ようこそ「LENTO」小路へ

旅にお出かけ、おいしいもの、そして日常。「LENTO」(ゆっくり、のんびり)に、いきましょう♪

『あららのはたけ』は元気です♫

2020-02-19 | 2022夏まで ~本~
村中李衣『あららのはたけ』(偕成社)。
当初、タイトルを「あちら」かと思っていましたが、正しくは「あらら」・・
やらかしたときや、困ったときに出る声、「あらら~」の意味です。

良かったわぁ~~
小学校高学年が主な読者でしょうが、オトナが読んでも、感動できます。
むしろ、読んでいて、どんどん元気が出てくる感じです。


物語は、小学校4年生の、えりとエミの往復書簡の形で進みます。

えりは、一人暮らしのじいちゃんが心臓発作をおこし、
横浜から山口に引っ越し、親友・エミに手紙を書くことにしました。
エミは、えりの新しい生活に興味津々、その後の学校の様子も書き送ります。

そこから明らかになるのは、えりがアトピーで皮膚科に通っていたこと(かなり重症)
えりとエミの幼なじみのケンちゃんがいじめを受け、
今もなお、不登校の引きこもりを続けていること・・・

二人がぶつかってきた問題は重い・・・
昨今の教室では、よくあることなのかもしれませんが・・・
(アラカン主婦の小学生時代には、珍しかったけれど)

とはいえ、決して暗い話ではありません。
手紙はイマドキの女の子w

そして、二人は、互いに手紙を書き綴ることで、
自分の気持をみつめ、周りの気持を想像し、理解しようとします。
ここが、さりげなくて、良いんです!


本作では、登場する、えりのじいちゃん、つまりパパのお父さんが、
良い味を出してくれています。

連れ合いだった、おばあちゃんを亡くして一年ほど・・・
じいちゃんは計画的に、息子一家を呼び寄せていたらしいことが
あとから、判明!(心臓発作はどうした!?)

そして、えりにも、計画的に、畑作りをさせました。
自分の手伝いをさせるのではなく、畑作りが「好きか嫌いかわかるまで」
えりの思うようにやらせるのです。

アドバイスもありません。

えりがモモの木につく毛虫にかぶれても、育てているイチゴが鳥に食べられても・・・
つまり「あらら」の連続なのに、
じいちゃんは、いつも、後から「こうすべきだった」と、教えてくれるのです。

「知ってるなら先に言ってほしいわ」と、えりはむくれますが・・・w

このじいちゃんの畑談義は、オトナが聞いても深い!
うんうんと頷いてしまいました。

えりにも、しみているのでしょう。
エミに書き送っているのです。

ちょこっと引用しますと・・・

「なにかいつもとちがうことが起きると『もしかしたら』って
いろいろ心配しちゃうけれど、『もしかする』ことも、
植物はちゃんと計算ずみって感じ。
      ~中略~
うちのじいちゃんはね、『ほうほう、そうきたかぁ』っていうのが
口ぐせなんだ...」(197-198頁)

えりは、ざっくりで不器用なくせに、
エミに言わせると「ひとのことをほっとけない」性格です。

しっかり者のエミよりも、わたしは、完全に「えり」タイプ。
えりが畑で「あらら」に見舞われる度に、じいちゃんがかけてくれる言葉
とりわけ「ほうほう、そうきたかぁ」が、我がことのように、しみました。w

心配するよりも、「ほうほう、そうきたかぁ」と、
そのときに考え、善後策を考えれば良いってコトですもんね。



えりが、山口で「あらら」に見舞われている間、
エミも、横浜で「あらら」の出来事が多々あって・・・
一番は、親友だったケンちゃんのことなのですが・・・

さて、どうなるかは、読んでからのお楽しみ。
児童書だからといって、侮るなかれ。
安直な結末ではありません。



作画の石井えりこ氏は、今、「読売新聞」朝刊で、
阿川佐和子さんの小説「ばあさんは15歳」の挿絵を書かれています。
それで、親近感もあったのですが・・・↑

今は、なんと、横浜にお住まいなのだとか!
エミちゃんですね♫

一方の作者・村中李衣氏。
岡山のノートルダム清心女子大教授ながら、ご出身は、山口県。
えりちゃんならぬ、りえちゃんですが♫

今年、第35回坪田譲治文学賞を、本作で受賞されました。


もう何十年も前になりましょうか・・・

村中氏のご講演を拝聴したことがありました。
まだ、山口の梅光女学院大学にお勤めだった頃です。

ちょうど、長谷川集平氏のイラスト入りの『たまごやきとウインナーと』(偕成社)を
読んだ頃だったか・・・

あの本は、心がザラザラして辛くて・・・
これに救われる読者もいるんだからと、自分に言い聞かせながら
読み進めたことを思い出します。

それから日々が流れ、令和の『あららのはたけ』は、
とっても、読みやすい・・・
どんな年代の、どんな方が読んでも、きっと、心に残るはずです。

石川えりこさんの、ちょっととぼけたような味わいのイラストと共に、
なんだか、元気になれる一作でした。

*****************************************
お読みいただき、どうもありがとうございました。
もう少し余裕ができるまで、コメント欄など非表示にさせて下さいね。
一方通行のブログでごめんなさい。

コメント    この記事についてブログを書く
« 『流浪の月』、言葉が出ない | トップ | 「おきなわじかん」のこと »