




彼女は首を振った。



村上春樹『1Q84』
場面説明 Book1最終
天吾が、人妻のガールフレンドと、「二つの月」のある世界について語った後の、会話。ベッドの上。
積読の末、一気に読みました。続編を期待する読者が多いそうですが、もうこれで完成していると思うので、個人的には特に続きは期待しません。青豆も死んで、結果として生きたし、天吾も「この世」に戻ってきたので、十分ではないでしょうか。リトルピープルは、次なる餌食のところに行くでしょう。
村上春樹の小説の登場人物は、天吾にしても、青豆にしても、ふかえりにしても人並みはずれた才能や美の持ち主で、なぜにこう悩む必要がある、といった人ばかり。
天吾「数学を物語のように語ることのできる予備校の人気講師、高校時代は全国大会レベルの柔道選手、体格もよく、顔もハンサムとはいえないが人好きがする。その上料理をはじめ家事もこなし、小説も書いている。特にこちらからアピールしなくても女子学生や人妻が寄ってくるある種のにおいがある。金銭には恬淡。」
青豆「贅肉ひとつない鍛え抜かれた均整の取れた体の持ち主、筋肉の動きを隅々まで知り尽くし、コントロールできる。ノーメイクで十分美しい。高校時代も勉強はできたが、それほどする必要がなかったのでしなかっただけ。人の筋肉をほぐす天性の指を持っていると、特別な客からもてはやされる」
ふかえり「小柄で全体的につくりが小さく、写真で見るよりさらに美しい顔立ち、この17歳の少女を前にすると、激しい心の震えを感じずにはいられない。特異な小説を書く」
等等。ざっと思い出すままに書いても、読んでいて腹がたってくるような出来すぎの人ばかり。でもその人たちの天性の持ち物に捕らわれていると、ちょっと足をすくわれる。出てくる「悪」もそれに見合うべくデッカイものが続々。こうしてバランスをとっているのですか・・・ね。
超めちゃくちゃ要約
人生やる気と、現実受容能力だね。それから悪に立ち向かう勇気と、必要なものをとりに行く勇気と、NHK受信料を踏み倒さない律儀さ。私が物語で一番好きな人はタマルさん、それから上の人妻も。
となると、生きていく上で、上記3人の、特に青豆と天吾の人並み優れた資質は、あればあるで便利だが、特に必要不可欠なものでもなし、また二人の人間が恋愛に落ちる際に、これがなくては、というものでもない。
そのことを二人とも感じているので、20年間も会おうとすれば会えたのに探そうともしなかった。青豆の才能ある肉体と、天吾の言語的才能は、二人が再び会うまでの通路として作られ、その通路の中にふかえりを代表とする巨大カルト組織の「悪」が邪魔したり、後押ししたりする。でもこの「悪」は、人類誕生以来、実際にはどこにでも存在するさりげないものだと思う。ものすごく怖そうに書いてあるところがすごい。
ところで「ふかえり」と入力すると「不帰り」と出てくるのだけど、これは何か意味のある名前なのだろうか。
ありがとうございました。
天吾と青豆の話が面白かったです。
でも、よくできた小説で、もう一度読み直すと、最初はわからなかったけれど、後からフムフムとうなづくところあり、もう少し手元においておきます。
天吾がふかえりの小説をリライトする、という行為に奥深い意味があることがわかりました。