ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

すだちと葡萄

2020-08-20 | 日記
 すだちが送られてきた。徳島からだ。ずっと首を長くして待っていたのだが、送り主によると、やっと3日前にハウス物の出荷が始まったところだという。
また、1箱(玉手箱ぐらいの大きさ)1000円を切らないと、地元では買う気になれないという。玉手箱といわれても、イメージがわかない場合は、浦島太郎の物語で、最後のシーンを思い浮かべてほしい。乙姫様からもらった玉手箱を開ける場面。玉手箱に2Lサイズのすだちは大体40個ぐらい入っていた。うれしい!それが2箱。1箱800円まで下がったから送ってくれたそうだ。もう少ししたら、地元のある郵便局では送料だけ払えば、ただで送ってくれるところもあるらしい。このすだちは、そうめんつゆに絞ったりチューハイに絞ったり、刺身の醤油に絞ったり、冷たい水に薄切りして浮かばせたり、ひと夏中、重宝するので、やっぱり玉手箱だ。このへんのスーパーでも買えるが、小さいのがパックに3個ぐらい入っていて200円とか、話にならない。
 で、こちらからも何か送りたいが、何もいいものがない。何かないか、何かないかと考えて、献立いろいろ味噌(リクエストがあった)、海老せんべいとか送る。しかしもっと地元産というものを送りたい。工場製品ではなくて、地元の生産品が送りたい。そんなことを考えていたら、地元の葡萄を送るのに、無農薬の農園があると友人から聞いていた話を思い出した。自分自身が葡萄にあまり興味がなかったので、このへんは夏になると葡萄が沢山でまわるな~ぐらいで、適当に家族が好きなのでスーパーで買っていた。
 昨日はじめて、そのお店に行って見た。そこは市内葡萄ストリートとも言ってもいいほど、3件の葡萄農園が固まっていて、友人に聞いたお店は二軒目にあった。
二時半ぐらいの暑さ真っ盛り。誰もいない。店の方らしいおじさんが畑の方から来られたので、挨拶をした。中に入ると、中年の女の人が、「さあ、なんにしますか。」と言ってくれたが、どんな葡萄があるかもわからない。「初心者なので、どんなのがあるか教えてください」と聞くと、巨峰、黄玉、あともうひとつ緑色のを見せてくれた。「甘さの勝ったのはどれですか」と聞くと、「黄玉」と言う答え。「でも、初めてなら皆味見してください」といって、息子さんらしき人がもってきた三種の葡萄を全部味見させてくれた。
 最初に、黄玉を味見したら「だめだめ、最初に一番甘いものを食べたら、甘さがわからない」ということで、次に巨峰、緑、そしてまた黄玉を味見させてもらった。「全部甘いです。全部1房ずつください」と言って、3房もぎたてのをグラムで買って、大体2000円弱ぐらいかな(スーパーの葡萄相場)と思っていたら、980円と言われ、びっくりした。
「こんな安くっていいんですか」と驚いていると、隣のカゴの葡萄の箱を指して、ぶどうジュースをつくったことがあるかと聞かれ、「いっぺんもありません」と言ったら、それを袋に詰めて、「ぶどうジュースのつくりかた」という紙も手渡された。紙には「葡萄を良く洗い、水は一滴も入れず、鍋で水分が出るまでぐつぐつ煮る。火を止めてざるで濾す。粒が残っていたら、お玉で押して、水分を出す。布で濾す。消毒したビンにつめる」とあった。フムフムと小さい声で読んでいると、「粒をお玉でつぶす」というところで、女の人は、「こうやって、ギューギュー押すのよ」と腕を挙げて押し方を実演してくれた。そしてその袋を手渡してくれた。ポカンとしていたら、「今日は誰もお客さんがいないから、ラッキーだと思ってもってって」
 その袋は買った葡萄の3倍ぐらいの重さがあったので、「ええ、そんな、そんな」とためらったが、「いいの。いいの、これは早く食べないとダメなものだから」と言われた。横に立っていたおじさんに「ここはいつまでやっていますか」とお聞きしたら「一年中」と言われたので、「へえ。スゴイなあ」と感心したら、「冗談、冗談。9月15日までと言ったら、お客さんが9月14日に一人も来なかったことがあってね、はっきりさせないの。くるときは電話してくれたらいいから」とのことだった。
 家に持ち帰った葡萄を見て、家族はいったいどこでこんなに取って来たのかと驚いた。そのときになって私は贈りものの葡萄を買いに行ったはずだったのに、すっかり忘れて味見ばかりしていたことに気づき、9月15日までに次は絶対贈り物用を買ってこようと思った。