ける一方で、一生単身の人も増えてくるのは火を見るよりも明らかなこと。で、あればこそ、単身世帯数の拡大にあわせた社会のあり方を追求していく必要があると結ばれたこの記事を、私も興味深く読んだところです。


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